19話  変態? いえいえケンタウロスです。

「ケンタウロスです」

「「……」」

「ケンタウロスです」


 二度も言わんでもわかってるよ。

 捕らえた上半身裸で下半身馬の変態は自己紹介を繰り返してた。


 僕らはカメラ越しでそれをみてるだけだ。


「まいったな。本当に変態捕まえちゃったよ乙女座狙いだったのに」


 エサがエロ本なら捕まるのはこういう奴でもおかしくはない。

 ピアス、エサが悪かったな。


「で、あんた何者?」

「ケンタウロスです」

「名前はわかったっつーの! シグマの手先かって言ってるの!」


 カメラをガンガン叩くピアス。

 壊れるからやめとけ。


「近くのケンタウロス地区の隊長だ。乙女座にやられて逃げた先にエロ本落ちてたからこうなった」


 バカしかいないのか? シグマには。

 というか乙女座に?


「乙女座! どこにいるんだ今! 答えろ!」


 激しく食いつくピアス。

 するとケンタウロスは不適に笑う。


「グフフ……知りたいならこちらの要求を飲んでもらおうか……ゲヘヘ」


 キモ。笑いかたキモ。よだれたらしてるぞ。イラストで皆さんに見せたらR指定だ。

 イラストなくてよかった。


「こ、このいやらしい笑顔! ヤバイよ!」


 田中のおじさんが震える。

 たしかに、よからぬ要求してくるかもしれないな。


「エロ本に食いつくスケベさ……危険だよ! 絶対エロい要求してくる!」


 ……確かに、女性陣はなんとしても守る必要があるな。

 近寄らせるのも避けなくては……


「うわあオイラがエロい目に合わされる~怖い!」


 田中のおじさんは僕らの背に隠れ出した。

 いやあんたはねえよ!

 というか自分の身の心配してただけかこの人……


「てかさ~捕まってんのはお前なの。状況理解してる?」


 ピアスはおもむろにカメラについてるボタンを押す。

 ――すると、


「アギャギャギャギャ!!」


 ケンタウロスの全身に電気が流れ込み、痺れ出す。

 アニメ的に言うと、骨が見えるコメディ描写みたいに。


「おらおら。乙女座の事話さないと、アタシの電気流しまくって痺れ殺すよ? 死にたくなければ吐け、吐け、吐け~!!」


 おいおい、曲がりなりにも勇者一行が拷問みたいなことするのはいかがなものかと。

 

「オギャギャギャ! は、吐きそう……オエエ」


 違うものは吐くな。


「ほ、誇り高きケンタウロス、こんなことで情報は、吐かない……」


 何……? こいつすごいな。

 これだけ電撃を浴びせられても吐かないつもりか……根性は立派なものだな。


「もう吐きそうもありませんし、始末しませんこと? 見るに耐えませんし」


 エリスお嬢様の辛辣なお言葉。

 ……まあでも苦しませ続けるのもかわいそうになるしな。

 

 それとも人質として、他の地区に連れてくのも……


「ちっ。なら賭けでもしない?」


 ピアスは舌打ちした後、電撃を止め、ケンタウロスに話しかけた。


「か、賭け?」

「そ、勝ったら解放してやるし、エロ本もあげる。その代わり負けたら乙女座の事吐け」

「なるほどな……勝ったらもっと条件欲しいな~」


 ぶりッ子みたいにねだるケンタウロス。……本当にキモいんだが。おっさんのぶりッ子、ご想像してみてください。

 え、嫌? そうですよね。


「条件による。とりあえず勝負だジャンケンで」

「ジャンケン? なんだいそれは」


 ケンタウロスの奴、ジャンケン知らないのか。


「よかろう。まずこれがグー、チョキ、パーだ。互いにこれを出して勝敗を決める。ジャンケンポンの合図の後、同時にこの三つを出し合うのだいいね? 行くよ!」


 ん? 重大な事教えてないぞ。


「「ジャーンケーン」」


「「ポン!」」


 ピアスはチョキ。ケンタウロスはグーだった。

 ……負けた。


 普通はそうなるのだが……


「ふふふ。アタシの勝ちだ。チョキはグーに勝てる手なんだよ」

「なにい!? そうなのか! くっそ~!」


 悔しがるケンタウロス。

 ピアスの奴悪い奴だ。ジャンケンの勝敗ルールは話さなかったから、勝敗をどうとでもねじ曲げるつもりだったのか。


 すごい悪い顔してるぞピアス。

 詐欺師みたいだ。



 ――つづく。



「詐欺師? かわいいかわいいピアスちゃんだよ?」


「次回 乙女座はいずこ。また出てきてないじゃんか!」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る