28話  お願いだから試合形式で戦わせて! (土下座)

 ――リブラside。


「時は来た!」


 自分の顔をトイプードルだと思ってる哀れなおっさんが部下とたなおじ連れて僕らの前に現れた。

 どうやら死の覚悟ができたようだ。


「誰が死の覚悟だワン! 死ぬのはお前らだワン!」


 だから心読むなっつーの。


「で、そのメンバーで僕らと勝負する感じなのかな? いいよ受けてたつよ」


 僕達は臨戦態勢をとる。

 ちなみに双子ちゃんに乙女座陣営も共にだ。


 なぜか? 双子ちゃんの片割れはあの後僕になついてくれたのと、乙女座陣営はヴァルが、


『もうどっちが上になるかとかアホらしくなったからいいよ。シグマ倒す者同士、適度に力合わせよう……』


 と、言ってくれていた。

 この前のアホな処刑のくだりで呆れてくれたらしい。


 つまり、奴らにとっては大ピンチなわけだ。


 それにあのアホな隊長は前に倒してる。強くなったようにも見えないし……


 ただ後ろに控えてる部下はただ者ではない雰囲気だ。


 部下なのに前に倒したどこの隊長よりも強そう。


「で、相談があるんだけどいいワン?」


 いきなり上目遣いで、目をキラキラさせて言ってきた。

 キモ……

 本当のトイプードルならかわいいところだけど、トイプードルだと思い込んでるおっさんだからな~


 ま、一応聞くだけ聞くか。


「なに?」

「チーム戦で、一対一で戦わせてほしいワン」

「チーム戦?」

「五人の代表決め、五試合。先に三勝した方が勝ちだワン」


 はあ? 勝ちってなんだよ。

 スポーツの試合じゃないんだぞ? 


「勝ったらどうなるんだ」

「勝ったらというより、負けた方は全員自殺して全滅してほしいワン」


 はあ? バカなのかこいつは。

 なんで負けたら自殺せねばならんのだ。


 すると、トイプードル(自称)隊長は土下座しだす。


「試合形式で試合させて! お願い!」

 

 ええ……プライドとかないのこの人……

 ていうかこいつ、三勝ならできるとふんでるのか?

 部下は厄介そうだが二人。仮にその二人が二勝出来るとしてもあと一勝する必要がある。

 他は前のとぼけた女の子と、田中のおじさん。そしてアホ隊長だぞ。


 ……負ける気はしないが、かといって条件を飲んでやる義理がない。負けたら自殺とか嫌だしね。


「嫌だ」

「そこをなんとか!」

「ダメ」

「たなおじがなんでもするから!」


「ええ!?」


 うろたえる田中のおじさん。

 ていうかお前がなんでもするんじゃないのかよ。


「たなおじの事を煮ても焼いても売ってもいいから!」

「なんて事言うのさトイプードル隊長! てか売るって! 異世界物に奴隷はつきものだけどやだ~!」


 そもそも田中のおじさん売ってどうするんだ。


「たなおじなんて売っても二束三文でしょ」


 と、ピアスは嘆く。


「まあでも二束三文でもお金にはなるか」


 うんうんと頷くピアス。

 おいおい人権侵害だぞやめておけ。


「嫌あ!」


 泣きそうな田中のおじさん。

 そもそも条件飲む気ないから心配ないのに。


「わかった! じゃあこいつらの全財産もつける!」

「おいクソ隊長!」


 部下達の金を賞金にするな。

 部下もキレてるよ。てかクソ呼ばわりされてるし。本当に慕われてないんだね。


「お願いだからあ! 試合形式の勝負してよお!」


 うざいなこの隊長……


「嫌だ」

「お願い~!」

「ダメ」


 平行線。


 え? 話進まない?

 知りませんねえ。


「……なら、我らが秘密基地の場所教える」

「え?」

「シグマにとって、重要拠点……破壊でもされたら組織はヤバい」


 ……それ、組織に対する裏切りになるんじゃないの?


 まあどうでもいいか。隊長がどうなろうが知ったことではない。


「あと、イケメンを用……」

「よしやろう! すぐやろう!」


 おいピアス! 勝手に……


 でも重要拠点が事実なら気になるし……それに話進まないもんね。仕方ないな。速攻で終わらせよう。



 ――続く。


「よしよし試合形式なら……」


「次回 試合開始~! 負けないぜ」




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る