第8話 Cランクダンジョン

目星を付けていたCランクダンジョンに着くと、朝7時にもかかわらず数パーティー待機していた。



「こんな早いのに人が多いみたいだけど大丈夫?」


「ああ、あそこの人達は攻略するんじゃないから競争とかにはならないよ。」

「台車にバックパックに採掘用の道具があるからマイナー(採掘者)の人達かな。」



このダンジョンは洞窟型ダンジョンに分離され、迷宮型よりも広くモンスターの種類や数も多いことから難易度が高くなっている。

ダンジョンに入ると迷宮型とは違い出入り口は同じ場所に繋がる。

そして一番の特徴は資源が手に入ることがあげられる。

魔鉱と呼ばれる魔鉄、魔銀、ミスリル、オリハルコンといった鉱石が取れることがあり、

モンスター討伐やダンジョン攻略よりも大きな収入が得られ、

ランクが少し下の探索者も引率され採掘に来ることも多かった。


資源管理の観点からダンジョンは探索者協会によって管理され、

郊外のダンジョンは攻略せずに少しずつモンスターを定期的に間引き魔石を回収したり、

洞窟型ダンジョンもモンスターを間引いたうえで採掘場として協会がコントロールし、

資源が枯れたら一旦封鎖し、再び魔鉱やモンスターが出たら解放される。

アプリ上で資源状況が開示され探索者はそれを見ることで効率的に、また安全にダンジョンに入ることが出来た。


一方で都市部に発生したダンジョンは社会生活的にも経済活動的にも邪魔になる為、いつ攻略しても問題無い。

だが安全に稼げる郊外型で活動する者が多く都市型を攻略する者は少なかった。

協会は都市型ダンジョン攻略には報奨金を上乗せすることで攻略を促したが、

攻略するのは金というよりモンスターを多く狩ってランクを上げたり強くなりたい者で、

それ以外にはダンジョンには入るが奥まで行った攻略するのではなく、

浅い階層でまだ手付かずの魔鉱を多く手に入れるためだ。

郊外の管理されているところよりも採掘量が多くダンジョンの浅い階層だとモンスターもまだ少ない。

リスクは多少あるが実入りが多く、稼ぎたい人向けと言えた。



「あの人たちには悪いけどここは今日一日で攻略する。」



ダンジョンに入ると周囲は薄暗く視界がほぼ無い状況だった。



「光源が無いタイプか・・・・」



洞窟型はマナが薄く光を帯びてある程度視界が確保されている場合、

壁面の苔のような植物、光苔が薄く発光している場合、ほぼ真っ暗で視界が無い場合がある。

当然暗い方が明かりの準備もいるし、明るくするとモンスターから位置がバレたりと難易度は上がり、

探索者からは避けられる。だからこそ手付かずの資源を一攫千金狙いで採掘装備を整えて集団で潜る人たちもいる。



「葉月、明かりを頼んでもいいか?」


「とりあえずこれくらいで大丈夫?」


葉月が周囲にいくつかの火球を出して明かりにしてそれなりの視野が確保できた。

それくらいでいいと言いかけてふと考える。

俺と葉月はパスが繋がってて経験もある程度共有されてると言っていたが・・・



「最大で何個出せる?限界まで出して移動に追従させたら結構疲れるよな?」


「出すだけなら全部で20くらいかしら?全部制御するならせいぜい10個くらいかな?」


「だったら限界でいこうか。火魔法に魔法制御力鍛える良いトレーニングになるだろ。」


「明かりから魔石拾いまでさせるって私の扱い雑すぎない?」


葉月が不満を漏らす。



「埋め合わせはするから。」


「貸しだからね。何してもらおうかしら。」



葉月は周囲に10個の火球を出し闇を照らす。

明かりを魔法で確保するとその維持だけで戦闘力は落ちる。

なので光源の無いダンジョンではソロはほぼ不可能となっている。

ライトを身体に付けてソロもできなくも無いが、戦闘中ライトが壊れたりすると何もできなくなる。



「さてと、採掘パーティーが来る前に一気に進むか。」



最初はゆっくりと葉月に言ったが、歩きながら索敵して進むというわけでは無い。

一般人からしたら全力疾走するくらいの速度で進んでいくとスライムに遭遇する。


Cランクダンジョンと言ってもCランクじゃないと倒せないモンスターばかり出るわけでは無い。

だが同じモンスターでもDやEランクダンジョンで出る個体よりも基本的には強くなる。

スライムだとEランクだと速度も遅いし攻撃手段も覆いかぶさって消化する方法をとるが、

消化と言ってもすごく弱い酸なためこいつで死んだ事例は聞いたことが無い。

これがDランクだと顔を覆って窒息を狙ってくる。だがやはり速度は遅いため対処は容易だ。

Cランクだとゼリー状の身体からゴム状の身体になって伸縮し物理的に攻撃してくる。

その攻撃はヘビー級ボクサーのパンチ並みで身体強化が得意でない後衛は十分脅威となる。


それでもまだスライムの速度はそこまで早くない為あやうく通り過ぎそうになるのを止まって倒しにかかる。

ダンジョンの床、壁、天井にいる合計6体のスライムに対し一気に間合いを詰める。

近づかれたスライムは体をひねり攻撃してくるが、俺はその攻撃に合わせてパンチを放つ。

パンチが当たる直前に無詠唱でファイアアローを放ちほぼゼロ距離で倒す。

パンチだけでなく蹴りも駆使しスライムを倒していき最後の天井から落ちてきたスライムには、

両手を掲げて受け止めるような体制からファイアボールを撃ち仕留める。


スライムを仕留めて進むとダンジョンウルフの群れと遭遇する。

動きが早く一匹でも攻撃をかわされ同ランク帯だと案外倒すのに時間がかかる場合がある。

特に遠距離から魔法を当てようと思うとなかなか当たらず無駄なマナを使わされることもあり会いたくないモンスターだ。

しかも群れをなしていることが多くパーティーであっても結構消耗させられる。


俺はあえて動かずにウルフに囲まれる。群れが前後左右から一斉に飛びかかってきた瞬間、

ファイアウォールでまとめて6匹を倒すことに先行する。

残った3匹が同じように襲ってくるが今度は首を狙った牙での攻撃をかわし横腹にファイアアローを打ち込む。

足元を狙ってきた奴には蹴る上げると同時に同じくファイアアローを。

最後に後ろから頭を狙う奴には振り向かずに真後ろへやはりファイアアローを放ち霧散させる。



「耐久低いスライムやウルフなら楽だな。」

「一撃で倒せない敵が群れで来てからが本番かな?」

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