第39話 Sランク冒険者
「「マジックボックスぅぅぅ!?」」
冒険者ギルドの入会試験を受け終えた僕は、特例でCランクの認定を貰えた……と思ったら、メッシーナさんが納得いかんと、受付嬢のお姉さんと口論を始めてしまった。
僕は素材を引き取って貰いたいだけだから、冒険者ランクにはこだわらないんだけど……。
話はなんだかんだで、Sランクというとんでもない結末を迎えてしまった。受付嬢のお姉さんから最初に説明を受けた時には、冒険者ランクはEランクからAランクと言っていた。
Sランクとはなんぞや?
受付嬢のお姉さん曰く、規格外の冒険者に付けらるランクがSランクで、大陸でも数人、ここエルクスタ王国では一人もいないとの事。
ギルドマスターから常闇のダンジョンを踏破した証拠を見せてほしいとの事で、僕達は魔物買い取りの為の広い部屋に移動した。
そして僕は魔物を入れているマジックボックスを入れてあるバックパックから魔物を取り出そうとした所で、マジックボックスと聞いてギルドマスターと受付嬢のお姉さんが驚いて大きな声を上げた。。
「はい。覚醒の儀で授かった能力です」
「瞬間移動に続いて、伝説級の魔法がまた……。マスター、もうSランク確定でいいんじゃないんですか?」
「お、おう。だが常闇のダンジョンのラスボスは、めちゃめちゃ気になる。是非見てみたい」
ギルドマスターのリクエストに答えて、僕はマジックボックスからブラックドラゴン、レッドドラゴン、フロストドラゴンの頭を持つトライヘッドドラゴンを出した。とは言っても、部屋の大きさ的に三つの頭と首の付け根までだ。
「………凄えぇぇぇ。これが常闇のダンジョンのラスボスかよ……」
「ド、ドラゴンの頭が3つも……。ま、ますたぁぁぁ、こんなの買い取ったらギルドは破産しますよぉぉぉ……」
「ちげえねえな。こいつは王国にでも買い取って貰うしかねえやな。いや、しかし良いもん見せて貰ったぜ。こんな化け物を倒したってんなら、Sランクで間違いねえ」
トライヘッドドラゴンの買い取りは出来ないみたいだけど、僕のSランクは確定したみたいだ。あまり高評価を貰っても困ってしまうんだけど。
「それで持ち込みの件ですが、トライヘッドドラゴン以外にも色々あるので見て貰えますか?」
街の人に食材として配れそうな魔物をマジックボックスから取り出す。
「オークジャイアントなんて初めて見ましたよ……。それがこんなに沢山……」
数体のオークジャイアントを出した時点でストップがかかった。
「悪りいな。こんまま出されても捌ききれん。街の肉屋連中を連れてくっから、ちっと待っててくれ」
ギルドマスターからそう言われ、冒険者ギルドで暫く待つ事になった。ギルドマスターはギルド職員に肉屋さんを呼ぶように手配した後に、ギルド三階にある応接室に僕を通した。
応接室にいるのは僕とギルドマスター、メッシーナさんと受付嬢のアンジェリカさんだ。アンジェリカさんが香りの良い紅茶とお茶菓子を出してくれた。
そこでギルドマスターから常闇のダンジョンについてあれこれと質問され、五十階から百階に至る各階層の話をした。
「五十階層は興味深いな。素材の宝庫かもしれんな」
五十階層は自然豊かなオープンフィールドで、確かに珍しい草花や素材になりそうな魔獣が生息している。
「でもマスター、未だに四十階層を越えられないんですよ。しかもグリフォンの群れとか災害レベル的にヤバいじゃないですか」
僕がグリフォンの群れと交戦した時の話をした時に、アンジェリカさんは青い顔をして話を聞いていた。
「まあそうだな。アルスタ、倒したグリフォンは売って貰えるか。グリフォンの羽なら単品でもレアアイテムだ。風の加護が有るから持ちたがる貴族や冒険者は多い。羽毛を集めたダウンジャケットは、防御力がめっぽう高い上に、風の加護でアジリティ補正も付いて動きやすいから、最高級防具として取り引きされているぐらいだしな」
「いいですよ。グリフォンなら十数頭は有ります。全部引き取って貰えますか」
マスターから快諾を得て、グリフォンは一頭あたり白金貨十枚で買い取って貰えた。十八頭あったから白金貨百八十枚となった。
ちなみに白金貨は大金貨十枚に相当する。大金貨は金貨十枚、金貨は大銀貨十枚、大銀貨は銀貨十枚、銀貨は銅貨十枚、銅貨は鉄貨十枚がこの大陸の基本通貨になる。
一般的に使われるのは大銀貨までで、金貨、大金貨、白金貨は貴族や商人、冒険者あたりでしか使われない。
あれこれとお話をしている間に、街のお肉屋さん達が集まって、解体場でオークジャイアントの解体を始めているとの事だった。
僕は解体場の方に行きたがったが、ギルドマスターが離してくれず、結局僕が解体場に行けたのは、全てのオークジャイアントの解体が終わった後だった。
解体場にいたお肉屋さん達にジャイアントオークのお肉を無料提供する話をしたら、物凄く喜ばれた。僕としてもお腹を空かした子供達に食べて貰えれば満足だからね。
その後も、オークジャイアントやコカトリスなどの食材をお肉屋さん達に無料提供した。
グリフォンを売った事で懐も温まった僕は冒険者ギルドを後にした。ギルドマスターはまだ常闇のダンジョンの事を聞きたかったようだけど、気付けば結構いい時間になっていた。今日は結局ルルエル様のお買い物は出来なかった。
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【資料】この世界のお金の価値はこんな感じです。(中世ヨーロッパの価値とは違いますよ)
白金貨は大金貨10枚
大金貨は金貨10枚
金貨は大銀貨10枚
大銀貨は銀貨10枚
銀貨は銅貨10枚
銅貨は鉄貨10枚
パン 鉄貨5枚〜銅貨1枚
エール 銅貨5枚
食事 銅貨5枚〜銀貨1枚
一般的な宿 銀貨1枚〜大銀貨1枚
給与
下級市民 日当 銅貨5枚〜銀貨1枚
月給 大銀貨1枚〜大銀貨5枚
年収 金貨1枚〜金貨5枚
中級市民 日当 銀貨1枚〜銀貨5枚
月給 大銀貨3枚〜金貨1枚
年収 大金貨1枚〜大金貨2枚
上級市民 月給 金貨3枚〜大金貨3枚
年収 大金貨5枚〜白金貨5枚
男爵 年収 白金貨10枚〜30枚
子爵 年収 白金貨20枚〜50枚
伯爵 年収 白金貨100枚〜300枚
侯爵 年収 白金貨500枚〜1000枚
※貴族は王室への納税、領地の運営費、土地や屋敷の管理費、衛士や使用人の給与などの支出も沢山有ります。よって上級貴族になればなるほど、年収が多くなります。
因みにグリフォン一体の買い取りが白金貨5枚の理由はこんな感じです。
Aランク冒険者の命の価値が白金貨1〜5枚と設定しています。所謂命懸けの戦いの値段ってヤツです。
グリフォン討伐にはAランク冒険者パーティー5人は必要です。
よってグリフォン一匹の価値は白金貨5〜20枚ぐらいが妥当になります。
アルスタ君が一匹白金貨10枚だったのは、アルスタ君が交渉下手だったって感じかな。粘れば15枚は行けたかも。
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