6話  やっと……旅立つ

 その後も面倒なことがあったが省略。


 とにかく、嫌々ながらも僕たちは、この国を滅ぼそうと企む悪の組織と立ち向かうハメになってしまった。

 乗り掛かった船だし、行くところもない僕らに大量の資金も提供してくれたわけだし……まあ仕方ない。


 本当に僕が勇者というのなら、やるしかないだろう。運命という奴だ。


 というか、戦いたくないとか、そういう無駄な描写いれてるとテンポも悪くなるから仕方ない。

 どうせ旅にでなきゃダメなようだし。


 ……主人公の僕は、いちいち細かいこと気にせず、話を進めなければならないのだ。悲しいことにな。



 パーティーメンバー発表。


 天秤座、リブラ!主人公。


 おひつじ座、エリス!アルファ王国の姫、エリスお嬢様。


 さそり座、ピアス!問題児な魔法使い。


 うお座、シズ!僕と同じく、別の世界からの人間。


 田中のおじさん。


 計五人のパーティー。

 ……しかし、ヘンテコなパーティーだ。


 僕達五人は最低限の準備をして、冒険の旅へ向かう。


 旅だつ時にもいろいろあった。

 色目使う王様に身震いしたり、王様が田中のおじさんと別れのハグしたり、王様がエリスお嬢様の私物大量に用意させられたり、王様が、ピアスにさらに金要求されたりした。


 王様ばっかですね!


 一方、シズさんはスルーされてた。


「あたし、影薄い!?こ、こうなりゃあたしはツッコミ役を極めないと!」


 ……などとシズさんは息巻いていた。



 ♢



 王国を出た僕達パーティーだったが……


「……とりあえず、どこへ向かうんですか?」

「そうですわね、まず敵の名前はシグマ軍という巨大組織ですわ」


 そういえば敵組織の名前も聞いてなかった。


「12星座以外の星座の力を扱うとても強い組織ですわ。そこの各、幹部達の守る地区を制圧していくのが目的ですわね。まず、ワタクシ達の国、アルファに近いところから向かいましょう」

「各地区の制圧……幹部は何人ほどいるんですか?」

「76人」

「多っ!!」


 な、76!?普通幹部って四天王とか五人集でしょうが!


 1話一人倒しても、後76話いるじゃないですか!


「大丈夫、状況によってはダイジェストで潰しますので」


 だからナチュラルに心読むな。


「それに、こういう場合他の12星座の仲間が現れたり、第3勢力が出てきたりして、敵はごっそり減りますわよ」


 そんな漫画のあるあるみたいな事起きるのか?


 今現在は僕とシズさん、田中のおじさんは戦力外だし……前途多難だ……


「さあ!まずはこいぬ座地区へ殴り込みですわよ!」


 やる気満々に仕切るエリスお嬢様。

 お嬢様は強いし頼りになりそうなのは幸いだ。


「ねえねえぼくぅー?お姉ちゃんと遊ばない~?」


 ……ピアスが年齢一桁に見える、かわいらしい少年をナンパしてる。


 僕は、ピアスを躊躇なく踏みつけた。


「いい加減にしろ、問題児」

「ギャン!」

「ほら、このお姉さん危険だから帰りな」


 僕は少年に優しく言った。

 少年は一目散に逃げていった。


 ……怖かったんだろうな……

 かわいそうに。


 ピアスの奴、よだれ垂らして気色悪い笑み浮かべてたしな……

 一方、僕に踏まれてるピアスは恍惚とした表情のまま……


「あん……リブラ、もっと強く踏んでええ……」


 き、キモ……


「リブラ様、この倒置法クソ女に容赦なくなりましたね。もしかして、あの怪しげな飲み物のせいですかしら?」


 エリスお嬢様の言う通り、腐っても女性のピアスを踏みつけるなど、今までの僕では絶対にやらないことだった。

 ゾッとする……女性に危害加えてなんとも思わないなんて……


「こ、これが悪意……なんて、恐ろしい……極悪すぎる!」

「いや!極悪ではないでしょ!」


 シズさん初ツッコミ!


「気にしすぎだよ!?リブラくん!」

「いや、女性を踏みつける事に何も思わないとか、ゲスの極みでは?」

「相手はピアスみたいなバカだからセーフでしょ!」


「おい、影うす女、殺すぞ」


 ピアスが暴言吐くも、僕に踏まれたままだから何もできない。


「ピアス、黙ってろ」

「は、はいい!リブラさまあ」


 また恍惚としてる……


 ぜ、前途多難すぎるだろ。


 ――つづく。


「リブラにもっともっと……踏まれたいんだよおおおおおおお!!」


「次回。こいぬ座地区侵入。敵ぶっ殺したら踏んでくれると思う!?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る