第56話運命の決断、せまるらしいよ知らんけど

 タケは攻略候補の三人と共に帰宅の道中らしいよ。


 いつものように仲良くぺちゃくちゃ喋ってる。


 ……


 これだと告白しづらいじゃん。

 誰にする気か知らないけど。


 今日くらいその告白相手とだけ帰ればよかったのに。


「ん?どうかしたのタケ。黙ってるけど」


 晶子にツッコまれた。

 しゃべりもせず、うつむきながら帰宅してるからね。変にも思われるよ。


「どこか……具合でもわるいんですか?」

「え!そうなの!なら薬でも買いに行く!?」


 今度は佐藤と百合子。

 おいおい心配かけるなよ。


 ただ告白迷ってるだけのくせに。


「あのさ!」


 タケは意を決し、大きな声をだした。


「今日!の夜!林道公園に!来てくれないかな!」


 で、デートの誘い!?

 い、言ったよ……他の二人に聞かれてるのも構わずに。


 この場合、三人共デートの誘い、それもクリスマスだ。察するものがあるよね。


 呼ばれた一人は告白されると思い、他二人は……振られるようなものだ。

 告白はしてないし、二人がタケに好意あるという確証はないけどさ。


 タケは……ある、一人の人物の目を見て……言った。


 言われた女子は、ゆっくり頷いた。



 ◇



 夜


 意を決しタケは約束の場所へと。


 林道公園。

 すでに待ち人はそこに立っていた。


「ま、待った?」


 タケの言葉に待ち人は首を振る。


 ドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクンドクン。


 心臓の音が聞こえてくる。

 あまりの緊張に、体が震えてくるタケ。


 ふと、周りを見渡すと……あちこちにカップルの影が。

 否が応でも互いに意識する。


 というか相手もわかってると思う。これからタケが何を言う気なのか。


 寒さのせいか、緊張のせいか……タケは歯をガタガタ震えさせていた。


 そしてぐっと歯を噛み締め、自らの震えを止める。そして、タケは叫ぶ。


「お、おれはこの何ヶ月間で、君と過ごしたり遊んだ日々が楽しかった。そしてふと思った!居心地がいいって」


 相手は黙って聞いている。


「他の二人と過ごした日々も、もちろん楽しかった。でも君とは違った。君の一言一言がおれには心地良かった。照れた。嬉しかった」


 周りもチラチラとこちらを見だす。タケの声は大きめだしね。


「君の優しさに最初にふれた時、とても嬉しかった。今までそんな事なかったし」


 タケの顔が赤い。見られてる事を意識しだしたんだ。でもトーンは変えない。


「それからもずっとおれなんかのために優しくしてくれた……この前も。そしてリレーの時……いろんな人の応援聞こえたけど、はっきりと聞き取れたのは君の応援だけだった。それでわかったんだ。特別なんだ。君が」


 その時に気づいてたのにここまで告白引っ張ったのか。

 やっぱ怖かったから?


「でも勇気、なかったからさ……言えなかった。今まで」


 やっぱそうか……

 まあそうだよね。今までの関係壊すのなんてみんな怖いよ。


「だから、このクリスマスって日に後押ししてもらった。勇気振り絞って、君に言うよ」


 タケは空を見上げて目を閉じて……

 力いっぱい叫んだ!


「好きです!三浦百合子さん!おれと!付き合ってください!!」


 この場にいる全員に、一言一句聞こえる叫び。


 …百合子はゆっくりと



 頷く。



「うん。僕も……健人くんが、好き」


 ピューピュー

 ヒューヒュー!!

 パチパチパチ!!


 あ、やじ馬や他カップル達が祝福の口笛や拍手を盛大に送ってくれてる。


 …良かったなタケ。素敵な彼女が出来たじゃんか。お前にはもったいないほどの。

 すぐ別れるような事になったら許さないぞ。


 百合子と幸せな恋人関係になれよ。

 将来結婚するくらいのな。ていうかここまでお膳立てしたんだ結婚くらいしろよな。


 クリスマスの後押しか……どちらかと言えばタイムリミットの後押しかもね。

 もし時間制限なかったらまだダラダラとみんなと過ごしてたはず。


 タイムリミットがあったおかげなのかもしれない。優柔不断なタケにとってはね。


 ふふ。ニコニコとデレデレしてるよタケ。

 百合子も照れてるし。


「おーいキスとかしねえのか!」


 野次馬に言われた。

 二人はえっ!って顔をする。

 そして二人は見つめ合う……


 ドクンドクンドクンドクン

 心臓の音がまた聞こえる。


 百合子は目を閉じた。そしてタケは顔を真っ赤にして、汗をめっちゃかいてすごい形相……キッショ。

 目を閉じてて正解だよ百合子。


 そして……二人の唇は重なった。


 ヒューヒュー!!

 パチパチパチ!!


 野次馬め……でもま、ファーストキスできたしよしとしてやるか。



 ◇



 二人はその後ファミレスに入りご飯を食べるようだ。ま、高校生のデートだしね。


 これから長いクリスマスデートになるかもね。


「今日帰り、親には遅くなるって言ってあるんだ」


 百合子の大胆発言。タケは鼻を抑え、


「そ、そうなんだ……」


 と、平静を装う。鼻血出しそうになってるんじゃないよ。健全に行けよお前。

 高校生なんだしそこまで遅く連れ出すのはイカン。


 …ま、でもタケはいきなり変な事はしないか。それなりに信用してるんだからな。


 …お役御免かなアタシも。


 いつまでも見てるのも無粋だしね。

 …じゃあなタケ幸せにな。


「待てよ」


 は?タケがアタシを呼び止めた?


「百合子ちゃんはファミレスで待っててくれてる。だから何も言わずに帰ろうとすんなよ……ラズ」



 つづくらしいよ。


 湿っぽいの、好きじゃないんだけどなあ。

 次回はアタシとタケの別れだね。


 最終回は近いよ。次の次かな?

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