第54話 地下39階フロアボス戦 1

「ヨシ、扉を開けるぞ」


 バーンさんが三十九階ボス部屋の扉に両手を当てて振り向いた。


 ニ十九階のボス部屋を出てから丸々ニ日かけて三十九階のボス部屋まで来た。途中で出てきたオークウォリアーやオークジェネラルにストライクラビットの面々は体力を削られていた。


 勿論、僕やアイシャさんが手伝ったらこんなに時間はかからない。ストライクラビットのメンバーは自力で三十階層をクリアしたいとの事で、よほどの危機にならない限りは手を貸さない約束をしていた。


 ただ倒したオークは僕のアイテムボックスを使用した。普段は高値で売れる部位だけを持ち帰るみたいだけど、流石にそれは勿体ない。


 僕がアイテムボックスを使った時は、皆さん驚いていたし、魔法学院次席だったエレナさんは興味津々で僕の手元を見ていた。


 夜の野営もディメンションルームは使わずに、ダンジョンの片隅で見張りを立てながら行った。


 唯一ディメンションルームを使用したのはトイレだけだ。エレナさんやミリーナさんもディメンションルームのトイレを知ってしまうと、ダンジョンの影に隠れてのお花摘みはもう出来ないと言っていた。


 そんなこんなで、ストライクラビットは傷付きながらもボス部屋の前までたどり着いた。流石に疲弊したままで三十九階のボスに挑む事はせず、扉の周辺でもう一泊する事にした。


 見張りは交代で行い、もし他のパーティーがボス部屋に挑戦しに来たら、優先権を主張するとの事だ。


 結局他のパーティーは来ないまま一夜が明けた。三十九階のボス部屋に挑む冒険者は少ないらしい。オークキングは災害級モンスターで、そんなリスクを侵す事はしないとか。


 そして、バーンさんがボス部屋の扉を開ける。部屋の中央に位置する場所に見える六つの影。一際大きな影がオークキングだ。有に三メートルはある。まあ、オークジャイアントは五メートルはあったけどね。あれはもうオークじゃないと思う。


 ストライクラビットのメンバーが部屋の中に入り、続いて僕とアイシャさんが部屋に入った。ここでも僕達は基本手を出さない。とはいえ、身重のミリーナさんはフォローするつもりだ。


 ボス部屋にいたオークは、オークキングにオークジェネラルがニ体、オークメイジにオークウォリアー、そして前衛にオークソルジャーがニ体だ。


 ミリーナさんがバーンさんとロッシさんにバフ魔法をかける。ストレングス上昇、アジリティ上昇、そしてプロテクションの三種類だ。


 エレナさんも詠唱を始めた。閉鎖的な空間では、迅雷風裂テンペストは使えないとの事だ。部屋中に嵐が吹き荒れ、術者以外全員が被害を被る事になってしまうからだ。ド派手な魔法を見て見たかっただけに残念だ。


 バーンさんとロッシさんが二人がかりで右側のオークソルジャーに走りだし、オークソルジャーの持つなたの様な剣とバーンさんの剣がぶつかり合い火花を散らす。


 低い姿勢でロッシさんがオークソルジャーの脇を走り抜ける。その際にオークソルジャーの太い左腿をショートソードで切り付けた。傷は浅いが顔を歪めるオークソルジャー。


 バーンさんは灘の様な剣を、ブロードソードで受け流すと、返す刀で首筋に剣を打ち込む。それでも外皮の厚いオークソルジャーの首の皮一枚を切っただけだ。


 そこに逆側からロッシさんが大ぶりのパンチで殴り付ける。合わせるようにバーンさんが剣に力を入れて、首に剣を押し込む。首の骨は断ち切れなかったようだが、半分ほど切断された首から鮮血が吹き出す。


 剣を抜いたバーンさんとロッシさんは背後から迫るもう一匹のオークソルジャーに標的を移した。


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