第15話 ⑥とある少女の夢小説
『ワルプルギスの少女と十二の
最初にそのタイトルを考えた時、私は何故かしっくりくるようなそんな感じを抱いた。
内向的な性格が功を奏したのか、学園で目立つ事のなかった私にとって初めて書く小説はドキドキし、そしてどこか冒険に出たような―――――そんな不思議な感覚があったのだ。
自分の家は昔ながらの家風で、
―――――女性は男性を立てるために存在している。
や、
―――――男子の三歩後ろを歩け。
だの、
―――――女子は家庭に入ってこその幸せだ。
と言った感じで化石のような考え方が根付いていたのだ。
正直に言って呆れてものも言えないし、私は早く自分の家から出たかったから全寮制でもある高天原学園に入学をした。
もちろん進学校ということもあり勉強は大変だったが、それでも趣味の合う友人にそこで出会えたのは大きかったと自分でも思う。
色々な意見を出し合い、そこで最高の作品を作り上げる事がこれほど楽しいと感じたのは初めてだったし嬉しさもあった。
でも、
どこでどう歯車が狂っちゃったのかな?
私は、この
初めて、
嫌いになった。
全寮制を選んでしまったから逃げる事すら出来ない。
教師に助けを求めてもロクに対応すらしてくれない。
一瞬、実家に逃げ帰る事も脳裏に浮かんだが半ば強制的に出てきてしまったから実家を頼る事も出来ない。
八方塞がりだった。
だから私は一人で小説の世界に逃げ込んだ。
誰も私を見ようともしない。
助けてもくれない。
友人だと思っていたのは自分だけだったのか、向こうは気が付けば離れてしまっていた。
だから、
私は―――――――――。
気が付けば、私は学園の屋上にいた。
時間は夜中だったからか人目を忍ぶことなく無事に辿り着いたので意外と呆気ないと思ってしまった。
夜空に浮かぶ星以外、自分を見ていない。
こんな状況は悪くないと思ってしまう自分はやはり作家脳になってしまっていると思うと少し可笑しく笑ってしまった。
こんな最高のシチュエーションで自分の人生に幕を閉じれるならそれもいいかな?
あとは、私が勇気を出して一歩を踏み出せば―――――。
「こんばんは。こんな寂しい場所で何してんのっ?」
心臓が止まるかと思った。
誰もいないと思っていただけに今のは不意打ちも良い所だ。
一体誰が?
そう思って振り返るとそこには同じ学園の制服に身を包んだ少女がそこに立っている。
はにかんだ笑顔が今の自分には眩しいぐらいだ。
「あれ? 無視されるとちょーっと困っちゃうな~。なのでもう一回聞くね! こんばんは! こんな寂しい場所で何してんのっ?」
こちらの事情を知ってか知らずか結構ズカズカと踏み込んでくる少女に少しだけイラっとした。
まずはそっちから名乗りなさいよ。
そう言うと少女はケラケラと笑い一歩づつ近付いて来た。
「わたし? わたしはね だよ」
それが私、
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