第84話 そしてダンジョンへ
ディメンションルームから出て、お城の応接室に戻った。ソファーに皆さんが座る前に、僕はアイテムボックスの中から、品の良い小さなポーチを三つ取り出す。
「あと、これをお渡しします」
そのポーチは中にアイテムボックスを仕込んであるマジックバッグだ。
「ブレスレットを嵌めていれば使えるマジックバッグです」
「おおッ!」
国王様が目を見開いている。レスティに聞いたところ、エルクスタ王国にはマジックバッグは一つも無いとの事だった。マジックバッグ自体がアーティファクトで、非常に珍しいアイテムだが、僕の能力を使えば何個でも作る事が出来る。レスティやアイシャさん達にも渡してある。
「容積は十メートルかける十メートルぐらいは有ります」
「これが有れば兵站はかなり楽になるね」
「お兄様ッ! アルスタ様の道具を軍事利用しないでください!」
またまたレスティに釘を差された王太子様。
「アハハ、分かってるよ。アルスタ君、これは大切に使わせてもらうよ」
笑顔で答える王太子様。国王様、王妃様もご満悦の様子だ。
「アルスタ、言われていた酒は間もなく揃う。儂からのお礼に王室の酒を幾つか多く出すよう手配をしよう」
「ありがとうございます、国王陛下」
王室のお酒は一級品揃いだ。お金を積んでも買えない様なお酒もある。ルルエル様も喜ぶに違いない。
さて、七十階層をさっさと攻略しないとだな。
この日、僕はお城から戻るとアイシャさんと共に七十階層の攻略を終えた。
ボス部屋のフロストドラゴン戦では、アイシャさんが
続く八十階層は火属性の魔物が棲む灼熱フィールド。あまりの暑さにアイシャさんの金属防具は玉子焼きが焼けるくらいに熱くなってしまった。
防具を脱いだアイシャさん。鎧下着も汗だくで、体にピッタリと張り付いている。
「ア、アイシャさん。か、皮鎧を買いに一度戻りましょうか」
「ん? アルスタ、顔が赤いけどお前は大丈夫か?」
「だ、大丈夫! 僕は大丈夫ですよッ!」
大丈夫じゃなかった。アイシャさんの張り付いた下着が、アイシャさんの素敵なボティラインを際立たせ、巨大なメロンのシルエットが矢鱈と気になって仕方がない。
「なら良いが、戻るのは止めとこう。この辺りの魔物だと、皮鎧も今の下着も対して防御力に違いはないからな」
いえ、アイシャさん。今の下着姿は僕の防御力を軽く突破してるんですが。
結局、アイシャさんは鎧下着のまま八十階層を進む事になった。もともと身軽なアイシャさんは、金属鎧や盾などを非装備にした事で、かなり素早い動きとなった。
七十階層と同様に、アイシャさんに任せても大丈夫な魔物は、アイシャさんが討伐し、サラマンダーや炎虎などのヤバい魔物は僕が討伐して八十階層の攻略を進めた。
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