第19話‐1 神物の秘宝2 【レスティside】

「最高級の解毒薬マンドラゴラの涙、究極の万能薬エリクサー、不老の果物ネクター……どれも……駄目ですね」


 書庫で調べた物は、どれも一生をしても手に入るか分からない伝説級の薬ばかりでした。


「……十日だけでも延命出来れば」


 藁にもすがる気持ちでお城の書庫を調べました。しかし、現実的に直ぐに手に入る様な物は、一つも見つかりません。


 高位の解呪魔法を使える高僧は不在で、上位冒険者の中にも高位魔法を使える者もいるのですが、セバスの話では王都を中心に活動する上位冒険者パーティは、王国の北に広がる魔の森の調査に騎士団と共に出ていて不在との事でした。


「せめてお兄様だけでもお元気であれば……」


 優秀なお兄様であれば、何か良い案が思いついたかもしれません。いえ、魔術院も既に動いている筈ですね。素人の私が考えるよりも良い対策が沢山出てくる筈です……。


 ……私は待つ事しか出来ないのですか?


 ……何を待つのですか?


 ……お父様やお母様、お兄様の死を?


 ……嫌です。それだけは嫌です。何もしないで家族の死を待つなんて出来ません。


 何か、何か、何か……。


『レスティーア、調べるなら常闇のダンジョンについて調べてみたらどうだ。噂じゃ神物の秘宝が有るって話だぜ』


 思い出したのは、あの伯父様の言葉。


「神物の秘宝……」


 私は七百年前に滅びたダルタニアン王朝の伝承を記した書物を手に取りましたした。


「聖剣、聖杯、聖紋」


 三神物と呼ばれる神のアイテム。滅びたダルタニアン王朝の末裔である我が国の長い歴史を紐解いても、一つの神物も発見されてはいません。全ては伝説……。


「……それでも」


 そこに可能性が有るのなら……。


◆◆◆


 その晩、セバスから新たな凶報が届きました。本日の王国議会にて、私の婚約者が国王不在の中で決まったとの事です。

 

 王国議会は君主制度の我が国においても、大きな決定権を持ち、その場で決定した事に対して国王をもってしても覆す事は容易には出来ません。


 今議会では国王派と軍務派の二つに分かれた勢力図となっていて、国王不在で決定権を失った国王派の隙をついて、軍務派が強硬的に私の婚約者を決めてしまったとの事でした。


 しかも相手は軍務大臣コワッパーン伯爵の子息で、騎士団でも悪評の高いザコイール卿。真っ平もって御免のお方です。


「……はあ、最悪ですね」

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