無能と呼ばれた伯爵子息 常闇のダンジョンに追放された少年は異国の地で聖人様として崇められるようです。いやいや、僕は聖人様じゃなくて、小悪魔っ子の使いパシリですッ!
第23話 三対の白い羽のアクセサリー【レスティside】
第23話 三対の白い羽のアクセサリー【レスティside】
「レスティーア様、彼は何者何ですか?」
私の背中をタオルで洗いながらメッシーナがアルスタさんに疑問を抱く。アイシャさんが言っていた様に、彼が人間なのか私も疑問に思ってしまう。
「……分かりません。ただ、間違いなく良い人だと思いますよ。でなければ私達を助けたりはしないでしょ」
「それはそうですが、百階層から上がって来れる者がいるなんて信じられません」
「そうなんですよね……」
我が国は北方連合八カ国の中でも一番小さな国ですが、ダルタニアス王朝の末裔にして、大陸でも最古の歴史を持つ国です。
その三千年を超える歴史の中でも、常闇のダンジョンの最下層に辿り着いた者の記録はありません。
自称十三歳の少年にそんな事が出来るものでしょうか。
「それに、この部屋は何でしょうか? ディメンションルームと言っていましたが?」
「……分かりません。ただ、間違いなく彼は空間魔法使いです。あのオークジェネラルを倒す時に、アイテムボックスと言っていました。それに瞬間移動の魔法も使っていました」
「……ア、アイテムボックスに瞬間移動って、ロストマジックじゃないですか!」
「そうです。700年前の魔王の獄炎により滅びたダルタニアス王朝と共に灰になった古代魔法。彼はその魔法が使えます」
オークジェネラルを前に、絶望を抱いた私の心。メッシーナが血の海に倒れ、アイシャさんが魔物の殴打で宙に舞った時、突然彼が私の前に現れました。
オークジェネラル、オークメイジを一瞬で倒し、死の淵からメッシーナを救い、深手を負ったアイシャさんの傷も治してくれました。
その時の私の心は、光に包まれる様な、そんな思いがしました。そう、我が神クロノエル様が降臨なさったのかと……。
……おや?
私は何か大切な事を忘れています……。何か違和感があったのですが……。
色々あって、色々あり過ぎて、彼がお父様達の為に万能薬をくれる約束をして……。
「レスティーア様、それでこれから如何されますか?」
何か思い出せそうでしたが、メッシーナの言葉でまたぼやけてしまいました。
「そ、そうですね。お風呂を出ましたら直ぐにお城に戻りましょう」
久しぶりに体を清められた事で、今まで張り詰めていた心に少しだけゆとりを持つ事が出来ました。
お風呂を出て、脱衣所で脱いだ服をメッシーナが私に着せてくれ……、あっ!
私の服に施されている王家の紋章を見て、先ほどぼやけていた大切な事を思い出しました! 彼の胸に飾られたアクセサリーは!
私は慌てて脱衣所から飛び出しました。
「レ、レスティーア様ぁッ! お召し物をぉぉぉ!」
脱衣所にいるメッシーナが何か私に言っていましたが、今はそれよりも大事な事があります!
彼の胸に飾られた三対の白い羽のアクセサリー。我が王家の紋章と酷似するあのアクセサリーは――。
「あのアクセサリーは神物の聖紋!」
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