第15話 巨人
「ここは
六十九階ボスの間に入ると、青白く発光する石壁のフロアに、身の丈30メートル近くある大巨人が、大木を持って僕を待ち構えていた。
七十階層の氷雪エリアを五日かけて踏破した僕は六十階層に来ていた。七十階層は八十階層に比べたら時間がかかった。理由はホワイトアウトする猛吹雪エリアが有り、その中では視認しないと使用できない短転移が使えなかったからだ。
膝上まで深く潜る雪原の雪。前進する為に雪の上に空間障壁の足場を作り、その障壁の上を歩くのだが、雪の中にスノーワームがいたりするものだから、迂回ルートを作ったりと意外と手間がかかった。
「デカいな」
巨大ギガントは大きさだけなら、トライヘッドドラゴンよりもデカい。
巨大ギガントが僕の方に緩慢な動きで歩き出した。ドスンという一歩一歩で床が大きく揺れる。こんなバトルクエイクの中では、僕はまともに立って戦闘なんか出来ない。
「空間障壁!」
床の石畳と平行にした不可視の空間障壁を作り足場にする。雪原で使ったアイディアだ。何事も経験は大切だね。
近付いてきた巨大ギガントとの距離は約10メートル。僕は更に上方5メートルの位置に空間障壁の足場を作り、短転移で移動する。それを更に2回繰り返し、高さ15メートルの位置にきた時に、ギガントの持つ大木が襲いかかってきた。
足の動きに比べ、腕の振り下ろしは意外と早い。轟音を上げて大木が接近する。
「短転移ッ!」
15メートルの不可視の足場から上方5メートルに転移する。まだ巨大ギガントの頭には届かない。
僕の足元を大木が唸りを上げて通過していく。
「空間固定ッ! 更に短転移ッ!」
大木の先端を空間固定する。振り下ろしていた筈の大木が突然停止する。巨大ギガントの腕には、大木の突然停止によるエネルギーのバックフロウで、多少なりとも痺れが発生している筈だ。
その隙に更に5メートル上方に転移し、更に短転移で5メートル上方に上がる。
僕の姿を、下方を見つめ探しているギガント。
「ここだよ、うすのろッ!」
僕は短転移の繰り返しで巨大ギガントの目の前まで飛んできていた。僕を見た巨大ギガントの赤い目が動揺したのか瞳孔が小さくなる。いわゆる目が点になるってやつだね。
「アイテムボックスッ!」
長く伸ばした不可視のアイテムボックスが、ギガントの眉間を貫通し、空間消失現象によって風穴を空けた。
立ちすくむ巨大ギガントはピクリとも動かない。落下を始めた僕は、落下スピードが上がらないうちに、短転移を繰り返し石畳に着地する。
「立ったまま……死んでるんだよね?」
眉間に空いた穴から血を流している巨大ギガントを見上げた。何はともあれ、アイテムボックスに入れば死んでいる、入らなければ生きているって事になる。
「アイテムボックス、巨大ギガントを収納」
新しく作ったアイテムボックスに巨大ギガントは無事に収納できた。しかし、この巨大ギガントはどうしようか? 食べるには人間に似ているので抵抗がありすぎる。素材としても微妙な感じだよね。
そんな事を考えながら八十八階ヘ繋がる扉を開けた。
「この階層は迷宮型か」
青白く発光する石壁に囲まれた通路が奥へと続いている。ただ、通路の幅と高さがやたらとある。ボスが巨大ギガントだったのだから、この階層は巨人や巨大な魔物の階層って事になりそうだ。
やはりと言おうか、六十階層に出てきたモンスターは、20メートル級ギガント、10メートル級ギガント、トロルなどの巨人族、牛頭ミノタウロスや一つ目巨人のサイクロプスなどもいた。オークジャイアントやゴブリンジャイアントなどは、もはやオークでもゴブリンでもなかった。
六十階層を3日で踏破し、五十階層ヘと進んた。
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