最終回 見守ってるらしいよ、知らんけど。

あれから月日がたったらしいよ。


新学期に入り……5月すぎかな?

だからタケは今、高二か。


クリスマス以来見てないけど、どうしてるかな?

5ヶ月ほどたってるけども、まさかもう振られてたりしないだろうね?


アタシは見られる心配なんてしてないから、堂々と学校に入っていく。


二年の教室にいるかな?

今昼休みのはずだけど……


「懐かしい顔だな」


…え?今アタシが声かけられた?

振り向くとそこには……


「え、美波くん!?」


タケの友人で絶世の美男子、美波神邏くんがそこに立っていた。


視線は明らかにアタシを捕らえてる。…嘘。


「美波くん……アタシを憶えてるの?」

「ついこの前までは忘れてた。けど、最近思い出した。何故かは知らないけど」


ジッと美波くんを見ると、うわ!すごい魔力を感じる!?


ここまで力を得たから、ギャルゲーアイの影響が消えて、記憶が戻ったのか……


高い魔力の持ち主には記憶操作なんて効かないからね。

もしや最近天界で話題の朱雀とは……


「ところで、今日はどうした?朝馬に会いに来たのか?」


はっとする。そうだよ。アタシはタケを見に来たんだった。


「朝馬のクラス、案内するか?」

「お願い!」


どうやら美波くんとはクラス違うみたいなんだけど、百合子と同じなんだとか。


二年五組。どうやらここらしいけど?


あ!


「どう建人くん。今日のお弁当」

「う、上手い!また腕あげたんじゃないの百合子ちゃん!」


百合子と……タケだ。

フフあんま変わってないね。冴えないチビのまま。


──って、一年そこらじゃ変わるわけないか。


とりあえず、別れてる様子はなくて良かった。それだけが少し心配だったしね。


というか、晶子と佐藤も一緒にご飯食べてるじゃんか。仲違いはしないですんだんだ。


「まったく、相も変わらずお熱い二人だこと」


晶子が呆れ気味に呟く。


「で、でも二人の仲の良さ……憧れます」


と、佐藤。


二人とも元気そうだ。タケが百合子と付き合ったときとかはへこんでたかもだけど、5ヶ月だもんね。


「実際、落ち込んではいたらしい。二人とも」


と、美波くんが説明してくれたよ。


「距離離そうとしたら、三浦さんが許さなかったんだと。友達でしょ?ってぐいぐいきたらしい」


人によってはそれで嫌気さすかもしれないけど、百合子の人の良さに絆されたかな?


「ふっ切れた……とまではいってないかもしれないがな」


内面じゃ何考えてるかわからんもんね。略奪とか考えてたりして。


「そこの男もな」


美波くんの視線の先には……あ、昼田!百合子のこと好きだったデカブツ!


あーうらめしそうにタケを見てるよ。彼はあきらめてないんだね。


ん?夜野もいるじゃん。こいつも似たような表情だ。佐藤はフリーだけど、うまくいってないみたいだねえ。


「ラブラブカップルの建人くんと百合子ちゃん!お熱いでゲスねえ」


安野くんだ。いやあそうそうたるメンバーだね。このクラス。

美波くん以外同じなんだ。


「とまあ、元気そうだよ。朝馬は」


そうだね。ありがとう美波くん。


「あれ?美波!どうしたよ!」


あ、タケがこっちに気づいた。

タケはゆっくり近寄ってくる。

美波くんの前にいるアタシにまったく気づかずに通りすぎ……


「何か用事か美波。最近付き合い悪いぞ~クラス別れた事でおれがどうでもよくなったのかよ~」

「いや、まさか。ちょっと最近忙しくてな」


美波くんは視線をアタシに向ける。でも、タケは気づかない。当然だよ。忘れてるし、見えないんだから。


タケは美波くんの視線に気づく。


「美波?どこ見てんだ?」


美波くんの視線にあわせて、タケはアタシを見る。


「──?」


当然見えてない。でも、いいのさ。久々にタケの冴えない顔、拝めたしね。


「なあ朝馬、天使って……いると思うか?」

「へ?」


美波くん?何を……


「うーんどうかねえ?あんま現実味ねえけど……」


タケは少し考える素振り。


「でもなんか、いる気がする」

「そうか。何か確証でも?」

「うん。よくよく考えたらさ、おれに恋人できた事、未だに現実味ないんだ」

「現実だぞ」

「そうなんだけどさ、どうしても、一人で頑張った結果とは思えないんだ。それこそ恋のキューピット的な天使が、おれには付いてたんじゃないかなってさ」


…憶えてるわけではない。アタシの存在に、気づいたわけでもない。


直感とも少し違う。ただ、現実味ない今の幸せが現実味のない力によるものと、なんとなく思っただけなんだろう。自分自身半信半疑なんだろうね。


美波くんは少し笑みをこぼし言う。


「もし、その天使のおかげだとして、その天使に何か、伝えたいこと……あるか?」

「うーんもしその天使のおかげだとしたら~」


タケは笑顔で答える。


「今めっちゃ楽しいし、幸せだぜ!サンキューな!って感じかな?」


……

フフ。まさか何もかも忘れてるタケからお礼言われるとはね……





それからまた美波くんと二人になり、


「ありがとね美波くん」

「いや、大したことはしてない」

「ううん。なんか久々に話せた気分だったよ」


…来てよかった。


「たまには顔出したらいい。そっちからは触れるんだろ?朝馬が変なことしたら尻蹴りに来なよ」

「へへへ。そうしよっかな」


すると、美波くんを呼ぶ女の子の声がする。


「神邏くん!なにしてるんですか?」


おっと、お呼びみたいだよ。


「行きなよ美波くん。じゃ、またね」

「…ああ」


アタシは空へと飛び立つ。

あ、美波くんに今フリーか聞けばよかったよ。


…最後にタケの顔見てくか。


外からタケのクラスの窓付近へ飛んでいくアタシ。


楽しく談笑してるよ。この幸せが続くこと願ってるよ。


アタシは満足すると、天高く上昇していく。


タケの奴、最初は貧乳は萎えるだの巨乳がいいだの言ってたよな。それが今じゃ百合子にデレデレ。


人の趣味嗜好、性癖、好み。それらを否定はしないよ。それもまた人の個性だし。まあタケには文句つけた事あるけどさ。


ただ、それだけで相手を決めないでほしい。そう思うよ。

一番必要なのは相性だし。


ギャルゲーアイによって、タケの攻略候補は壁だらけだった。でもそれは壁じゃないと攻略できないとかそういう事じゃない。


純粋にタケと相性のいい人物としてピックアップされた子に、貧乳が多かっただけの事。


相性がよかったからこそ、今も仲良しでいるわけだし。


要は中身。互いの性格の相性の結果なんだ。


だから……二人の未来は明るいと思うよ。浮気とかしなきゃな!

気をつけろよタケ!


こうして見守ってるからな!浮気でもしようものなら蹴りに行くからな!


そして、アタシは去っていったらしいよ。知らんけど。


─────────


「建人くんどうした?急に外見つめて」

「あ、いや。なんでもねえ。美波に変なこと聞かれたからかな?」

「?」

「天使が、見守ってる気がしてさ……」



──終わり。



あとがきあるらしいよ。

小話程度だけどね。よろしければどうぞらしいよ。

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