無能と呼ばれた伯爵子息 常闇のダンジョンに追放された少年は異国の地で聖人様として崇められるようです。いやいや、僕は聖人様じゃなくて、小悪魔っ子の使いパシリですッ!
第57話 何が地味なの? 【エレナside】
第57話 何が地味なの? 【エレナside】
【エレナ視点】
オークキングと死闘を終えた私達は聖人様……もといアルスタ君と一緒に四十階に降りる事になった。
バーンさんやロッシさんは四十階層に興味が沸き、私は彼の魔法に興味があった。
アルスタ君からは、私が公爵家で働く条件として、聖人様と呼んではいけないと言われている。
アルスタ様と呼んだら、『様』も恥ずかしいからアルスタでよいと言われ、結果アルスタ君で落ち着いた。
アルスタ君が使う魔法は全てが規格外。アイテムボックスの魔法などはお
先ほどの戦闘では空間障壁という防御魔法を使っていた。私達の戦闘には加わらない約束をしていたから、アルスタ君は戦闘後に平謝りしてたけど、ミリーナさんは『私の防御魔法だけでは、バーンは死んでいました。聖人様ありがとうございました』と涙ながら感謝していた。
オークキングの巨大な戦斧を
四十階層に降りると、アルスタ君は階段付近に座標アンカーの魔法でマーキングをしていた。座標アンカーは索敵魔法を使う友達から聞いた事があった。深い山中を歩く時などで迷子にならない様に魔法で目印を付けておく魔法よね。
でもアルスタ君の魔法の使い方は、そういう次元の話では全然なかった。三十階とボス部屋の三十九階でもやっていたので、聞いてみたら瞬間移動の魔法の目印にするんだとか。瞬間移動の魔法って何よ!?
四十階は今までの通路よりも幅が広くて歩きやすい。そう言っていたらアルスタ君が『オーガーが群れで戦いやすい様に通路が広いんですよ。六十階層の巨人エリアはもっと広いんですよ』とか言われた。
六十階層の事なんて考えた事もなかったから、本当に驚いた。しかも笑いながら言うとか……。
「ディメンションランス」
そして前方に現れるオーガーを、アルスタ君が謎の空間消失魔法とかやらで、オーガーの頭を消失させて瞬殺……。
オーガーよ! オーガーッ!
一匹で小さな村ぐらい壊滅させる魔物を瞬殺だよ!
「……聖人様の魔法は凄えな。オーガーがまるで雑魚モンスター扱いだよ」
「……Sランク冒険者は規格外じゃないとなれないってのは本当なんだな」
「……エレナさん、聖人様の魔法ってどうなっているんですか?」
「……私に聞かないで」
私にも分からないわよ……。
「エレナさん、僕の魔法って地味でしょ。僕もエレナさんみたいに派手な魔法が使いたかったです」
地味? 何が地味なの?
「僕の魔法は誰にも見えないし、音はしないし、技名を自分で言わないと――」
その時、前方にまた新たなオーガーが現れ、いきなり頭が消失して、血を拭き上げながら倒れた。
「こんな感じで、突然頭を消失とかスプラッターになっちゃうんですよね」
……怖ッ!!
普段は何でもおちゃらけたリアクションを取るロッシさんも、青い顔をしている。不可視で無音で一撃必殺の魔法。はっきり言うわ! めちゃめちゃヤバい!
トホホと自分の魔法にがっかりするアルスタ君。いやいや、がっかりする要素がどこに有るのか全然分からないんですけどぉ!
そんなアルスタ君のお屋敷で今後は働ける。アイシャ様のお陰だ。
公爵家で働けるとなれば、田舎の父も納得してくれるだろう。
そして……アルスタ君の婚約者候補……。アイシャ様の冗談だと思うけど……。
私は黒髪の少年の横顔を見る。今まで年下の男の子を恋愛対象として見た事は一度も無かった。何故なら私は私よりも強い人が好きだから。
でも彼は強い……。彼なら……。
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