第52話 エレナさんの事情 1
エレナさんの学院時代の事はレスティから少し聞いていた。魔術も学業も優秀で、無いのは貴族としての地位だけだったとの事。
そして、僕に平謝りをするエレナさんに事情を聞いた。それは以下の様な
◆◆◆
エレナさんが次席で卒業し、レスティやメッシーナさんも通う王立魔法学院は、覚醒の儀で魔法系統の力を授かった貴族が通う名門校だ。
エレナさんは田舎男爵の三女で、親としては良い所の子息と縁が出来ればと入学させていたとの事。
そんなエレナさんは一年の頃から並々ならぬ努力をして、ニ年にして頭角を表し、三年で
しかしエレナさんは頑張り過ぎた。
レスティの様に地位のある女性ならまだしも、田舎男爵家の三女では、高位貴族の子息令嬢が多数在学する魔法学院に於いて、彼女は貴族ヒエラルキーの最底辺だ。
そんなエレナさんが首位では、面白くないと思う貴族は沢山いた。男尊女卑の厳しいこの世界で、田舎貴族の女性では当たる風も強い。
これは残念な事だけど、プライドの高い貴族男性は、自分よりも能力の高い女性に好意を寄せる事は少ない。
同性からしても、美人で田舎貴族の娘に、自分が劣る事を認める事は
そして、学院には魔法の成績や学業以外にも、内申点が有り、学院に寄付する金額の多い貴族家ほど内申点は高いらしい。
その結果、彼女がどんなに頑張っても、
そうは言っても名門王立魔法学院の次席卒業だ。婿のなり手はいなくても、働き口なら幾らでもあった。そして、その能力の高さから宮廷魔術院に入る事となる。
しかし、魔術院も貴族社会であり、美しく優秀な若い女性が働くには厳しい職場だったらしい。所謂セクハラと嫌がらせの毎日だったとの事。
そして雨降りのある日に事件がおきた。
その日は突然の雨で多くの職員が雨に濡れながらの出勤となった。
雨に濡れ、衣服が透け、美しい肢体が薄らと見える美少女に、セクハラ野郎共の食指が動かない筈がない。
キモいおっさん達に衣服の上からお尻を触られ、キレたエレナさんが、懲らしめ程度に雷魔法で、軽くお尻に電流を流した。
しかし、お尻に触った男性職員は、手がビリっと痺れる程度では済まなかった。雨で頭の先から足元までが濡れていた男性職員。僅かな電流でも、全身くまなく電気が走ったうえ、その衝撃で気絶までしてしまった。
そしてその男性職員が、悪い事に魔術院の院長にして高位貴族の伯爵様だった。伯爵は勿論セクハラ等は揉み消し、一方的に雷魔法を撃たれたと言いはった。更に『落とし前つけろや、ゴラァ』的に、エレナさんを
怖くなったエレナさんは魔術院を辞職したのだが、その伯爵はエレナさんの再就職の妨害までしてきた。
働き口が見つからないエレナさんが、誰でもなれる権利があり、貴族社会に脅かされにくい冒険者になったのは仕方がない事だった。
◆◆◆
そんなエレナさんは、未だにその伯爵から目を付けられている。これ以上何か有れば実家の男爵家にまで迷惑をかけかねない。
そんな心情の時に特級公爵の僕に粗相を働いたと思い、平謝りをしていたとの事だった。
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