第13話 幕間② 『神無月十夜』


 これは、少し前の話だ。

 神無月十夜には友人かぞくと呼べるのは〝二人〟しかいない。

 十夜は幼い頃に両親と死別し、ある施設へと預けられる事になった。

 そこで出会った二人と歳が近い事もあり仲良くなるのに時間は掛からなかった。

 そんな俗に言う幼馴染みと言う間柄だった三人は常に共にいた。

 そう、

 ある事件を切っ掛けにその絆は粉々に打ち砕かれたのだ。



 簡潔に言うと、



 十夜が言うのも何だが、友人二人はかなり外見や中身がかなり良い。

 二人が並んで歩いていればナンパはもちろんの事、芸能事務所からも声が掛かる事もしばしばだった。

 その分厄介事も多く、あまり宜しくない人に絡まれたりと面倒事が多かった。

 その時の露払いとして喧嘩の強かった十夜が前に出る、と言うのが日常の一コマ。


 賑やかで騒がしい日々を悪くないと思いつつも何気なく過ごしていた十夜達。


 しかし、

 それは突如終わりを迎える事になる。


 友人二人はある不良グループに拐われたのだ。

 監禁された場所は廃墟で巷では心霊スポットとも呼ばれていた。

 助けに行かないと言う選択肢は最初から無く、

 十夜が駆けつけた時、


 悪鬼の権化。

 そんなおぞましい〝何か〟がそこにいた。


 激しく憎悪を撒き散らす悪鬼は新しい獲物かなづきとおやを見るなりすぐさま襲い掛かり、それに対して臆することなく十夜は応戦する。


 そして、気が付けば十夜は病院のベッドの上で寝ていた。


 腕の感覚は無く、傷だらけの身体を引き摺りながら襲い来る激痛に耐え―――――動けるようになった時には全てが手遅れだった。


 一人は襲って来た不良グループから投与された薬物中毒による心神喪失状態で同じように病院へ、そしてもう一人に関しては姿


 自身に取り憑いた〝悪鬼〟の正体は未だに掴めず、更には入院していた一人の友人は気が狂いそのまま別の病院へと移されそれっきり会ってはいない。


 十夜は、霊障として襲い掛かる破壊衝動やっかいなのろいに歯を食い縛りながら耐える日々を送っていた。


 神社仏閣にお祓いを頼むもどうにも出来ず、ただ謎の破壊衝動に襲われ心が疲弊していた時、怪しい人物と出会う事になる。



 ―――――よぉボウズ。



 それが、

 悪鬼にとり憑かれた十夜と彼に戦い方を教えた師匠との出会いだった。





 後に、神無月十夜は師の極意である『滅鬼怒の戒』を習得し、唯一の友人を探す事になる道を与えた。

 自分の、そして大切な友人達の人生を、全てを奪い去ったモノをこの手で嬲り殺しにするまでは例え外道と罵られようがこの歩みを止めるつもりは無かった。



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