第4話(2)
忍者ロバスが食料の買い出しに行っている間、ケイトはトレーシーからポーラの現状を聞いていた。
「地下巨大回廊の事前調査?
そんなもの発見されてたの?」
「つい最近銀等級に昇格した6人の冒険者パーティーが見つけたそうよ。
入口の場所は西区のスラム街にある地下迷宮。
思い付くところがあるんじゃなくて?」
「・・・あー、この前のカイルたちが潜っていたとこか。
巨大な回廊になっているっていう情報もカイルから?」
「ええ、幽霊の駅員さんから聞いたみたい。」
「え、幽霊?」
「聞いた直後に成仏したって話だけど。
サブウェイという地下を一周して走る乗り物の路線跡地らしいわ。
まだ未踏の領域だから、冒険者に荒らされる前に調査してしまいたいそうよ。」
魔法国家からの来訪者があるこの忙しい時に調査?
国の事前調査なら入口を封鎖して、後日お客がいなくなってから余裕のある時にゆっくりやればいいはず。
ってことは・・・。
「ポーラは、地下の回廊も何らかの関りがあると思っているわけね。」
「話が早くて助かるわ。」
ここまで話したところでロバスが戻ってきた。
大きな背負い袋をケイトとトレーシーにそれぞれ手渡す。
受け取ると、ズシリとした重さが。
!?
「中を見ても・・・?」
「あ、どーぞ、どーぞ。」
硬めに焼いて日持ちさせたパンと干し肉の束が3日分くらいありそうだ。
栓をした革製の水袋も大きい。
持った感じでおそらく5~6リットル。
やけに重い原因はこいつね。
あとは包帯、タオル、塗り薬・・・。
今から無人島に行っても大丈夫だわ。
「では、これを背負って行きましょう。」
「あ、はい・・・。」
ポスターを付けなおして扉の行先を変え、いざ出現した階段を降りる。
15段くらいあるかしら。
先頭にロバス、次にケイト、後ろをトレーシーが歩く。
そして、13段目の手前でケイトが止まった。
「ロバスさん、13段目を調べて下さい。」
「え、あ、はい、分かりました。」
すると13段目の板が外れ、中に小さな箱が入っているのが見えた。
ロバスは罠が無い事を確認し、そっと両手で箱を取り出す。
中には青い塗料で色付けされた鍵が1本入っていた。
ロバスとトレーシーが素直に驚く。
「なんで分かったんです?」
「元酒場セイルに残されていた暗号に
B1Fー13ーB2F
というのがありました。
地下1階から地下2階へ移動する階段の段数を指しているのは容易に想像出来ましたから、試しに調べてもらっただけです。」
「え!?
そんな暗号あったんですか!!?
全然分からなかった・・・。」
あれは魔法使いじゃなきゃ分かんないわよ。
しっかし、まさか最初に見つけた階段でヒットするとは思わなかったけどねー。
複雑そうに思えて、実は意外と単純構造の可能性もある・・・かな。
そう思いながら階段を降り切ったところにある扉には、ボロボロの紙が貼られていた。
『旧船員に告ぐ。
黒き魔物出現中につき出航は厳禁。
間違ってもボートを使用しない事。』
なんじゃこりゃ。
「こんな海の無い国の地下で旧船員?
船なんてあるわけがない・・・。
てことはこれも暗号なのかなあ。」
「今の盗賊ギルドを創設した男は元海賊という話があるわ。
それを考えると、旧船員というのは盗賊たちの事を指している可能性が高いと思う。」
「でもこれって明らかにただの注意事項よねえ。
・・・とりあえず進んでみるしかないか。」
「開けます。」
ロバスが声と共にゆっくり扉を開けると、バサバサバサと蝙蝠が飛んでいく羽音が聞こえた。
突然の襲来かと思いきや、逆に驚いて逃げたようだった。
「蝙蝠がいるって事は、どこか地上に出れる箇所があるって事よね。」
ケイトが現在位置を知る為にディレクションの魔法を詠唱する。
「入口の旧貿易倉庫の斜め下。
位置に大きな変化は無いか。
それにしても暗いな・・・。
人の気配無いから、ライトの魔法使うわよ。」
「お願いします。」
ケイトがライトの魔法で周囲を明るくすると、信じられない光景が目に入る。
「うそでしょ・・・!」
扉をくぐり通路を真っすぐ正面に歩いた先。
地下下水道の本流のような幅広の水路があり、そこには大型の帆船と小さなボートが停泊していた。
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