4話  お金と魔力属性

 勝手にお金目当てで田中のおじさんをお供に選んだピアス。なんて勝手な……

 エリスお嬢様は怒りの形相で、ピアスにつかみかかった。


「おいこら!どういうつもりですの!事と次第によっては!」

「うるせえ!一番大事でしょうが!金が!」


 逆ギレしてるピアス。

 いや、お金が大事なのはわかるが、即決はやりすぎだろ。


 ……それとも何か策でもあるのだろうか?

 ――聞いてみるか。


「ピアスさん、お金で何か強力な武器でも買うのですか?」

「大金あったら!美少年集めて!飲み会とかできるでしょ!ホストクラブもいいね!」


 ヨダレ垂らして欲望を垂れ流すピアス。


 だ、ダメだこの女……信用できない。

 い、言いたくないが仕方ない。僕はピアスに自らの顔を近づけて宣言する。


「イケメンなら僕がいるだろ。美少年を囲う必要はない」

「いや!リブラも好きだけど!あたしは!逆ハーレム作りたいの!集めたいの!美少年!」


 ………………

 いろいろと手遅れか。


「リブラ様、この女旅に連れてきたくないのですけど……」


 エリスお嬢様の意見に激しく同意する。この女は欲望で僕たちパーティーを半壊させそうだ。


「あたし戦力になるよ?この王国でいないよ?あたし以上の魔法使い」

「でもあなた、その大事な資金使いきりそうですもの」

「まあまあ」


 いや、まあまあじゃない。


 でも、田中のおじさんは多分戦力にならないし、背に腹は変えられないような気もする……


「そうじゃ忘れとった。リブラくんにシズさん。魔力属性チェックしとこう」


 と、王様は言った。


「魔力属性チェック?」

「うむ、この世界には魔力それぞれに属性があってな。それぞれ相性とかもあるんじゃ」

「例えば火や水とか?」

「うむ」


 ……主人公らしいといえば、火とか雷辺りだが……


「はい!リブラ殿は土、シズ殿は金じゃ!」


 早っ!?もう属性わかったの!?なにもしてないじゃないか!?


 ていうか土!?金!?とても主役の属性ではないじゃないか!

 ――はっ!もしかして僕は主人公ではないのか!?

 ※主人公です。


「リブラ殿、君には後ひとつ言いたいことがあるんじゃ」


 土属性にショックを受けてる僕に、わりと深刻な顔をしてる王様。

 ……これ、もしかして真面目な話か?


「ワシの事、踏んでみてーん」


 ドドドドドザァーン!


 あまりにもイカれた発言だったため、僕だけでなく、この場の人たちのほとんどがズッコけた。


 何言ってんだこの爺さん……


「お、お祖父様、そ、そんなご趣味がおありで?」


 孫のエリスお嬢様ドン引きしてますよ。


「いやいやちがうんじゃ、リブラ殿はどことなくさが見える。目上のワシどころか、ピアスみたいな奴にもあまり厳しい事言えんようじゃし」

「それはそうですわね。倒置法クソ女にはもう少し厳しくしていいと思いますのに」


「おい殺すぞ」


 暴言吐いたピアスとエリスお嬢様はにらみ合い、一触即発の雰囲気を醸し出す。

 

 しかし甘い……か、でもそれと踏むのになんの関係が?


「目上のワシにそういう事できるくらい、時には悪意がないと敵と戦っていけんと考えたのじゃ。そこで!」


 王様は口でBGM奏でながら、怪しげな瓶を取り出す。


「タマニワルクナール!これを飲めば冷徹になれることがある!らしい!」


 な、なんなんだその得たいのしれない物は……

 しかもらしいって……


「ちなみに、能力覚醒するかもしれない効能もあるから飲んどいたほうがええよ!」


 またかもしれないみたいな、あやふやな効能ですか……


 ……ただ、能力はほしい。

 どうあっても戦わされる運命のようだし、力は得る必要がある。

 ならば……


 意を決し、僕は瓶に入った液体を飲んだ……



 ――つづく。


「果たして、リブラ様は能力を覚醒できるのでしょうか?」


「次回 誰もが虜 リブラ様の美貌にですか?」

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