第45話 晩餐会2

「ワーズナー伯爵、先日はありがとうございました」


 晩餐会では色々な貴族の方に挨拶をして回った。当然、位の高い人から挨拶をして回る。


 第二妃とその王子、第三妃とその王子、第四妃とその王子、皆さん笑顔で僕を歓迎してくれた。王子達は齢も僕と近く、ドラゴンや聖剣の事に興味津々で、機会を改めて作り、その時にゆっくり話をする約束をした。因みに王女や他の兄弟達はお留守番との事だ。


 続けて王族公爵に挨拶する。国王様のお兄さんが晩餐会に出席していない事は聞いていたので、国王様の異母兄弟にあたる公爵に挨拶をした。


 その後、臣民公爵、侯爵と回り、最後に伯爵となる。子爵以下の貴族は挨拶しなくていいらしい。


 見知った顔のワーズナー伯爵の顔を見て人心地がついた。


「私の方こそ聖人様とこうしてお近付きになれて光栄です」


 僕が挨拶をしていない貴族の人達がチラチラとこちらを見ている。少し慎ましい身なりからして下級貴族の人達だろう。とはいえ僕から話しかけたら歯止めが効かなくなりそうだよね。


「少々宜しいでしょうか。私の知り合いに美味い酒を作る土地を治めている者がおります」


 周りの視線を感じ取った伯爵がお酒を口実に、近くの貴族を紹介してくれるようだ。


 僕はチラッと隣のレスティーア様を見ると、コクリと頷いたので「構いませんよ」と答えた。


「ウェリントン卿、ノーラッド卿」


 二人の若い貴族が伯爵の隣に並ぶ。伯爵の紹介で彼等は葡萄農園を営む子爵との事だった。その彼等の後ろにも若い貴族が数人立っている。


「聖人様、ワーズナー伯爵のご厚意にてご挨拶の機会をお与え頂き、心から感謝をしております」


 ウェリントン子爵がそう切り出すと、隣に立つノーラッド子爵や後ろの若い貴族達も頭を下げた。


「美味しいお酒があると伺いましたが、幾らか都合つけて頂けますか?」


「喜んで献上させて頂きます!」


「献上? いえお金は払いますよ?」


「いえいえ、本日はお祝いの場でございます。我らアンデス葡萄農園連合は聖人様に最高なワインを献上致します」


 今アンデスって言った? 僕の異世界日本の記憶にありアンデス山脈に似た名前だ。


「あの、アンデスとはどういった名前なのですか?」


「アンデスは我らが治める地に連なる聖連峰の名に因んで付けた名前です。連峰の名の由来は伝説の聖女様がお付けになったと伝えられております」


「聖女!? 聖女とはミツヒメ・ミナヅキ様の事ですか!?」


「は、はい。そうですが……。もし聖女様にご興味ございましたら、是非私共の領地に足をお運び下さい。聖女様にまつわる石碑などがございますので」


「は、はい! 時間が出来たら是非伺います!」


 少し食い気味の僕の返事に、一歩後ずさるウェリントン子爵。しかし、ノーラッド子爵が笑いながらウェリントン子爵の肩を支えると二人は満面の笑みを浮かべた。


 聖女様にはとても興味がある。水無月の名がどうしても引っかかるんだよね。


 見ればウェリントン子爵を中心に若い貴族の輪が出来ていた。


「ワーズナー伯爵、子爵達を紹介してくれてありがとうございました」


「いえいえ、宜しければ私の領地にも足を運んで下さい。聖人様であれば大歓迎でございます」


「はい、喜んでお伺いします」


 僕が時間が取れる様になるのは、まだ先の事だ。先ずはお酒を持ってルルエル様のもとに帰らないといけないからね。



◆◆◆



 パーティー会場が落ち着いた頃合いで、メイドさん達がカートを押して、食事を運んできた。美味しそうな料理を乗せたカートが、次々と壁際に並べられていく。


 そのカートの中には僕が提供したトライヘッドドラゴンのお肉もある筈だ。プロの調理人が調理したお肉には、めちゃめちゃ興味がある。何せ炙っただけであれだけ美味しいんだから、ちゃんとした味付けをしたら、もっと美味しくなる筈だ。


 僕とレスティーア様は、カート沿いに歩く。どのカートの料理も美味しそうで食指が動く。そしてトライヘッドドラゴンのお肉を盛ったお皿が乗るカートの前で足を止めた。


 お肉は一口で食べられるサイズに切ってあって、白いお皿の上に三切れ乗せてあり、赤茶色したソースがかかっていた。


 僕とレスティーア様は一皿づつ手に取り、銀のフォークを刺して口に運ぶ。


「!? 美味いッ!」


「とても美味しいです!」


 お肉は柔らかく焼き上げてあり、お肉の周りに薄い衣を纏わせる一手間のお陰で肉汁が流れ出ていなく、噛んだ瞬間に最高に美味い肉汁と程よい弾力のあるお肉が、口の中でとろける様に消えていく。こんなん食ったら、ただの炙り焼きなんか食えなくなってしまうよ!


 僕らの声を聞いて、周りに人が集まってきた。各々がお皿を手に取り、お肉を口にした。


「美味いッ! なんだこの肉は!?」

「まさに絶品とはこの事だ!」

「お替りだ! お替りは無いのか!」


 皆が目が飛び出るほど驚いた顔をして、カートに乗っていたお皿はあっと言う間に無くなった。


 流石は常闇のダンジョンの守護竜だ。普段から美食に慣れている貴族に舌鼓を打たせるとは。


 その後、調子に乗ったシェフがバンバンお肉料理を出して、貴重なトライヘッドドラゴンの肉を浪費したと国王様に叱られたと、後になって僕は聞いた。



―――――――――――――

カクヨムコン規程文字の10万字に到達出来ました。


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ありがとうございました。


カクヨムコンの読者選考予選突破の★の数にはまだまだですが、引き続き連載していきます。


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