第52話 お師匠現わるらしいよ知らんけど

 …あたしは正座させられてるらしいよ。


「「ラズさん。あなたはいつまで人間界にいるつもりなんですか?」」


 お師匠は丁寧な口調をしてるが、かなり頭にきてるとわかる。


 何故なら正座の強要、そしてわりと大きめな声だからだよ。


 ちなみにお師匠は二メートルくらいはある長身。モデルみたいな体型に、きらびやかな白い羽が8本生えてる。

 白く美しい肌がよく見えるほど薄着の、天使っぽい服装。

 天使っぽい服装ってなんだよって話しだけど、なんつーか古代ギリシャ系?みたいな服だよ。知らんけど。


 なんかキラキラしてるし。比喩じゃなくてマジでね。


 同じ天使でも美しさとか、気品だとか、あらゆる点で格の違う方とわからされるらしいよ。


 …でもゆるふわ短めの金髪天パがあんまり似合ってないね。顔も美しいかもだけど、あたしのが多分かわいいしね。…テヘッ


「「ラズさん?聞いてます?」」


 やべ…マジのトーンだ。

 真面目にしないと…


「き、聞いてますよお師匠。で、あの…いつまでいるのかとは?」

「「そのままの意味です」」


 そのままって…

 タケを見張れって言ったのは実はこのお師匠なんだよ?

 それなのにいつまで人間界にいるんだ~はおかしな話らしいよ。知らんけど。


「あの~お師匠が言うから、あたしはタケについてるんですけど」


 正直に聞いてみた。


「「…確かに、言いました。でもあれからどれだけ月日経ちましたか?」」


 ん?

 ……えーっと、確かタケを引き殺したのは4月…だったかな?

 今は体育祭の時期で、11月か。

 ってことは。


「7ヶ月ですね」

「「…7ヶ月ですね…じゃないんですよ!!」」


 う、うわああああああ!!


 お師匠の怒号で、空気が揺れ、衝撃波のようなものが発生。それにより、あたしは10メートルくらい転がって行ったらしいよ。ちょっと!いきなり酷い!


「お師匠なにすんの!」

「「たわけた事、ぬかすからですよ」」

「いや、事実述べただけらしいよ。知らんけど」

「それが問題なんですよ」


 …なに言ってんだこのひと。

 と、疑問をもつあたしに、呆れるようにため息をつく。


「確かに見張れとは言いました。でも、誰が半年以上も見張れと言いましたか!」


 半年以上も見張るな、とも言われてないらしいよ。さすがにそれ言ったら殴られそうだから黙っとくけど。


「いいですか?あなたは見習い天使、言わば修行中の身なのです。ここで道草くってれば、いつまでたっても天使に昇格できませんよ?」

「え?じゃあ帰っていいの?タケは放って」

「「タケ?」」


 名前くらい把握しておいてほしいな。


「その、あたしが力与えた子」

「「ダメに決まってるでしょ。契約したわけでもない人間に、力を持たせたまま放置だなんて」」


 本当になに言ってんのこの人。

 戻ってこい。でも、タケを放っておくのはダメって…

 どないせーっちゅうねん。


 て言うかだいたい力与えたって、天使見えるようにしたのと、ギャルゲーアイ授けただけなのに。

 それを悪用したとしても大したことできないでしょ。


「お師匠、戻ってくるのと、見張りは両立できませんよ?」


 するとお師匠はため息をついて…


「「つまり、力を取り上げて戻ってきなさいって事ですラズさん。タイムリミットですよ」」


 ……え!?


 つづくらしいよ。


 次回は……えっと、お師匠説得する?

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