第13話 Bランクダンジョン

ゆっくり寝て午後かららBランクダンジョンを目指すことにした。



「今日は攻略が目標だから採掘や攻略が進んでて雑魚が減ってるとこを狙う。」

「というか流石にBランクの規模で発生したばかりのダンジョンをソロなんて無理。」



今日は洞窟型ダンジョンで採掘者が途中までクリアリングしているBランクダンジョンを選んだ。

既に発生から1週間経っており、かなりの資源が回収された後だと思うので攻略してもそんなに恨まれることも無いはず。



「まぁでも攻略してるの気づかれたらトラブルになりかねないし一気に進もうと思う。」



ダンジョンはランクに応じて広さや階層が変わってくる。

Bランクともなればコアまで途中の雑魚を全部倒しながら進むと1日では辿り着けない。

だが今回は採掘のためおそらく中層程度まではクリアリングされているはずなので、

残り半分程度の道中を気を付ければよい。


ダンジョンに入ると壁面がマナを吸いうっすらと光っていて光源無しでも進めそうだ。

全速力で進むと、途中資源をダンジョンの外へ運び出す『運び屋』と何度かすれ違うが、

運び屋の方も俺達を同じ運び屋が戻ったのかと思ったようで「お疲れ」と声をかけ特にトラブルも無くすれ違う。



「・・・今のは魔鉱を運ぶだけの人?」


「ああ、Bランクダンジョンで魔物を倒して魔石を集めたり自分のマナを高めたい人は最低でもCランク以上だ。」

「DやEランクだと魔鉱を運ぶだけでも自分のランク以上に稼げるからな。」

「下のランクでもダンジョンで魔物倒して生活できる収入は手に入る。」

「でもDランクのゴブリンでも戦えば死ぬ可能性はある。その危険に見合う収入かと言われたら安い。」

「魔鉱を運ぶだけで魔物と戦わずに収入多いなら運び屋になる人も結構いるんだ。」


「ふ~ん。だったら探索者なんてやらずに別の仕事やればいいのに。」


「それができればいいんだろうけど、探索者何年もやってていきなり会社勤めなんて適応できない人も多いんじゃないかな。」



何人かの運び屋とすれ違い進むと20人ほどの集団が採掘をしているひらけた場所に着いた。



「採掘場の先にCランク以上の探索者が防衛ラインを築いてるはずだ。」

「俺達は採掘目的じゃ無くて魔物狩りに来たと言って進むぞ。」


「え、そんな断り入れる必要あるの?」


「厳密にはそんなルールがあるわけじゃないけど、採掘やってるチームはお互いの利益のために最初に始めたところが実質独占してるんだ。」

「同じダンジョンで競ってもお互い損するだけだからな。」

「俺達は採掘道具もバッグも持ってないから通ってもトラブルにはならないはずだ。」

「この装備と人数で攻略するとは思わないだろうしな。」


「攻略するとまずいの?」


「採掘チーム準備して始めてすぐにダンジョンが無くなったら赤字になるからな。」

「ここはダンジョンできてからある程度採掘済んでるだろうからそこまで問題無い。」


「ふ~ん。でもダンジョンそこまで進んだんだったらそのままボスやコア自分たちで手に入れた方がもっと儲かるんじゃない?」


「BランクのボスはBランクだけ揃えたパーティーでもリスクあるからな。」

「採掘専門のとこはそのリスクまではとらないみたいだ。」

「でも俺達みたいにボス狙いの探索者もいるからもう数日待てばもっと先まで採掘進んでボスまで行くの楽になるだろ。」

「なのでその間をとって今回狙いに行ってるんだ。」


葉月に説明し、防衛ラインに待機している探索者達に声をかける。



「お疲れ様です。」


「・・・・お疲れ。特に今日誰か来るって聞いてないが。」



5名いた探索者は俺達を不審な目で見て最低限の挨拶をする。



「俺達はC級なんですが、この先でB級の魔物と戦いたいんで通りますね。」

「見ての通り採掘道具も無いですし皆さんの邪魔はしませんので。」


「・・・採掘しないんだったら別に構わないけどC級二人で大丈夫か?」


「俺も死にたくはないんで無理はしません。敵が複数なら諦めるので。」


「こっちは採掘場所の維持だけをやるからお前たちが危なくなっても助けないぞ?」

「それと、大量の魔物がいることは無いと思うがトレインなんて絶対やめろよ?」


「絶対に迷惑はかけないので。」


「その若さでCランクなら大手クランにも入れるだろうに二人でB級ダンジョンとか無理するなよ?」

「俺達みたいに適当にやるだけでも十分稼げるんだからな。」


「若い時は誰だってもっと上を目指すもんだろ。好きにさせたらいいんだよ。」

「だが無理して大怪我したりイップスになって探索者引退する奴も結構いるのも事実だからな。」

「天才と言われてた奴らでもBランクすら行けないやつもいる。」

「逆にそこそこの才能でも安全にこつこつやってBランクになる奴だっているんだ。」



別の男が横から口を挟んでくる。



「おい、好きにさせろっていう割にお前の方が語ってるじゃねーか。」

「Bランク様のいう事は流石に違うねぇ。」


「すまんすまん。引き留めて悪かったな。ま、頑張りな。」



挨拶を終え数十mほど歩いて進むと、ふたたび速度を上げて進む、



「悪い人たちじゃ無かったね。」


「そうだな。でも採掘狙いでもボス狙いでも気の荒い連中もいるから気を付けるにこしたことはない。」

「それよりそろそろ間引かれてないエリアだから魔物に注意するぞ。」



速度の遅いオークなどは無視して進んでいく。

何度かオークやダンジョンバット、スライムの集団など戦闘回避に成功する。

感覚的にもう少しでボスのエリアに入るかと思った時、不意に岩陰から攻撃を受け咄嗟に避ける。



