第50話 リレー勝負らしいよ。知らんけど

「勝算はあるの?」

「あるわけねえだろ…」


 アタシの質問に情けなく返したタケ。強がりも言えんのか。

 …まあヒロインでもないアタシに強がっても仕方ないか。


「さほど足が速いってわけじゃねえらしいけど、最近特訓してるオレと、部活で鍛えてる昼田じゃ」


 昼田はバスケ部らしいよ。

 …補欠らしいけど。


 でも常日頃走ってるだろうしね。

 とはいえバスケ勝負でも、体力がものをいう長距離走ならともかく、リレーだしわからないよ。


 クラスメイトが余裕もってぶち抜いてくれたら、差がついて簡単に勝てるかもしれないし。


 ……って、相手は昼田だけではないけどね。

 でも別に勝った負けたでどうなる事でもないっしょ。

 百合子が勝ったほうに惚れるなんて事はないわけだし。


 勝算聞いたのはアタシだけど。



 ♢



 そして運命の時間がやってきたらしいよ。

 クラス対抗リレーだ。


 しかし攻略ヒロイン全員別クラスだから、表だって応援してくれないよね。

 目立つ応援なんてしたら仲を疑われるもんね。付き合ってるわけでもないし…


「「キャ~ッ東くん!頑張って~!」」


 ん?女子のキンキンした声の応援が鳴り響く。

 どうやら人気者の男子が黄色い声援受けてるみたいだよ。


 …フムフム確かにイケメンだわ。背も高いし、少し長めの青髪がなびいて美しいね。


 彼はクラスとか関係なく応援されてるね。でもこっちはアイドル的な応援だしな…さっきの条件には当てはまらないよ。


 ん?東?……どっかで聞いたような?ま、いっか。


 で、リレーは始まったらしいよ。


 ……って、あの東って子タケと同じクラスじゃんか。てか速い!一位のままバトン渡した!


 これなら差が出てタケの…負担も…少なく……


 ま、そうは問屋が許さないか。

 あっという間に差は詰められてる。それでもまだタケのクラスが一位だけど。


 自分の番がちゃくちゃくと近づいてくる。その影響でタケは震えだす。


 あのさあ、たかが体育祭だよ?緊張しても仕方ないじゃんか。


「緊張してるのか?」


 あ、友人の美波くんが話しかけてきた。


「こ、こんな重要な役まかせられたの……は、初めてだからよ」

「まあ、わからなくもないが…」

「これじゃバトンすら受け取れねえかも…」


 んーダメだなこりゃ。

 足もガタガタじゃん。


「…恥の上塗りでもしてみるか?」

「へ?」

「ギャルゲーアイ…だったか?今ここでやってみたらどうだ」

「いや、恥ずかしいわ!」

「だろうな。でも、それで案外吹っ切れるかもよ。恥ずかしさで緊張和らいだりするかも」

「……」


 どうなんだろ?でも別の感情に支配されたほうが落ち着いたりするかも…


「どうせこのままじゃ失敗間違いねえし……なるようになれ!」


 タケはいつものように、右手で左目を隠し、スライドして右目に移動する動作をする。

 右目からも手が離れたタイミングで、


「ギャルゲーアイ!」


 バカデカイ声で発声!


 ちなみに何度も言うけどこの動作はギャルゲーアイ始動に何の関係もないんだけどね。

 プププ。


 応援団の声もあって、全ての者に気づかれたわけではない。

 でも、一部の近くにいる生徒達の視線は釘付けになってた。


 なんだこいつ…バカか?

 なになに?みたいな冷たい視線。

 特に何も言われない、無言の視線だけが突き刺さる。


 タケの顔は真っ赤だ。

 …でも震えは止まった。


「なるようになれだ!こうなりゃ何も怖くねえぜ!」


 お、元気出たじゃんか!結果オーライ。


「サンキュー美波。やるだけやるぜ」

「…ああ。頑張れ」


 優しく微笑んだ美波くん。

 …素敵。



 つづくらしいよ。


 …さて次回決着か。それと…ん?何かの気配?



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る