第49話  本番の日らしいよ知らんけど

リレーに必要なこと。そりゃ足の速さは重大だ。

で、もう一つ重要な事と言えば、バトンの受け渡しだよね。


数週間後、

時は…来たれり!


体育祭当日。まあタケにしては、やれるだけの事はやった。

付け焼き刃だし、速くはなってないだろうけど、基礎的な事は叩き込んだ。

走り方とか、体力とかね。


少なくとも、何もしてなかった場合と比べれば雲泥の差だと思う。

……多分。


クラス対抗で代表のメンバーでのリレー勝負。

代表がいるとはいえ、人数多いし全員が全員陸上部とかの運動部出身ってわけじゃないのは救いだね。


タケと一緒に走る相手の走者が、運動部出身じゃなければ差をつけられる事もなく、恥をかきずらいからね。


でもそうなるとは限らないよね。

タケの走る順番が何番目とかで決まるだろう。


出だしの最初と最後のアンカーはないだろうけど……


「は!?おれがアンカー!?何で!?」


タケはまさか、アンカーを任される事になってたもよう。


「陸上部だろ?そんくらい頼むよ。他の運動部の奴らは他の競技もでなきゃいけないし、疲れたくないんだよ」


アンカーは他の走者よりも走る距離が長い。でもタケに任せるってリレーは捨てるってこと?それとも速いと勘違いされてるのかな。


「で、でも……」

「大丈夫だって。負けても責めないからさ。気楽にやろうぜ?所詮体育祭なんだし」


クラス委員の子がそう言って肩をポンとたたく。まあみんながみんな同じ気持ちならいいけどね。


下手に負けず嫌いな奴いたらボロクソに貶されるかもしれないし。


タケは青ざめてる。心臓バクバクなんだろうね。

気楽にとは言われたけど、最後を任されるなんて責任重大とでも思ってるのかも。


突如ポンと背中を押される。

それに驚いたタケは、


「ひゃん!?」


……変な奇声をあげた。女の子かよ。


「すごいじゃんアンカーなんて」


百合子だ。簡単に言ってくれるよこの子。まあ百合子はこういうの慣れてそうだもんね。


「おれなんかがアンカーとか…ふ、不安で仕方ないんだ」


日陰者と言うには言葉悪いけど、こういう表舞台に上がる事のないタケにとってはお遊びみたいなこのイベントすら、荷が重く感じてびびっちゃうんだね。

少し震えてるし。


ヘタレと言われても仕方ないけど…百合子はどう、


「大丈夫。僕との練習信じてよ」


彼女はニコリと笑顔で返す。

…うーんかわいい。こういう人をバカにしないとこも人気の秘訣なのかもね。


「わ、わかった。やれるだけ…やってみるよ」

「うん。ガンバ」


手を握ってくる百合子。いやあ積極的~。いやこういうことは自然とできる子なだけか。

最初から親切だったもんね。


「おい百合子、何敵応援してんだよ」


図体のデカイ男…昼田が話に割り込んできた。


「別クラスの応援じゃなくて、同じクラスを応援しろっつーの」

「わかってるってうるさいな。じゃ、後でね」


手をひらひら降って去る百合子。

そうだよね、クラス対抗なんだし別クラスだからほんとは敵なんだ。

手伝う義理もないのに…優しい奴だね。


と言っても勝ち負けでなにかあるわけでもないから、そこまでガチになることもないんだけどね。


「アンカーなのか」


昼田が聞いてきた。


「い、一応…」

「おれもだ。良い勝負しようぜ」


恋のライバル対決か…

うーん、さすがに勝てないでしょ。こいつ体育会系に見えるし…

百合子に良いとこ見せたいだろうけどね、



つづくらしいよ。


次回はリレー勝負だね。どうなるか…

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