第7話(2)
「見つからない・・・なんで?」
ベティーが焦るようにキョロキョロと挙動不審な動きになるが、ケイトたち3人はいたって落ち着いていた。
「エルフの盗賊団が何人で来たのか分からない以上、味方を犠牲にして杖の奪取に成功した可能性が高いわ。
扉の鍵を掛ける事が出来なかったから、水路の水を戻したって感じかしらね。」
ケイトの声にロバスとトレーシーは同意するように首を縦に振る。
・・・間違いない。
ベティーが語っていた老婆の魔法使いは、この現状を私たちに見せたかったんだ。
護衛用の影獣が今もいる事から考えると、老婆はわざと杖を敵に持たせている。
杖に何か仕込んで、追跡出来るようにしているに違いない。
そして老婆は、私たちと会う事を望んでいるはず。
今回の件、どうやら杖を取り戻せば終わり、なんて単純な話じゃなさそうね。
ポーラめ、毎回毎回厄介な仕事押し付けてくれるわ、もう!
「ベティー、杖以外に何か聞いていなかった?」
「え、杖以外の話なんて何も・・・。
まー、いつになく深刻な雰囲気はあったかなー。」
「深刻・・・か。
もしかすると、そのお婆ちゃん既に動いているかもね。
杖は、本当に解決したい問題のキーに過ぎないのかもしれないわ。」
言いながらケイトはトレーシーに向き直る。
「ここのガラクタの処理はそっちに任せていいわよね。」
「え、ええ、もちろん。
私とロバスの目的はこっちだから、とても助かったわ。」
「私からも礼を言います。
お返しにと言ってはなんですが、私どもの仕事が片付きましたら、そちらを助力致しますよ。」
「え、許可取れるの?」
「今日の出来事を筆頭に話せば、何も問題ないかと。」
盗賊絡みの仕事だから目付をってのが本音でしょうね。
断ったら後々面倒になりそうだし、仕方ないか。
「・・・分かった、その時はお願いするわ。」
ケイトの判断は、後に王城の魔人と呼ばれるロバスの力の一端を間近で見てしまう事になる。
ケイトとベティーが去った後。
ケイトが宝物庫のお宝に対してガラクタと語っていた事を、ロバスとトレーシーは肌身で感じていた。
王宮魔法陣“破封の陣”の調査団が宝物庫のお宝鑑定に来たのだが、どれもこれも二束三文。
こんな中に豪華な装飾の錫杖があったら、一瞬で分かってしまうだろうと思える。
・・・わざと目につくようなところに保管していた、という事ですか。
ロバスはそう思いながら、ケイトは既にこの考えに至っていたとも感じ取っていた。
常に二手三手先を考えて行動している・・・王宮騎士団の軍師ラグに似たタイプですね。
さすがは女王護衛団“白銀”ヴェスター殿の娘。
「次に会うのが楽しみです。」
しかし、これだけ手の込んだ宝物庫の大半がガラクタというのは、少し腑に落ちません。
何かまだ仕掛けがありそうな気がするのですが・・・。
「調査団の皆さん、物だけでなく、宝物庫と帆船も調べて下さい。
まだ何か仕掛けが隠されているかもしれません。」
「分かりました!」
レンジャー以上に鋭い忍者の勘。
その勘は、ロバスが予想していなかった存在を見つけ出す。
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