乙女座ヴァル編

18話  乙女座を拉致しにいこう

 それからというもの、僕らの勢いはとどまる事をしらず、各地の地区を次々と制覇していった。


 え? 巻きに入ったって?

 違う違う。見所なかっただけだ。それに七十以上あるんだ。いちいち全部話していられん。

 まだ僕のビジュアルを褒めてたほうが有意義な時間になるというものだ。


 ただ、千人も勇者候補がやられた割には順調すぎるな。

 それとも今までの地区は弱いほうで、これから強大な地区に入るのかも。


「アタシ思うの。これから戦いは激しさを増すと」


 ピアスが珍しく真面目な顔して言った。

 ……期待はしないがな。


「だから更なる戦力が欲しい」

「その下りは前回やったろ。面接も」


 詳しくは前回のカメレオン地区編を見よう。宣伝だ。


「前回は戦力にもならないのしか来なかった。だからこそ、実力者を直接捕縛!……もといスカウトするべき」


 聞こえたぞ。捕縛って。


「実力者に、心当たりでもあるのか?」

「乙女座」


 ああ。前回現れた蟹座のキャスさんが従ってるとかいう……

 そういえばあの人どこ行ったんだ? あの後スルーして先に僕ら行ってしまったからな。


「――で、本音は?」

「イケメン、ゲットだぜ」


 僕以外の、エリスお嬢様、シズさん、田中のおじさんがピアスの後頭部を叩く。

 

「おいこら! アタシの頭を叩くとか良い度胸してるな! デブと空気とジジイ!」

「デブですって……? 死にたいようですわね……」

「く、空気……」

「ジ、ジジイ!? ひ、酷い。まだそんな歳じゃないのに多分。王様に慰めてもらおう……」


 あ~また喧嘩か……

 一方はキレ、一方はショックを受け、一方は泣いて電話始めたぞ。

 埒があかないから話を戻すか。


「乙女座スカウトするにしても、どこにいるか知ってるのかい?」

「蟹座に発信器つけといた」


 な、なんだと! 抜け目がないというかなんというか……


「アタシの雷魔術で作り上げた発信器、電波が届かないところはないからね! ハッハッハ! 崇めろ愚民共!」

「……調子にのるのはいいけど、発信器、この場所を指してるんだが……」

「え? ここにいるの?」


 そんなわけないだろ。

 

 僕は発信器付近をうろうろして探すと……

 田中のおじさんの目の前にくる。おじさんは王様と話し中だった。


「でさ~王様」

「なんじゃと! 酷いのう……田中のおじさんの事なんだと思ってるんじゃ!」

「はあ……王様に会いたいよ」

「ワシもじゃ♡」


 ……キモ。そもそもお金多めに渡して、僕達の旅に同行させたのは王様の癖に、何を言ってるのやら。

 

 まあそれはさておき、田中のおじさんをチェックする。

 ちなみにキャスさんに服を切り刻まれたので、圧政で苦しんでそうな村人みたいなボロい服着てます。(どんな服だ)

 ご想像にお任せします。


 ……やはり。田中のおじさんの肩付近に発信器みたいなのが付いてた。おそらくキャスさんに感づかれ、田中のおじさんにつけといたのだろう。


 僕は発信器を取り、ピアスに見せた。彼女は唖然としてた。


「え? なになに?」


 事情を知らない田中のおじさんはなぜかニコニコしながら聞いてきた。それがピアスの癇に触ったか、奴はキレ気味に言う。


「うるせえ! 作戦考えたんだよ! 踊れ!」

「――!? あ、アロハオエ~」


 踊るんかい。

 何でハワイ? 何でフラダンス?

 なんかノリノリで踊ってるんですけどこの人。


「田中のおじさんはほっといて第二の作戦だ」


 ほっとくのかよ。いつまでも踊らせておく気か? 後でやめさせるか。


「とりあえず、ネズミ取りの要領だ。人も入る奴用意したよ」


 まんまネズミ取りをでかくしただけの代物だった。エサ取ったら上から被せて捕らえる的な奴。

 あからさますぎてかからんだろ。


「で、エサは?」

「エロ本入れといた」


 そんなんでかかるバカいない……


「ぎゃあああ!!」


 ――いた!?

 誰かが引っ掛かかり罠が発動した!? 今の悲鳴は捕まった奴のものだ。


 おい、どこの間抜けだ?


「ツラ拝んでやる」


 ピアスが内部カメラを作動し、中を確認。

 罠は古くさいのに最新鋭の設備みたいだな。


 中には……


 上半身裸で、下半身が馬の生き物が真顔でカメラの前に写ってた。


「キモ」

「汚らわしいですわ」

「影薄そう」

「キャアア!」


 僕以外の反応でした。

 影薄そうって薄くはないでしょこんな個性的な奴……シズさん……


 ちなみにキャアアと言ったのは田中のおじさんです。

 我がパーティーに女の子らしい悲鳴あげる子なんていないので。



 ――つづく。


「おい! 乙女座出てもいねえじゃねえか! 変な奴拉致してもしょうがないの!」


「次回 変態? いえいえケンタウロスです。なんだ? 某モンスターゲームにいそうな名前だな!」

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