第51話結果らしいよ知らんけど

 ちゃくちゃくと進むリレー。


 美波くんやら安野くん夜野などの見知ったメンバーも走り終えてる。

 あ、晶子も走ってる。


 一応男女混合だからね。


 そしてついに……その時が近づく。


「つ、次だ」


 タケの前のランナーが走り出した。

 意を決して、走る場所、レーンに入る。


 バトンの受け渡しする地点はどうやらテイク・オーバー・ゾーンとか言うらしい。


 バトンを受けとるまではそこから出ちゃダメなんだよね。


 他の走者もそのゾーンに立つ。

 タケの隣は昼田だ。


「よお」


 軽い挨拶してきた。


「お、おう」

「互いのクラス、差はあまりなさそうじゃねえの」


 確かに。昼田の三組と、タケの一組に差はあまりないね。

 アンカーの走力で結果が決まりそうだ。


 …それだと不利だねえ。


「勝ちはおれのものだな。百合子にいいとこ見させてもらうぜ」

「…いや、そうは……!?」


 え、


 1 百合子ちゃんとおれはもう付き合ってる。


 2 百合子ちゃんには勝ったほうが告白だな。


 3 百合子ちゃんはおれに惚れてるぞ。


 何で選択肢!?

 これは百合子に聞こえないはずだし…


 ……いや、昼田に聞かせることでなにかが起きる証拠なのかな?


「なにかが起こる?」

「うん、そのはず」

「何ってなにが…」


 ぶつぶつあたしとしゃべってるのを見て、昼田は怪訝な表情。

 あたしの声は聞こえてないしね。


「おいてめえ何急に、」


「「昼田!?なにしてんだ!?」」


 あ、走者が来てるじゃん!昼田のクラスだけじゃなく、タケのクラスもだ!


「やべ!?」


 昼田はテイク・オーバー・ゾーン内を遅れて走り出す。タケはちゃっかりすでに走り出していた。そのおかげで、すんなりバトンの受け渡しができた。


 が、


「百合子ちゃん!」

「えっ!?」


 タケは選択肢を言い切らず止めた。

 だが、それに気をとられた昼田は…



 バトンを受け取りそこね、落とした。


「ばっ!何やってんだ昼田!」

「わ、わりい!早く拾え!」


 走者の子が急いで拾いにいく。


 これ、チャンスだ!


 手間取ってる間にいけ!タケ!


「うわあああああ!」


 叫びながら全力疾走。

 だが、アンカー故に距離は長い。


 …そうこうしてるうちに、


「負けるかあ!百合子のことも!リレーもなあ!」


 ヤバい…追い付いてきてる。

 どんどん距離詰められてるよタケ!


「負けねえ…負けられねえ!!」


 タケは走った。死にもの狂いで…走った。スピードを一切ゆるめず、体力がなくなろうが、全速力をキープしたまま……


「「頑張れ健人くん!!」」


 百合子の声援…


「「が、頑張って朝馬くん!」」


 今度は佐藤!?


「「負けるなタケ!」」


 晶子の声も…


 おい、聞いたかタケ。

 攻略候補がみんな応援してくれてるよ。

 運でもまぐれでも…なんでもいい。


 勝て。


 勝て!



 決死の激走……すぐ背後に昼田の姿。だがゴールテープまであと少しだ。

 距離が縮む……昼田はもう、タケの肩付近まで近寄ってきてる。


 捕らえられる?いや、逃げ切れ!


「うっ…は、」


 !?昼田が疲れてペースが落ちた!体力が切れ始めてるんだ!


 タケが全速力をキープすれば…


「いっけえ!!」


 タケは、ゴールテープを昼田より先に切った。


 勝った?勝ったんだタケが!


 切った瞬間転がり落ちるタケ。


「はっはっはーっはーっはーっはーっ!!」


 もう立つ気力もない。そんな様子だった。


【優勝!一組!!】


 アナウンスが響き渡る。

 同じクラスの奴らが喜んでタケを囲んでる。


「すげえゼ朝馬!」「ホント!」

「見直した!」「やったな!」


 大声援だ。……今回は間違いなくヒーローだよタケ。



 ♢


 リレーが終わり、少したった後。


「負けた…おれの負けだ」


 昼田はまだ座り込んでるタケに言った。

 座り込んでるとはいえグラウンドからは離れてるけどね。


「いや、おまえが、バトン落とさなきゃ…負けてたし」

「ミスしたおれが悪い。それも実力だしな…負けは負けだ」


 素直に…悔しそうに言った。


 しかし、選択肢を言いきらず、時間切れが逆に昼田のミスを誘うとはね。

 つまり時間切れが正解だったわけだ。完全にたまたまだろうけど。


 優勝したことで皆の好感度は上がったはず。つまり昼田に対してのではなかったんだよ。


 うん。終わりよければすべてよし。このままいけばいずれ…


「「ラズさん」」


 …え?あたしの名前…

 誰かよんだ?


「「ラズさん」」


 あたしは上空を見る。するとそこには…8本の羽を生やした天使の姿…ってえ!?


「お、お師匠…」


 つづくらしいよ。


 次回は…お師匠…

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