第56話 地下39階フロアボス戦 3
エレナさんは魔法を唱え始め、バーンさんは炎の剣を構えたまま、何かを待っているのか、動こうとしない。
「チェーンバインド!」
ミリーナさんがデバフでオークキングの動きを鈍らせようとするが、筋骨隆々のオークキングの動きは止まらずこちらに近付いてくる。
「オラァッ!」
災害級モンスターに臆する事なく、ロッシさんが跳躍して、血みどろの頭を狙った一撃を放つ。
それを払いのけるかの様に、巨大な戦斧を振り上げるオークキング。
その戦斧に足を乗せ、更に上方へと跳ね上がるロッシさん。
「
バーンさんが炎の剣戟を飛ばし、戦斧を振り上げた事で無防備になったデブった腹を切り裂く。外皮は既に雷撃魔法で焼かれていた為、その一撃は内蔵まで届き血飛沫を上げた。
すかさず炎の剣を持ったままバーンさんがオークキングに突っ込む。
オークキングは振り上げていた巨大な戦斧を叩き付ける様に振り下ろした。
すんでのところでそれを横に躱すバーンさん。
ダンジョンオブジェはオークキングの怪力を持ってしても破壊は出来ない。石畳に叩き付けられた戦斧は火花を散らし跳ね上がる。それを持ち前の膂力で強引に横に薙ぎバーンさんを追撃する。
それを予測出来ていなかったバーンさんは躱す体勢が取れない。剣で防御の体勢に入っているが、あの巨大な戦斧相手に受けきれるとは思えない。
真っ二つに両断されるバーンさん。そんな未来が見えた僕は防御魔法を放っていた。
「空間障壁!」
「プロテクションシールド!」
同時にミリーナさんも盾魔法を放つ。
バーンさんを斬り裂こうとした戦斧は魔法の盾に弾かれ、オークキングは大きく体制を崩した。
「オラァァァァァァッ!!」
戦斧を蹴り上げ、上方に飛んでいたロッシさんは、十メートル近く上にある天井を蹴って、オークキングの頭上からショートソードで斬りかかる。
元々動きの鈍いオークキングが体勢を崩していては、その攻撃を躱す事は不可能。
ロッシさんのショートソードはオークキングの左肩口に深々と突き刺さった。そしてロッシさんは、剣を突き刺したままにして後方に飛び退く。
「エレナ、今だッ!」
「エレナッ!」
「エレナさんッ!」
全員がエレナさんの名前を呼ぶ。
「ライトニングスマッシャーッ!」
放たれた雷光はオークキングの左肩口を直撃。その高圧電流はショートソードを伝わってオークキングの体内から焼き上げていった。
オークキングの体からプスプスと黒い煙と豚の脂が焼ける香ばしい匂いが漂う。
「やったか!?」
ロッシさんがまたしても禁忌ワードを口にしたが、今回は流石にセーフっぽい。
三メートルを超える巨体のオークキングは前のめりに倒れ、二度と動く事はなかった。
まあ、24時間経てばリポップするんだけどね。
「やった……よな?」
ロッシさんが確認する様にもう一度呟く。
「あ、ああ。やった……。俺達はあのオークキングを倒したんだ……」
炎を纏う剣を杖代わりにして倒したオークキングを疲れた顔で見るバーンさん。
ミリーナさんはホッと胸を撫で下ろす。多分勝利からの安堵感よりも、バーンさんが生き残った事への安堵感だろう。
パチパチとアイシャさんが手を叩きストライクラビットの勝利を讃えた。
僕も冒険者の本気の戦闘を見れて、妙な高揚感に覆われているのが分かる。
「皆さん、おめでとうございます」
僕も拍手をして勝利を讃える。バーンさんはかなりのダメージを受けて死にそうだったけど、他のメンバーに大きな怪我はない。そういう意味ではロッシさんの体捌きは凄いの一言につきる。
そして功労者のエレナさんはというと、笑顔は浮かべているものの、少し不満気な雰囲気があった。
メンバーが円陣を組むように集まり、その真ん中に手を伸ばして全員が手を重ねた。
「俺達ストライクラビットの勝利にッ!」
「「「勝利にッ!!」」」
そして全員が両手を上げて
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