無能と呼ばれた伯爵子息 常闇のダンジョンに追放された少年は異国の地で聖人様として崇められるようです。いやいや、僕は聖人様じゃなくて、小悪魔っ子の使いパシリですッ!
第71話 王都強襲3 【門番エドガーside1】
第71話 王都強襲3 【門番エドガーside1】
【門番エドガーside1】
晴れた日のいつもの日常。西の門から見える風景もいつもの事で、王都に入る門を通るために、人や馬車が列を作り順番を待っている。
「なあ、フランツ。件の伯爵はもう捕まったと思うか?」
俺は門番をしながら、同僚のフランツに声をかけた。列に並んでいる顔はいつも通る農家達で顔パスで通過させているから多少よそ見をしていても問題ない。
「さあね。昨夜から伯爵邸を取り囲んでいるって話だから、今日中には捕まるだろ?」
「そうあって欲しいね。じゃなきゃ、夜に酒場にも行けやしねえ」
「ああ、全くだ」
日中から夜に飲む酒の事を心配する。昨日は門の封鎖や脱獄した伯爵の捜索やらで夜の酒に有りつけなかった。今夜は昨日の分も込みで飲まなければならない。
そんな俺達の小さな幸せは、大きな音と舞い散る砂塵によって打ち消される。
それは突然現れた。
その列の中にあった三台の馬車がまるで爆発したかの様に見えた後に、青い肉の山が現れた。
その肉の山は幾重にも重なったオーガーの固まりだった。山が崩れるかの様に、オーガーが一体、また一体と動き出した。
その山を見ていた人々も、それがオーガーが重なって出来た山だと気づき、慌てふためいて門に向かって走り出した。
百匹近いオーガーが突如として、現れたのだ。逃げまどう人々が一斉に門に向かって走ってくる。正規の手順で対応しようものなら、俺もフランツも人並みに轢き殺されてしまうだろう。
オーガーとの距離はまだある。俺とフランツは門を全開に開いて人々を中に入れた。
騒ぎは詰め所にも聞こえたようで、仲間が外に飛び出してきた。
「何の騒ぎだッ!」
「隊長! オーガーの群れが現れた! 百匹近くいやがる!」
西門を警護する十人隊長に手短に報告する。十人隊長は街道の先を見て顔が青ざめていく。そこには無数のオーガーが、人々を捕まえては喰らっている地獄絵図となっている。
「きゅ、救援を呼べッ! 狼煙を上げろッ! いま王都に魔物を入れる訳にはいかないッ!!」
ゴブリンの襲撃から漸く街は回復してきた。ここでオーガーの侵入を許し、街を壊滅しようものなら、街の人々の心は折れてしまう。俺も十人隊長の考えには同意する。
十人隊長の指示により詰め所から出てきた同僚が赤い狼煙が上がた。暫くすれば援軍が来る筈だ。
「エドガー、入れるだけ入れて門を閉めろッ!」
十人隊長が大声を上げる。
「了解した。早く、早く中に入れッ!」
この時間は近隣の農家が多い。顔見知りのおっちゃんやおばちゃん達だ。出来れば全員を中に入れてあげたい。
しかし、列の後ろの方では、既に殺された人達を
「早く、早く」と同僚のフランツも皆を急かす様に大きく手を振っている。
オーガーに捕まる人達が見える。そして、列の後ろの方にマチルダの姿が見えた。マチルダは俺が気にかけていた隣村の少女だ。毎朝、彼女に挨拶する度に心の高鳴りを感じていた。そんな彼女を見捨てられるか!
気づけば、俺は押し寄せる人波を掻き分けて、彼女の下へ飛び出していた。
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