粟野直秀の殺し方
「
青い瞳がオレの顔を映す。その言葉でオレは今居酒屋に居ることを思い出した。
「
そう問うと、丸メガネをかけた女性……溝口カルナさんは「それは難しい質問だな」と鼻で笑った。
「まぁ、しいて言うなら死神に好かれるのを待つしかないだろうな。それ以外に彼を殺す方法などないと断言できよう」
「……やっぱそうっすよね」
粟野直秀を殺す方法は幾度も模索されてきたと聴く。目の前に居る溝口サンもその実験の参加者だ。結果は本人も言うように”どのような手段を用いても粟野直秀を殺すことはできない”。それこそ、居るかもわからない神に殺されるしか。
「文斗少年は彼に死んでほしいのか?」
「まさか! ただ……そうっすね、羨ましいと思うと同時に、己の知る人間が死んでいくのを見るのは酷だろうなって」
「君が彼を置いて逝ってしまうことは確定しているからねぇ。……まぁ、そんなことどうだっていいじゃあないか」
「そんなことって……」
薄情だな。と思いながら彼女を見ると、溝口サンはコップの縁を指でなぞりながら微笑んだ。
「彼が死なないことで救われている命があることを、忘れてはいけないと思うんだ」
「……」
オレたちの間に静寂が訪れる。聴こえるのは他の客の喧騒だけ。溝口サンは「らしくないことを言った」と顔を赤らめ頭を乱雑に掻いた。
「久しぶりに会ったんだ、いっぱい飲んで明日苦しもう」
「そっすね」
その後は普段と同じように飲んで、気づけばやってきた粟野サンに介抱されてその日を終えた。
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