第61話 後悔先に立たず

 五十階の草原エリアを抜けると木々が立ち並ぶ森林エリアの五十一階となる。


 先頭はアイシャさん、次に五十階層を歩きたいと希望したエレナさん、殿しんがりは僕。バーンさん、ロッシさん、ミリーナさんの三人はディメンションルームの中で待機している。


 五十一階層は猪や熊に似た森に棲むような魔獣がいる。強さ的にはオーガーとそう変わらない。


 五十階層は五十五階の山岳エリアを越えた山向うからグリフォンやヒュドラ等のヤバい魔物が増えてくる。こちら側なら油断をしなければアイシャさんやエレナさんなら大丈夫だろう。


「アイシャさん」


 森の中を歩く僕の索敵魔法の範囲に複数の魔獣の反応がある。


「ああ、近付いてきているな」


 相変わらずアイシャさんは魔物の気配に敏感で、僕達を囲む様に近付いてくる魔獣に気が付いていた。


「エレナさんは僕からあまり離れないで下さいね」


「わ、分かったわ」


 エレナさんが僕の側に寄り魔法の詠唱を始めた。


「来るぞ!」


 アイシャさんの声と同時に八方から襲い掛かってきたのは、狼系の魔獣だった。黒い毛に覆われた体長は約三メートル。大きく開かれたあぎとに噛まれれば、四肢は簡単に食い千切られてしまう。


 アイシャさんの方に三頭、僕とエレナさんの方に五頭が同時に襲いかかってきた。


「ディメンションランス!」


 先ずは一頭、アイテムボックスの空間間移動の際に発生する空間消失現象を利用した魔法で狼系魔獣の頭を消しさる。


「プラズマショット!」


 エレナさんが雷撃魔法の弾丸を放つ。直撃した狼系魔獣は即死はしなかったが、体が痺れて動きを止めた。


「ディメンションランス!」


 僕はそれとは違う狼系魔獣の頭を消しさる。


「プラズマショット!」


 立て続けに雷撃の弾丸を放つエレナさん。


 プラズマショットという魔法は、一度の詠唱で五発のプラズマ弾を生成し、タイミングをずらして撃つ事が出来る、連射性に優れた魔法との事だ。


 エレナさんが狼系魔獣をしびれさせている間に、痺れていない狼系魔獣を僕が倒していく。


 そして、僕達の方を襲った五頭の狼系魔獣を全て掃討した。


 アイシャさんはと見て見れば、三頭の狼系魔獣の首を全て跳ね飛ばし、あちらの戦闘も終了していた。



◆◆◆



 五十二階は巨大な湖だ。流石にここは歩いて行けない。


「ちっ、流石に水着は持って来なかったな」


 アイシャさんは水着が有れば泳いで渡るつもりなんですかね? 湖の中には水棲系魔獣や魚の魔物が沢山いるから泳いで行くのもどうかと思う。


 そして残念ながら、非常に残念ながら、僕も水着を持っていない。


 アイシャさんの水着姿か……。あの巨大なメロンを隠すのなら、やはりマイクロ――。


「なに鼻の下伸ばしてんのよ!」


「ゴホンッ、ゲホンッ」


 エレナさんの言葉で現実に引き戻された。エレナさんを見ると赤い顔をして怒り顔だ。エレナさんもスタイルが良いから水着が似合いそうだ。


「な、何でもないですよ……」


 紳士な僕が女の子の水着姿に興味がある筈……有ります。


 後悔先に立たずとは正にこのことか。次回に備えて水着は購入しておくべきだな。

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