第14話

「このトンネルを抜けると地元に着くぞ」


帰省のために車を走らせて数時間、最後のトンネルを走行中に藍にそう答える

数分後には町が見えてくるか、なんて考えているとトンネルを抜ける


「なんだこれ……」


本来なら山下に町が見えるはずが鬱蒼とした木々の中に出てしまった

初めての道ならともかく数年走ってないとはいえ慣れた道だ

間違えるはずがない

車を停め周りを確認してから外に出る


「藍、異常事態だ警戒してくれ」


だが俺が言うより早く藍は警戒しながら探知をしていたようだ

藍の様子を見るにこの先に反応があるらしい

木刀を手に木々の間を進む


「まったく、枝や蜘蛛の巣が邪魔だな」


木刀で払いながら進んでいくと池のほとりで集団が戦闘をしている

子蜘蛛(それでも大きい)に囲まれた黒ずくめの女性とそれを迎え撃ってる魚集団と髭の生えた女性


「貴女達はなんなんですかっ!」


「姫様、残穢衆かと」


「うるさいわねぇ、さっさと死になさい!毒糸」


黒ずくめの女性は手から糸を放ち攻撃して髭の女性はそれを水で防ぐ


最初は拮抗していたが蜘蛛の数が想像以上に多く魚側は徐々に劣勢となっていく

一部髭の女性お付きのお爺さんが奮闘しているが数の暴力はすごい

身を隠し様子を伺っていたが話を聞く限り蜘蛛側が一方的に攻撃しているようだ

理由も汚れを増やすため?とかなんとか

そんな時急に緊急クエストのアナウンスが


残穢衆 絡新婦の討伐もしくは撃退

報酬 ???


まさかの初めての緊急クエストだ

ここは髭の女性に加勢するかと駆け出す


「助太刀致!!」


叫びながら子蜘蛛を蹴散らし黒ずくめの女性の背へと迫り一太刀


ガキンッ


背中から生えた蜘蛛の脚によって防がれる


「あんた誰よ?」


鋭い目付きをしながら振り返る女、思ったよりも美人だ背中から蜘蛛の脚が生えてなければ


「お前を殺す者だよ絡新婦っ!!」


「なんで私の名前を…!?」


困惑してる間に技を出す


「骨喰ッ!」


背中の脚が防御に回るがその一本を切り飛ばす


「誰か分かりませんが助かります、水縛」


髭の女性が水の鎖を作り出し動きを止める


「こんな鎖如きで…」


背中の脚を動かし鎖を引き千切ろうとしているがおそい

無防備な胴体に一閃


両断したが、しかしまだ生きている


「ぐっ……邪魔さえなければこんな任務簡単だったのに……呪爆蜘蛛」


オエっと口から紫色の蜘蛛を吐き出し握り潰す絡新婦

危険を感じ距離を取ると同時に声が掛かる


「危ない!!水祓いの陣」


周りに結界が張られると同時に絡新婦は爆発し紫色の煙を出すが地面が光り煙は消える


「助太刀感謝致します」


ぺこりと頭を下げる髭の女性

よくよく見てみると美人だ髭はあるが


「姫様ご無事で何よりでございます」


子蜘蛛を倒していたお爺さんが戻ってくる

顔はカエルだった


「此方の御仁の助けがあり無事ですわ」


「いえいえ、こちらとしても絡新婦討伐が目的でしたから」


9割以上クエスト報酬が目的だった為罪悪感が少しあるが表に出さずに会話する


「お礼に我が家へ御招待したいのですが、浄化や結界の確認がありますので後日でもよろしいですか?」


周りの死体の処理なんかもあるだろうし

俺としても帰省の途中だったので了承する


「これを持っていれば迎えに行けますから」


と綺麗な石を貰った後別れて車へと向かう


車がある場所まで戻ると馴染みがある地元の風景に戻ってる

振り返っても鬱蒼とした木々は目に入らない


不思議な事もあるなぁと車に乗り込み実家へと急ぐ

色々と確認したい事も出来たしな




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