第48話  体育祭らしいよ。知らんけど

「憂鬱だ」


運動が苦手なタケの発言。

陸上部に少し入ってたけど、向いてなくてすぐ辞めたんだよねこいつ。


まあ男女分かれてるし、百合子目当てなら入った意味ないしね。


「陸上部に少し属してたから、リレー選手にされちまったし……アンカーじゃないだけましだけど」


因果応報だよ。邪な理由で陸上部に入るから。


「なら、練習する?一緒に」

「え、うわああ!!」


背後からいきなり声かけてきた百合子にホラー映画みたいな悲鳴あげて飛び上がるタケ。

おいおい。


「あはは!驚きすぎだってば!」

「い、いきなり後ろから声かけられたら仕方ないじゃねえか!」

「ごめんごめん。だからさ、どう?練習」


少し考えるタケ。

なんで考えるんだ?仲深めるチャンスだぞ。


「練習と言っても、あんま時間もないし…その間に速くなんてなれないでしょ?」

「でもしないよりはずっといいよ?せめて、リレーの距離くらいは全力で走れるくらいの体力はつけないと」


たしかに。速くはなれなくても、体力はつくかも。


「じゃ、じゃあ頼むよ」

「よし、任された!」


百合子が手を出してきたので、手汗ふいてからぎこちなくタケは握手した。

…なぜか二人とも顔が赤い。自分たちでしといてなんでやねん。





それからというもの、朝早く来ての練習、昼休み、放課後に練習…と、わりと付きっきりで練習に付き合ってくれる百合子。


陸上部いいのか?


「はあはあっ……あ、あのさ、付き合ってくれるのはいいんだけど、」


走り尽くして、息もキレキレのタケはぜえぜえしながら話しかける。


「つ、付き合う!?え!?」


おいおい何勘違いしてんだこの子。そういう意図の発言だなんてほとんどの人は思わんぞ。

ニュアンスも違うし。頭のなかピンクか?


てかこれ、意識しすぎって事?


「はあはあ…え?だ、だからさ、オレに付きっきりで陸上部いいの?って…事」


逆にタケは百合子の勘違いに気づいてないよ。おいおいラブコメ主人公かお前は、らしくないぞ。


「え、あ、ああ!うん!僕エンジョイ勢だし、そもそもちょこちょこサボってるからね!」


答えになるかそれ?

やる気ないからいいってこと?

逆にそんな不真面目な奴に走り教えてもらっても、伸びない気がするけど……


でもま、重要なのは好感度だからよし!


「それなら…いいのかはわからんけど、ありがたく指導受けるよ。

でもさ、監督とかに怒られるようなら部活優先でいいからさ」

「ハハハ、心配なんてしなくてもいいのに」


それで部活クビとかになられても困るし、そりゃ気にするでしょ。

エンジョイ勢だから気にしないのかもしれないけどさ。


「そうは言うけど、結構成績よくて、監督とかに期待されてるとか聞いたことあるぞ?」


そうなの?エンジョイ勢なのにそれだと、期待してる連中からはもっと練習しろって思われてるかもね。逆に特別扱いされてたりして。


「やる気そんなないし、あんまり期待されても困るんだよね。でもさ!そんな僕に教わるのってどう?気分いい?」


ニコニコの笑顔で聞いてきた。


「ま、まあね。陸上部エースに稽古つけてもらえるなんてなかなかできねえだろうし」


急に照れて顔そらしてるよタケ。

なんつーか、百合子の純粋な笑顔に弱いのかもね。



つづくらしいよ。


つぎは…練習の成果見せれるか見物だね。

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