第7話 幕間

楽堂雫ごくどうしずく


先祖が土地の乱れを封じる為に置いていた道祖神の1つが破壊された事に気が付いた祖父に呼ばれ緊急で話し合いを行なっている


「よもや、封じが壊されるとは…。」


楽堂家当主であり祖父である楽堂稙通ごくどうたねみちが言葉を漏らす


あれは霊力がある人間でなければ見る事すら叶わないはずなのに


「お祖父様、私が確認をして参ります」


「雫よ、危険と分かっておるのか?」


「家の誰かが向かわねば恥になりますので」


「うーむ、教会に頼むだけではいかんか、仕方ない頼む」


「承知しました」

そう言った後私は部屋を出る


「権藤、退魔会に連絡して何人か送ってもらって」


「お嬢様よろしいので?」


「仕方ないわ、後で探られても困るもの」


結界に不備はなかったはずだけど、この所この街周辺の土地の乱れが急に治ってると報告も上がってる

おかしな事が起こってるのは確かね


そこから権藤の運転でM沢トンネルまで向かうと会員が数名待っていた


「遅かったじゃねぇか」

軽薄そうな声で男性が喋りかけてきた


「吉良……あなたが来たのね」


吉良祐哉きらゆうや

私と同い年の吉良家次期当主で私のライバル

東北の穢れ祓いに行ってると聞いてたけれど……



「楽堂家のお嬢様がお困りらしいからなぁ」


「東北の祓いの帰りでなくて?」


「爺どもが頑張ってたおかげで俺は疲れてないからな」


「そう……まぁ向かいましょう」

私に権藤、退魔会からは吉良と他2人の5人で道祖神まで向かう事にした


「それにしても結界がないのに変化が無いわね」


「ここは狂った古い神がいるんだよな?」


「えぇ、実際に見たと言う話は聞かないけどそう伝えられてるわ」

古い山神が土地の乱れで狂い人が入り込めない穢れ地となったのを先祖が結界で現世と分けていた


「それにしてはおかしくないか?」


そんな話をしながら歩いていると砕けた道祖神が見えてきた


「これは……霊力によって壊されてるわね、吉良あなた感知はしてるでしょ?範囲内に誰かいないの?」


「あぁ範囲内に霊力をもった奴はいねぇ、だとするなら残穢衆じゃないだろうな、それに残穢衆の仕業ならこの土地がもっとおかしくなってるはずだろ?」


残穢衆 

日本各地に穢れを振り撒く集団

私の父や母も残穢衆との戦いで命を落とした


「残穢衆でないとするなら…」


「吉田のおっさんのアレかもな……」


「今回は土地の乱れが治った衝撃で壊れたと言うのかしら?」


「ない話じゃねぇだろ穢れは祓えても乱れは直せねぇ」


「そうよね……そろそろ進みましょう」


そこからはみんな口数も少なく吉良も真面目な顔をして進む

歩いていても変わったことは何も無い

それに何故か霊の気配も感じない


「ッ!?」


「おいおいこりゃぁ……」


「神の気配ね…しかも新しい」


「だが穢れは感じねぇ」


「神が正常になり乱れが直ったのかしら」

ん?木陰に光るものが見える


「これって神物なんじゃないの?」


「なりかけってところか、だとすると降りたのはここか取り敢えず持って帰るぞ」


「そうしましょう、権藤!」


「お嬢様こちらを」

風呂敷を渡してきたので受け取り半神物の花を包む


「一度帰って報告したほうがいいかもな」


「退魔会へは貴方が報告して下さる?」


そんな話をしながら私達はトンネルを後にした




楽堂家は戻り祖父に報告をする

「お祖父様M沢トンネルは正常化されていました」

それに……と半神物の花2本を吉良と私で1本ずつ持ち帰っていたのでそれを見せる


「これが咲いておりました」


「なんと、もしや神が……?」


「えぇそうでないかと思っております」


「ふむ……その花は雫が食べなさい」


「よろしいので?」

見付けた者の特権じゃよ言ってくれた


神物は食べれば怪我や病気が治り物によっては若返ったり寿命が伸びたりもする

今回の場合は完全な神物ではないためそこまでの効果は無いだろうが

それでも大幅に霊力が増える事だろう

自分で調査してよかったと喜んでいる楽堂雫


しかし変人のおっさんの聖水で育ったことは知らない

いや、知らないほうがいいだろう

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る