第70話 王都強襲2

「アルスタ君、卵使いエッグマスターとは?」


 一同の視線が僕に集まる中、王太子殿下の言葉に答える。


「僕の知るところでは、卵使いエッグマスターは魔物の卵を作り出す能力を持ってる人の事です」


「そんな能力は聞いた事もないな」


 王太子殿下が不思議がるのも仕方ない。ルルエル様の魔法の叡智によれば、かなりレアな能力らしい。


「僕も詳しくは分からないのですが、コブリンやオーガーが卵から産まれたのであれば、多分その能力者がコワッパーン伯爵を擁護しているのではないでしょうか?」


「うむ。聖人様がそう仰るならそうなのであろう」


 国王陛下の一声に皆さんが頷く。なんか聖人様の一言で納得するのは良くないと僕は思うな。まあ今はそれよりも大切な事がある。


「よし、魔物の出現に関する話しはこれで終わりにしよう。アルスタ君、伯爵の動きは分かるかい?」


 王太子殿下の催促で索敵魔法を使って、座標アンカーのマーキングをしたペンダントの場所を確認する。


「まだ伯爵邸にありますね」


「チッ、まだ動いていないか……」


 苦虫を噛み潰したような顔をする王太子殿下。


「シオン、もう待てんぞ。城外の被害をこれ以上は出せん」


「……分かりました、父上。エンデヴァーは北門、ベントレーは東門、ダーイシュは南門に向かってくれ。アルスタ君、申し訳ないが、西門のオーガーをお願いしたい」


「はい。勿論向かわせて貰います」


「それから伯爵に動きがあれば連絡を頼む」


「分かりました。適時連絡します」


 王太子殿下の指示を貰い全員が椅子から立ち上がる。


「それから卵使いエッグマスターと思しき者を発見したら逃さぬようにな」


「「「はっ!」」」


 エンデヴァーさん達が返事と共に顔を引き締めた。僕も頷き、会議は解散となった。



◆◆◆



「……酷い」


 その惨状にレスティは口元に手を当てて、悲痛な声を出した。そんなレスティが見つめる視線の先に広がる光景は地獄絵図だった。


 西の門がある外壁の上に僕達は瞬間移動で跳んできた。そこには百を越えるオーガーの群れに蹂躙され、幾つもの引き裂かれた死体が街道や街道脇の草原に見える。そしてその死体を暗い散らかしているオーガー達の顔は人の血で赤く染めあがっていた。


 西門は既に閉ざされており、門の近くでは逃げ遅れた人達を衛兵や冒険者達が必死に守っている姿が見えた。しかし、その姿はボロボロで、前線はあと僅かで決壊しそうだ。


「レスティとメッシーナさんは避難して傷を負っている人達の治療を! エレナさんはここから遠間にいるオーガーに魔法で攻撃! 僕とアイシャさんは前線を立て直す!」


「「「はいッ!」」」

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