「レッドキャップか!こいつらは無視して進むのは無理だな。」



レッドキャップはゴブリンよりも小型だが攻撃力はゴブリンよりも高い。

何より魔物の中でもかなり早い方で、小さな体型もあって攻撃を当てにくい。



「葉月、他にも何体かいるかもしれないから気を付けろよ。」


「私の関知範囲にはいないと思うよ。」


「ああ、俺もこの正面の奴しか把握できてない。」

「だが囮にして関知範囲外から一気に来るかもしれないから注意しろ。」



レッドキャップは小さな体を更に縮めるように前傾でダッシュし俺の足元を斬りつける。

ショートソードで受け流そうとするが途中で攻撃を止め後ろに回りこもうと移動する。

その動きにも対応し回転しながら横薙ぎするがレッドキャップも後ろに飛びのいて回避する。

同時にファイアアローを放つがそれもあっさりと回避される。

が、回避先を予想していた俺はあらかじめ動き魔法を避けたレッドキャップに斬撃を入れる。



「ふぅ。」


「魔法を使えばあっさり勝てるのね。」


「動きを誘導すればな。レッドキャップは防御や耐久が低いから楽な方だ。」

「速度についていけなかったら物理アタッカーも魔法アタッカーも何もできないままやられるけどな。」

「強い攻撃を放てる。高威力の魔法を撃てる。それでもBランクになることはできるけど、実戦で強いかと言われたら別の話だ。」

「今の俺はBランクの探索者より火力は出せないけど、大抵のBランクよりも実戦では強い。」


「火力を上げるには魔物を倒しまくってマナの容量増やすんでしょ?時間かけてやるしかないね。」


「魔法も使っていかなきゃいけないけど、高威力の魔法使うのにそもそもマナを多く消費するからな。」

「ま、結局は魔物を倒していくのがとりあえず強くなる方法だな。」



魔物を倒すと魔物が持っているマナを一部吸収し、マナの容量を増やすことが出来る。

身体能力を強化するにも、攻撃、防御するにもマナを込めて行うので容量が増えると戦える時間が増える。

それだけでなく一度に込めるマナの量も増える。

例えば剣に最大10というマナを込めていたのが20というマナを込められるようになると威力が上がる。

魔物を倒していくと強くなる。これは間違いない。


だが例えば上位ランクの探索者に『キャリー』してもらい、魔物を倒していってマナの容量をひたすら上げたらどうか。

たしかに攻撃力も防御力も高くなる。ある意味で強くはなるだろう。

だがもしレッドキャップと一人で戦うときに攻撃を当てることは難しいし、攻撃を回避することも難しいだろう。


勿論、パーティーを組むのはそういう脆さをカバーするためのものであるが、

上位ランクのダンジョンの魔物だとパーティー全員がある程度単独でも自分の身を守れないと通用しなくなる。


今のBランクは実質B級ダンジョンに通用しない火力だけBランクが多く存在する。

特に日本は魔法の『テンプレート』ができて一定の威力が出せる魔法職の数は世界一だ。

だが実際にB級ダンジョンを攻略できるBランクの後衛はかなり少ない。


レッドキャップ1体倒すのに足を止めたせいで無視してきてた魔物の群れに一部追いつかれる。

更に正面にはそれに呼応し新たなレッドキャップが2体現れていた。



「樹、後ろは私が適当に相手しておくからレッドキャップはお願いね。」


「すまない。俺だけで攻略するつもりだったんだが。」


「まだ樹にはソロでBは早かったってことね!」



なぜか少し得意げに葉月は後ろの群れの相手をすると言う。そんなに戦いたかったのか?

いや、俺がひとりでずっと戦ってること自体思うところがあったのだろう。


できるだけ早く片付けようと魔法の出し惜しみはしない。

レッドキャップは左右から挟み込んで俺を攻撃しようとするがファイアウォールを周囲に展開しそれを阻む。

並みの魔物であればそこに攻撃し倒せるか、大きなダメージを与えられるが直前に回避し炎の壁が消えたのを見計らって再度攻撃に移る。

次はストーンウォールで攻撃を阻み、飛びのいた片側のレッドキャップへ俺は距離を詰めると突きを放つ。

それすら回避されるがそこへファイアランスを放ち直撃、倒すことに成功する。

もう一体のレッドキャップも背後から俺を狙うが後ろにファイアウォールを振り向きもせずに展開する。

炎の壁が消える前に二重詠唱によってファイアランスを炎の壁をブラインドにし放つと、

直撃は逃れたのか半身を焼き、ほぼ動けなくなったところを斬りつけ倒す。



「よし葉月、こっちは終わっ、、、、」


「遅かったわね。もう終わったわよ。」


「・・・・お前マナ節約するつもりないだろ。」



流石に早すぎると思ったら、戦闘の跡をみると魔法をひたすら連射したようだ。

火、氷、風、土、色んな魔法を撃ったであろう痕跡が残っていた。



「だってボスは樹一人でやるつもりでしょ?」

「それに樹ばっかり戦うから、私は自分の魔法把握できてなかったから試したかったのよ。」


「まぁ、もうすぐボスだろうし、あれだけ撃ったけど葉月もまだマナ半分程度はありそうだからいいか・・・」



その後も何度か素早いレッドキャップの相手をしつつ2時間ほど進むとボスのいる空間に辿り着く。

ダンジョンに入って8時間くらいかかっただろうか。

慎重にクリアリングしながら進むとその倍以上の時間がかかるのでかなりうまく進めたほうだろう。



「ミノタウロスか・・・今の俺には厄介かな」

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