25話  たなおじの髪の毛、生え……

「田中のおじさん、これどうぞ」


 僕はあるものを田中のおじさん、に手渡す。

 おじさんはすっとんきょうな表情で受け取ると……


「え、なにこれ? 毛玉」

「違う。カツラ」


 ふっさふさのカツラです。

 選択肢選んでくれた方々、ありがとうございます!


 田中のおじさんは毛の肌触りなどを確かめつつ、その感触が気持ちいいのかずっと触ってる。


「なんでカツラ?」

「その頭じゃ恥ずかしいでしょ? 隠せるよ」


 そう言うと素直に被る。

 ……ちなみにカツラはロン毛スタイルだ。


 艶やかなロン毛スタイルに田中のおじさんは変貌。


 薄毛に悩んでた田中のおじさんにとっては、感じた事のない感覚だろう。


 髪をたなびかせたり、ポーズとったりしだす。

 おいおい気に入ってる様子ですよ。読者の皆さんありがとうございます。


「ふっ、これでおいらもモテモテかあ~?」


 おい、ナルシストはもう要らないぞ。


「あ、後で返すからちょっとカツラとりますね」


 と、僕はカツラを回収。すると田中のおじさんは憤慨する。


「なにすんのさ!」

「返すって後で。まだ処刑終わってないし、カツラ燃えたりしたらまずいでしょ?」

「まだやんの!?」


「たりめーだろが!」


 ピアスの怒声が鳴り響く。

 大地が震えるかのようだよ。


「処刑なんてあと20話くらいやらないと気が済まないくらいだよ」


 さすがにやめろ。後一話かそこらで我慢するんだ。


「次なる処刑は熱湯風呂~」


 用意された浴槽はグツグツと煮たっている。


「熱湯すぎない!? これカップ麺とか食べるために沸騰したお湯みたいじゃんか!」

「じゃあ沸騰風呂~」

「いやいや死んじゃうって!」


 とか言いながらいつの間にか海パン履いて準備万端じゃないか。


「オラオラトイちょうと一緒に入りやがれ」

「え?」


 トイプードル隊長(自称)は巻き込まれる形で沸騰風呂の前に立たされる。


「ちょ、待てよ! オイラは関係ないだろ!」

「どうせ敵だろ」


 確かに。一緒に処刑したほうが都合いい。


「それにどっちもおいらが一人称で紛らわしいんだよ」

「ま、待て! オイラはオイラだ! たなおじはおいらだろ」

「うるせえ!」


 前に立たされる田中のおじさんとトイちょう。


「お、押すな、絶対に押すなよ!」

「フリはやめろ! マジで押すなって意味だからな!」


 二人でコントしてるがピアスは容赦なく……


「おら落ちろ」


 蹴り飛ばす。


「「あぎゃぎゃぎゃぎゃ!」」


 ゆでダコのように真っ赤になって飛び出す二人。


「熱い!? そりゃ大変だ!」


 ピアスは上から雪だまを降らし、二人へと直撃。


「「さっむ!!」」

「じゃあまた沸騰風呂に!」

「「あっつ~!!」」

「じゃあ雪」

「「さ、」」

「沸騰」

「「あ、」」

「雪」

「「さ、」」


 ハイペース過ぎて一文字しかしゃべるひまがない。

 死んでしまうぞ。その辺に……


「「なかなか楽しそうなコントしてるね! 混ぜてよ!」」


 ん? この状況で新手?


 声の先に立つのは二人の……子供?

 小学生か中学生くらいの、幼さを見せるかわいらしい男の子と女の子の二人だった。


 ……異世界ファンタジーで小学生とか言うなよなと自分でつっこみます。


「「とう!」」


 二人はヒーローポーズの後、ジャンプして田中のおじさんを踏みつけて着地。


「ギャフン」


 わ、そんな言葉だす人初めて見たよ。ギャフンと言わせてやるで本当に言ってくれるタイプかもね田中のおじさん。


 そして子供二人はまたもやポーズを決めて……名乗りだす。


「オレと」「わたしは!」

「「双子座ジェミニ!」」


 双子座? つまり二人は双子?


「オレがジェイ」

「わたしはミニ」


 あー名前も分けてるのか。

 ……なぜかお嬢様がキレかかってるんだけどなんで?


「キィー! 双子座は最強のイケメン二人なんですのよ! なんで子供なんですの! なんで片方女なんですの!」


 いや、あの、某有名作品じゃないんですから。そこは仕方ないかと……

 それに続編のアニメだと女性二人でしたよ。


「やーいやっぱ乙女座じゃん最強は」

「キィーこの世界での話ですわよ! 踏んづけますわよ!」


 またいつものピアスとの喧嘩になる……でもこれで処刑お開きかも……


「なんかしらないけどさ」

「わたし達もこのおじさんの処刑に」

「入れてほしいな~なんて」

「思ってるの」


 わ、さすが双子。互いが互いの言う言葉を代わりに話してる。

 いやでも普通無理かこんな芸当……双子座の戦士ゆえかもしれないね。


「君らさ、なんで田中のおじさんの処刑に加わりたいんだい?」


 二人の目線に合わせるようにかがみ、優しく僕は聞いてみた。


「なんかさ、そのおじさん見てると、」

「わ~っ……カッコいい……」

「だから処刑に加わろうと……ってミニ! おまえが話さないと伝わらないだろ!」

「わ、ごめん! でもイケメンさんだったから……」


 コラコラジェイくん。僕のかっこよさに見惚れるのは仕方のないことだ。ミニちゃんを悪く言うものではない。


「なにあんたナルシスト?」


 君も心読めるの? 


 金髪の双子。ミニちゃんはツインテール。ジェイくんは短髪。どちらもあどけなくかわいらしいこの双子……一体なぜ田中のおじさんを?


 まさか過去の知り合いだったり? まさか……まさか、ねえ……



 ――つづく。


「あのさえないおっさんさ~」

「リブラさんか~素敵~」

「だから合わせろって!」


「「次回 謎の双子。目的は明らかになる……かも?」」

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