10話  犬?なんの話?

「ヒャハハハハハ!!死ね死ね死ね~!!」


 ……ピアスが高笑いして兵隊の方々を雷撃魔法で蹂躙している。

 どっちが侵略者かわからなくなる。


「オーホーッホッホ!!下民には死を!!」


 エリスお嬢様も似たようなものだった。大剣振り回して暴れ回ってる。

 ……大きな胸部も揺れに揺れてる。あまり見ないようにしないとダメだな……


 ただまあ、見てるだけしかできない僕達に何か言う権利はないか。


「た、助けて~!!」


 悲鳴?視線を動かすと田中のおじさんが、犬のコスプレイヤーなおじさんにもみくちゃにされてる。


 ――よくわからないが助けるか。

 この時、何を思ったか僕は手を前につきだした。


 すると重力波のようなものが僕の手から放出された!それにより敵が勢いよく吹き飛んでいく。田中のおじさんにはなんの影響もなく、敵だけを弾き飛ばした。


 こ、これが土属性魔力の力?あの変な薬飲んだからか、力が解放されたのだろうか……?


「ひぃ~リブラくん、ありが、」

「素晴らしいですわリブラ様!」

「ホントホント~!!」


 半べそかいてた田中のおじさんを弾き飛ばして、エリスお嬢様とピアスが称賛してきた。

 ……いや、おじさんがかわいそうでしょうが。


「「待ちかねたぞガキども!!」」


 いきなり大声を出して僕達の前に何者かが現れた。待ちかねたって自分から来てるじゃないか。そういうのは部屋で待ち構えて言うセリフだろう。

 ……あと、あえて僕は相手の容姿には触れない。なぜかはすぐにわかる。


「……あんたは?」


 僕の質問に、相手は高笑いしながら答える。


「ふ、ここを任されてるえらーい隊長、トイプードル隊長だ!跪け愚民ども!!」


 変な名前。

 

 ……なぜか言われて田中のおじさんは跪く。いや、あんた犬の教育行き届きすぎでしょ。地図くれた人の教えのせいか?


「なんだか知らんけど、ぶっ殺すよ。隊長なら」


 ピアスが電気玉を作り、攻撃を仕掛けようとするが、


「まてい!オイラの容姿が目に入らんか!」

「……?」

「このプリティーなワンちゃんのお顔!暴力ふるったらあれだぞ!動物愛○団体だまってないぞ!」


 ……自分からわざわざ僕らの元に来て、攻撃は許さんってわけのわからんことを言う奴だな。


 要するに、攻撃を封じて僕らを倒したいつもりみたいだね。でも、無駄だ。


「容姿……?なんの話かな」


 僕はとぼけて見せる。隊長はぶちギレた様子で、


「なんのって!トイプードルのお顔だよ!」

「トイプードル?可笑しな事を言いますね。僕の目にはただの人間に見えますよ」

「はぁ!?目、腐ってんのか!」

「腐ってるかどうかは置いといて、僕にはあんたはただの人間にしか見えないから関係なく倒す」


 隊長はうろたえ始める。


「へ、屁理屈いいおって!誰がどう見てもトイプードルだろ!いいのか!動物愛○団体が、」

「この物語はね、僕がいる場面では視点は僕の視点なんだ。つまり、僕があんたが人間と言う以上、あんたは人間として見られるんだよ」

「へ?」

「小説はね、語り手の情報が全てなんだ」


 小説という媒体はそういうものだ。……メタ発言?なんの事でしょうか……?

 

「どうですかお嬢様達、この隊長、どんな容姿ですか?」


 僕が仲間に聞くと、皆は揃って言う。


「「変な人間」」

「だそうです。人間の隊長さん。だから動物愛○団体は動きません。だってあんたは人間だから」


「そんな屁理屈アリ?」


 アリです。


 ――つづく。



「これで心起きなく叩きのめせますね」


「次回 隊長に秘策なし。……ないんかい」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る