第63話 新しい家

 王都に戻って二日。僕の住む家が魔法学院の近くに見つかり、今日は引っ越しだ。


 とは言え、僕には荷物など無いためやる事がない、なんて事はなく、レスティやメッシーナさんのお城にある荷物を片っ端からアイテムボックスに詰め込む作業が僕にはあった。


 僕達が住む家は三階建ての豪邸だ。なんなら実家の伯爵家よりも立派な館で、先代の国王様が隠居生活で使っていた館の一つらしい。


 庭も広くお手入れするのも難儀しそうだ。既に執事長のセバスさんが使用人の手配をしてくれていて、全員で三十人もいる。


 レスティ曰く三十人じゃ少ないぐらいって事だけど、僕にレスティ、メッシーナさんにアイシャさん、エレナさんの5人が暮らすには多すぎると僕は思う。


 因みに使用人達の月の給金は、上級使用人で金貨五枚から大金貨一枚、下級使用人で大銀貨五枚から金貨三枚との事。


 ざっくり月の人件費で白金貨一枚、それ以外にも使用人も含めた食費や光熱費、建物の維持費やお庭の維持費等もあるし、この後私兵を雇ったり、貴族ともなれば王室に納める税金なんかもあるのかな?


 いずれにしろ、僕は月に白金貨ニ、三枚程度は稼がないと公爵家を維持出来ないって事になる。当面はドラゴンを売却したお金が有るから大丈夫だけど、貴族はしっかりと働かないと直に破産するな。毎月グリフォンを一、ニ匹が僕のノルマって事か。



◆◆◆


「宜しくお願い致します、お館様」


 館のエントランスホール。僕らが玄関の扉を開けると、使用人の代表五人がこうべを垂らして、僕らが来るのを待っていた。


 先ず最初に僕らに挨拶したのさ執事長のルードルフさん。王室に仕えるセバスさんの甥っ子で多分三十代のイケメンおじさんだ。


 続いてお腹がぽっくりと出ているおじさんは料理長のコパンズさん。僕達の食事だけでなく、使用人達の食事も担当してくれるとの事だ。

 

 コパンズさんの隣をいる若い少年は従僕のヨハンさん。僕の身の回りの世話をしてくれるとの事。変に若い女性とかじゃなくて安心出来る。


 その隣がメイド長のハンナさん。スレンダー美人でやり手秘書っぽい雰囲気があるお姉さんだ。年齢と結婚については聞いてはいけないとメッシーナさんからアドバイスを貰っている。


 最後に鎧を着たお兄さんは警備兵長のレイフォードさん。あれ? どこかで見た顔だぞ?


「聖人様、王城では鬼梟オーガーアウルから国王陛下を守って頂きありがとうございました。自分達だけでは陛下をお守り出来たかどうか」


「あの時の近衛騎士の人ですか! しかし、なんでエリートの近衛騎士がこんな所に左遷されてるんですか?」


「左遷だなんてとんでもない! 栄転ですよ! 栄転!!」


「栄転……ですか?」


 はて? 僕の所に来て栄転ってどういう事?


「はい、何しろこちらには我らがアイドルのアイシャ……痛たたたたッ」


 隣のハンナさんがレイフォードさんの耳をつねって引っ張っている。


「や、や、止めてオバ……ヒギィッ! 千切れる、耳が千切れるからぁぁぁぁぁぁ」


 ハンナさんは引っ張りに加えて、更にレイフォードさんの耳を捻り回した。そんなハンナさんの表情が何一つ変わっていないのが怖すぎる。


 うん、ハンナさんは要注意だ……。


 因みにレスティの侍女は引き続きメッシーナさんが仕える事になっている。



――――――――――

【通貨のイメージ】

(中世ヨーロッパとは関係ないのでご注意下さい)

白金貨は大金貨10枚 1000万円

大金貨は金貨10枚 100万円

金貨は大銀貨10枚 10万円

大銀貨は銀貨10枚 1万円

銀貨は銅貨10枚  1000円

銅貨は鉄貨10枚  100円


つまり下級使用人で月給5万〜30万円、上級使用人で月給50万〜100万円をイメージしています。


月給5万円でも制服貸与、住む部屋と食事も支給され、洗濯もランドリーメイドがまとめて洗ってくれたりするので、人気職の設定にしてます。


物語世界の給与イメージはこんな感じです

下級市民 日当 銅貨5枚〜銀貨1枚

     月給 大銀貨1枚〜大銀貨3枚

     年収 金貨1枚〜金貨4枚


中級市民 日当 銀貨1枚〜銀貨5枚

     月給 大銀貨3枚〜金貨2枚

     年収 金貨4枚〜大金貨3枚


上級市民 月給 金貨3枚〜大金貨3枚

     年収 大金貨5枚〜白金貨5枚


では中世ヨーロッパの使用人のはというと0円〜100万円となり、物語のイメージと大きく異なります


この物語はフィクションです(⁠^⁠^⁠)



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