第9話 かつてのパーティー
その後も1時間程の間にスライムやウルフの群れに何度か遭遇し追加で50体近く倒す。
「Cランクに上がる条件はたしかDランク以上のダンジョンで500体以上のモンスター撃破にダンジョン攻略だったかな?」
「このペースだと一週間かからないで昇格できるか・・・・」
前世だとCランクに昇格できたのは2年に上がる前の春休みだった気がする。
学生時代は平日学校終わりにダンジョンに入っても時間的にそれほど多く倒せず、
何よりダンジョン攻略のためにはソロでは厳しく攻略パーティーを組めなかったからだ。
1年の夏休み時点でCランクに上がれたのは20~30人はいただろうか。
上のクラスは親がAやBランクの探索者で大きなクランに所属していることが多く、
その伝手でキャリーしてもらっていることがほとんどだった。
キャリーと言うと実力が無いように思われがちだが、実力も下のクラスの者よりあることが多かった。
親から一定の才能を引き継いだというアドバンテージに、実力者から小さい時から指導も受けられる。
更に良い装備も与えられるなどスタートも環境も恵まれているから当然とも言えた。
Bランク以上は討伐数だけでなく実践審査があるため個の強さも求められるため在学中に上がれる者は極僅かだ。
「だいたい3分の1くらいは進めたかな」
「葉月ペースはどう?それと炎の維持は大丈夫?」
「こっちはまだまだ余裕あるわよ。」
「俺が戦ってる途中に炎の形変えて遊んでたみたいだしまぁ余裕あるだろうな・・・」
「遊んでるって言われるのは心外ね。これだけの数の炎を維持するだけでなくて形を変えるのにどれだけの制御が必要だと思うの。」
たしかにこんなことが出来るのはAランククラスじゃないと無理かもしれない。
もっとも、炎の形を虫や動物に変えたりする人はいないからわからないが。
制御のトレーニングはロウソク以下の小さな炎や逆にどこまで大きくできるかその強弱を繰り返し行うのが主流だ。
「採掘者達との距離もあるし俺達も少し魔鉱採っていくか。少し持てるか?」
「明かりに魔石拾いの次は採掘に荷物持ちまで?」
「樹ってモテないでしょ」
はーっと溜息をつかれ葉月に指摘される。
「は?いや、どうかなモテるかどうか意識したことが無いけど普通じゃないか?」
「普通って逆に斬新な答えだわ・・・・」
「樹の複数の人生の中で恋人がいた割合といなかった割合どれくらいだと思う?」
「俺の前世はたしかにいなかったけどさ、でも半分くらいじゃないの?」
「1割以下です。」
「へえ。結構モテてるじゃないか。」
「何でモテないでしょって話から9割恋人がいるって思うわけ?いない方が1割以下よ。」
「は?おかしいだろ。Aランク探索者って収入かなりあるんだぞ?婚活でも合コンでもすごい人気だぞ?」
「いやいや、Aランクになった世界線でも恋人いなかったわけでしょ。」
「C止まりの可能性もあれば若くして死んだ可能性もあるからね。」
「人気の上位探索者でも恋人作れてないってモテない証明みたいなもんでしょ。」
「それは、、、強くなることに必死で他の事あまり考えて無かったからな・・・」
「はいはい。言い訳はいいから。」
「いや待て。炊事洗濯料理もできるしタバコは吸わない、酒もそんなに飲まない、ギャンブルもしない。」
「偏った趣味も無いし身長も180cmで学歴は大卒では無いけど国立東京探索者学校って探索者の最高の学校だよ?」
「禿げても無いしデブでも無いし、煩い親もいないよ?」
「逆にそのスペックで恋人いないって性格がやばいんじゃないの・・・・」
「いや、考えてみたら俺だけじゃないんだよ。俺がいたパーティーメンバーも皆独身だったから・・・」
「その人たちはモテなかったの?」
「・・・・モテてはいたな、、、、」
「ああ、俺がモテなかったのは周りがハイスペック集団だったからか。うんうん。」
「え、でもパーティー抜けてからもモテてないんでしょ?」
「・・・・・・」
「と、ところで、パーティーメンバーってどんな人たちだったの?」
葉月は気を使ったのか別の話題を振ってくる。
「俺以外全員AAAランクで、世界でも屈指のパーティーだったと思う。」
「へ~。でもそんな人たち皆が独身なんてね。」
「あ~、皆イカれた奴らだったからなぁ。」
『鬼島津』島津彩
素手でドラゴンを倒す唯一の探索者。戦闘狂。
『聖女』曲直瀬円
部位欠損すら回復させられる国内屈指のヒーラー。打撃武器で前衛で戦い、回復より戦闘好き。
『剣聖』国井美空
剣術一門出で探索者として実戦で技を極める。その剣術とマナの融合は見る者を魅了する。剣術狂い、戦闘狂。
『今果心』九条縁
圧倒的火力を誇る魔法使い。テンプレートを嫌い固有魔法を次々産み出す。魔術狂。
『光の剣匠』藤堂匠
マナから作り出す光剣を同時に100本以上操る。天然。
「改めて考えても頭がおかしい奴らだったな。女性陣が基本戦闘狂だったけど。」
「いや、樹もパーティー抜けた後ひたすらダンジョン籠ってたんなら同類じゃない?」
「え、、、それは違うだろ。あいつらは楽しくて戦ってたんだけど俺は苦行でしかなかったぞ。」
「苦しいのに続ける方が異常者なんじゃ・・・・」
え、俺は異常者だった?周りがおかしい奴らばっかりだと思ってたけど俺も十分変なのか・・・・?
「異常者に囲まれてちょっと影響されてた・・・のかな?」
「俺って面倒なこととかきついことって基本的に嫌な方だったんだけど・・・・」
よくよく考えてみたら化物だらけのパーティーメンバーに『指導』と称されて滅茶苦茶なことをさせられてた。
「あいつらのせいか・・・・」
「ふふ、今回は俺があいつらをしごいてやらないとな・・・・」
「樹、小声で何呟いてるの、、、怖いんだけど。」
「ああ、いや、やっぱり人生楽しく生きようと思ってね。」
「そ、そう。いいんじゃない・・・」
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