第6話 旧M沢トンネル

新M沢トンネルまで着いたがここから旧M沢トンネルは脇道を登らなければいけない

しかしその道にはガードレールや灯りなんかも付いてない

仕方なく愛車にはここでお留守番してもらおう


「待っててくれな、ツイン」

そう愛車に呼びかけて目的地へと向かう


虫の声だけが聞こえる真っ暗な山道は灯りがなければ足元さえも覚束ない

アイテムボックスに懐中電灯を入れていて良かったとナイス俺と自画自賛をする


ある程度登った辺りで木刀を取り出し懐中電灯を消して素振りを始める

「ふんっふんっ」


なんとなく暗闇で刀を振るう自分がかっこいいんじゃないかと思い付いただけで意味はない


「剣道の振り方だとあまり実戦に使えないんじゃないか?」

閃いたとばかりに木刀を振り回し始める


ドガンッ


「しまった……剣舞に集中して何か壊しちまった……」


急いで懐中電灯を取り出し光を当ててみると

苔生した石の置物の様な物が無惨に崩れていた

器物破損させてしまったからか冷や汗が止まらないが壊れてしまったものは仕方ない

気にせずトンネルまで向かう事を再開しよう


「ここが旧M沢トンネルか……なるほどこれは"いる"な……。」

カッコつけてみただけである


肩に木刀を乗せトンネルの中頃に見えるゲートまで歩く


ゲートに触れると比較的明るい森の中へと変わった

前回のゴブリンと違い敵はすぐには現れない

少し探索してみるかと歩みを進めると人の鳴き声が聞こえて来た


「もしかして誰かいるのか!?」

口に出し足を早めると木の陰で泣いている人が見えた


「大丈夫か!?」

近寄ろうとした所で気付いてしまった泣いてる人の顔がある

そう、無数に

1.5mほどの大きさに泣いてる人の顔が付いてる蜘蛛だった

「キモい……」

やるしかない、先手必勝とばかりに木刀を振り下ろすと予想以上の悲鳴を上げる蜘蛛


ぎゃぁぁぁ


「お前等が泣くのかよ……。」

悲鳴をあげるのは背中についてる人の顔達だ


お返しとばかりに蜘蛛は口から何かを飛ばしてきた


「おっと、あぶねぇ」

当たった草が溶けている

多分毒とか酸とかなんだろう

当たっちゃまずいな、そう思いながらも蜘蛛に木刀を振り下ろす


悲鳴を上げるが蜘蛛の動きは変わらず俊敏だ


ビリッ

蜘蛛の爪に当たり安物のジャンパーが破れた


「こいつッ」怒りで木刀を握る手に力が入る

そこから何度か殴っていくと悲鳴を上げる顔が減ってきた

これは顔の数だけ命の残量か?


「こちとら生身で命は一つしかないんだよ、お前とは戦いの心構えが違う!!」


もう泣いてる顔は無い

「これで終わりだっ!!」

無意識に霊力を木刀に伸ばしての一撃で蜘蛛は光と消えた


足元に転がる魔石とまさかの黒いジャケット

あまりにも出来過ぎなドロップだがありがたい

拾い上げ鑑定をしてみると


嘆き蜘蛛の魔石

5000円の買取可能



嘆き蜘蛛のジャケット


嘆き蜘蛛が出す糸で作られたジャケット

安物の刃物は通さない防刃性があるが着ている者に悲しみの感情を与える



魔石は売ってジャケットを羽織る

「別に悲しくならんのだが?鑑定が間違う事もあるって事かよ…」

ただの防刃性にすぐれたジャケットは当たりだろう

見た目もかっこいいので普段使いにする事を決めた


それから周りにあった卵?を木刀で殴って壊していくとアナウンスがあり帰還する


「これで3万はありがたいよなぁ、いい服も貰えたし」


江浦幸助

レベル5

肉体15

精神21

霊力2


2レベルも上がってるじゃんと喜びながらも

どうやら霊力はレベルアップでは上がらない事に気が付いた


「帰るかっとその前にお花摘みを……」

趣味の紅茶を飲み過ぎたからかサイクルが早い

趣味と言っても品種等は分かってない

ただ紅茶を飲むのがカッコいいから飲むだけで


周りをキョロキョロと見渡しながら少し歩きここに決めたと

立ち小便をするおっさん

「あぁ〜スッキリした、さて行きますか」


愛車まで戻るかと歩き続けている途中

ふと立ち止まり振り返る

自分が先程まで小便をしてた場所に白い服を着た巨大な老婆が立っていた


驚いて二度見すると何もいない

勘違いか…今日は疲れてるんだな

今までずっと動かしていた霊力を回すのをやめた


それから少しする歩くと声が聞こえる

どうやら数人が言い合ってるみたいだ

こんな時間に山に登るなんて心霊スポット巡りのヤンキーか裏のお仕事しかない

関わったら面倒だよなぁ

「よし隠れよう」

汚れるのも気にせず草むらに隠れる

声が近付いてくるので見付からないよう見てみると

暗くてよく分からないが多分スーツを着た女性と男性数人だった


「ちっ、裏の…極道の方かよ隠れててよかった」

内心はビクビクしながらも強がりをみせる


鼓動の音とか聞こえないよね?そんな事を思いながら集団が通り過ぎるのを待つ


「よし、通り過ぎて声も聞こえないな帰ろう!!」

急ぎ足で愛車まで戻りエンジンを入れ家まで帰る


やけにアクセルが重いのは気のせいだろう

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