第26話 一ヶ月ぶりの地上
いやぁ、役得とはまさにこの事だろう!
まさか一国の王女様をお姫様抱っこ出来るなんて、普通の人生では一生起きない奇跡的な事だよね!
両腕から伝わるレスティーア様の柔肌の感触が何ともたまらんですたい!そして、僕の首に巻き付くレスティーア様の両腕から伝わる温もり。ともすれば、僕の頬に唇がくっついてしまうんじゃないかと思うぐらいに綺麗な顔も近い。
デヘヘと鼻の下を伸ばしたくなる邪な気持ちを僕の中の紳士が押さえつける。そんな心の葛藤のおり、レスティーア様の視線に気が付いた。
「な、何か御用ですか?」
「……いえ」
レスティーア様の頬が少し赤くなっているのは、
「もう少しで地上に出れますからね」
話題を地上に移し誤魔化す僕。この至高の時も間もなく終わる。僕はそれを堪能しながら地上を目指した。
◆◆◆
「
レスティーア様をお姫様抱っこしたまま常闇のダンジョンから地上に出た。辺りは暗いが、東の空が明るい。どうやら地上はこれから朝を迎えるようだ。
長いことダンジョンに入っていたせいで、時間の感覚は大きくズレていた。体内時計的には、そろそろ晩飯かなって感じだ。
エルクスタ王国側のダンジョン入り口は、古い遺跡の様な物が立ち並ぶ場所にあった。ダンジョンの中もそうだったけど、近くに人の気配はしない。
「レスティーア様、いま降ろしますね」
「えっ?」
「はい? ……降ろしますよ?」
「そ、そうですね」
僕は片膝をついてレスティーア様をゆっくりと降ろし、レスティーア様は足が地面に付くと、自分の足で立ち上がった。なぜかレスティーア様の顔に元気がないのは気のせいか?
「ディメンションルーム!」
何もない空間に扉が現れる。扉を開ければ中はディメンションルームだ。
「お待たせしました。地上に出ましたよ」
部屋の中ではキルト生地の鎧下着を着たアイシャさんが寝転んでいて、メッシーナさんはちゃぶ台でお茶をすすっていた。
「まじか? もう着いたのか?」
「は、早いですね。レスティーア様はご無事ですか!?」
メッシーナさんの声に合わせたかの様にレスティーア様も部屋の中に入ってきた。
「私は大丈夫ですよ。でもこんなに早く地上に戻れるとは思ってもみませんでした」
五メートルの短転移でも、連続使用で乱発すれば時速50キロメートルぐらいの移動速度になる。徒歩に比べ12倍、しかもルートはレスティーア様が完全に覚えていた。どんな記憶力だよ!
道中の会話でレスティーア様は魔法学院の三年生トップの成績と聞いて少しだけ納得した。でも、三十五階分の迷路だよ? 魔法学院三年生首席恐るべし!
「で、どうする? みんなで歩いて帰るのか?」
とはアイシャさんだ。僕はここが何処か分からない。何せ千キロ離れたザートブルク王国からダンジョンに入っているからね。もちろんエルクスタ王国に来た事は一度もない。って言うか伯爵家から出た事すらない。
「徒歩で帰りましょう。これ以上アルスタさんにご迷惑をおかけする訳には参りません」
「特に迷惑だとは思ってませんよ」
「いや、歩いて戻ろう。流石にあの部屋にずっといるのは飽きた」
メッシーナさんもコクコクと頷いていたので、徒歩でエルクスタ王国の王都まで戻る事になった。
出発前にディメンションルームで朝食を取った。僕は相変わらずのトライヘッドドラゴンのお肉を焼き、女の子達はドライベジタブルを水で戻したスープや、色とりどりのドライフルーツをお皿に盛ったデザートなどを作った。
アイシャさんが「この肉、やっぱ激うま過ぎる! 他の肉を食うのが怖くなってきたぞ」って言っていたので、「後で、切り分けてお譲りしますよ」と言ったら抱きつかれた。
僕のデザートは巨大メロンになりました!
ゴチです!!
―――――――――――――
アルスタ君、無事に地上に生還出来ました。次話なら王都編となります。
引き続き宜しくお願いします。
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