第17話 幕間② 『とある少女の視点』




 どうしようかな? と偶然にも目が覚めた少女は遠目から事の顛末を見ていた。

 正直、彼女には人助けをする余裕も無ければ

 だから今回も遠目から見ているだけにしようと、そう心に決めていた。

 だが、


 「(なんだろう…………)」


 特に面識のない彼らが何故ボロボロになってまで戦っているのか?

 〝あんな連中〟の為にそこまでして戦うのは何故なのか?

 疑問が尽きなかった。

 どうして自分がこの世界にいるのか分からない。

 ただ分かるのは、彼女は友達を助ける為にこの場所にいるという事は理解していた。

 それ以上でもそれ以下でもない。

 他の連中がどうなろうと知った事ではなかったが、それでもその場の雰囲気で流されて酷い目に遭っている連中よりも進んで渦中に飛び込む彼らをどうしてか〝助けなければ〟と思ったのも事実だった。

 だから少女は走り出した。

 この前のステージで対峙していた『十二の眷属けもの』とは違い今回の相手は別格に強くなっている。

 何の策も無しに戦って勝てるような相手ではない。


 「もうっ! これ大事だったのに!」


 手には少しお洒落な香水を構える。

 自分の誕生日に親友から貰ったプレゼント。

 それを艮へ向かって投げつける。


 「うらーっ! こっちだよーっ!!」


 自分に注意を向け正確に投げつける。

 中等部時代にソフトボール部に所属していてよかったとそんなしょうもない事を思いながら彼らを助けた。

 正直、ここで出会う人を信用する事は出来ない。

 のだが、それでも本能的に〝信用出来る〟と思ってしまった。

 だから彼女は彼ら、退魔士と呼ばれていた二人を助ける事にしたのだ。


 「(これでハズレなら私の勘も鈍っちゃったのかな~)」


 そんな事を思いながらチラッと視線を横に向け、教室の中にいた〝親友〟の影に語り掛ける。

 今にも消え入りそうな少女の姿に悲痛な笑みを浮かべ、それでも力強く声を掛ける。


 「もう少し待ってて―――――――絶対に、助けるから」


 それだけを言うと親友である御巫乃蒼みかなぎのあは口だけを動かし、陽炎の様に消えていった。

 その口の動きで何となくだが彼女が何を言ったのか分かった少女は唇を噛み締め叫ぶ。


 「何してんの!? 早く逃げるよ!!」


 二人を引き連れ少女はその場を後にする。

 教室には御巫乃蒼の姿はもうない。

 そんな彼女に後ろ髪を引かれながら走っていく。



 最後に、

  彼女が告げた言葉が、

    救いの言葉ではない事に苛立ちを隠せないでいた。



       〝ごめんね〟―――――と。



 御巫乃蒼は最後にそう言い残し消えていった。

 それが少女にとって腹立たしい事この上ない事だったのだ。

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