3話  田中のおじさん

 僕達の旅のお供を選ぶ場に現れたのは……

 普通の、おじさんだった。


 サラリーマン風のスーツを着て、何故かネクタイを頭に巻いている。

 ……僕は元いた世界の記憶はないのだが、何故かこの人も同じ世界出身に思えた。

 

 無精髭を生やし、少しヘラヘラしてる。年代は……50いってるかもしれない。見た目的なイメージだが。


「何なんですの?この冴えないオヤジは」


 当然ご立腹のエリスお嬢様。

 冴えないは言い過ぎだが、今までの人と違い、とても戦えるような人には見えないし、疑問に思うのも当然だろう。


「何って、田中のおじさんじゃけど?」


 かわいく首をかしげる王様。

 いや、かわいくはないけどね……

 イライラしながらエリスお嬢様は貧乏ゆすりする。


「お祖父様、そのオヤジが田中って名前なのはどうでも良いことなんですのよ。そうではなくて、お供の兵の話で……」

「あ、違うぞ」

「え?」

「この人は田中って名前かは確定ではないんじゃ」


 ――?

 どういう意味だろうか?


「この人は数ヶ月前にこの城で保護したのじゃが、田中って名前の名刺を持ってただけなんじゃ。他にも名刺あるからどれが彼のかはわからん。だからとりあえずそう読んでるだけじゃ」

「つまり、何が言いたいんですの?」

「この人は、『田中の名刺をもっていたおじさん』略して田中のおじさん何じゃ」


 ややこしい!と思った瞬間。


 ドン!!


 エリスお嬢様は力強く床を踏みつけた!

 ……床には大きな穴があいた。すごいパワーだ。華奢に見えたが……


「そ、う、じゃ、な、く、て!!田中かそうでないかとかどうでも良くて!なんでこのオヤジがお供候補なのかと言ってるんですのよ!」


 とてもお嬢様とは思えない鬼の形相をしだすエリスお嬢様。

 美人が台無しですよ。


「ひ、ひいいいい!王様!この人怖い!」

「田中のおじさん!そうじゃろそうじゃろ!同士よ!」


 ……王様と田中のおじさんが震えて、顔を寄せ合って抱き合ってる。……おじいさんとおじさんのこういうシーンはBL好きなお姉様方に受けるのだろうか?


 すると、今まで黙ってた問題児のピアスがうんうん頷き、


「言い分もわかるわ。パツキン成金お嬢様」

「誰が成金ですって!姫様よ姫様!」

「ん?でも王様の子供も王子様や姫様でしょ?そのさらに子供も王子様や姫様なの?」

「え?そ、そうなのでは?」

「本当~?別の呼び名あるんじゃないの?」

「う~ん」


 ……今その話関係あるか?話それてますけど。孫も王子様や姫様と呼ぶのかとかはおいといて。


「そ、そうですわよ!そんなことより!なぜこのオヤジがお供候補なのか教えてもらえますかしら!」

「い、いやその……国の戦力これ以上減らしたくなくて……田中のおじさんで勘弁してちょ。みたいな~」


 動作が見えないほどの速さで、エリスお嬢様はなにかを王様に投擲。


 ……投げたのはナイフだった。

 王様の肌のほんの薄皮だけ裂け、わずかに血が流れた。


「ひぇーっ!!」

「こちとら命かけて戦いに行くと行ってるのに!」

「で、でも!国の防御も大事でしょ!?」


 ……確かに王様の言い分も一理ある。王たるもの、民のためにも国を守らないといけないわけだし。


 前に敗れた勇者候補にもお供つけて殺されたというなら、実力者は相当数いなくなってしまっただろうし。

 そうなると、僕達に戦力をこれ以上与えられないというのはわかる。


「リブラ様、どうします?田中は論外としても、他二人も正直……」


 エリスお嬢様は聞いてきた。

 この中から選ぶしかないとなると……


「なにか、アピールポイントとかありますか?」


 僕は三人に聞いた。


「パワーと少しの魔法とお金じゃよ」


 三人ではなく、王様が答えた。

 最後のお金とは一体……


「戦力外の田中のおじさんを選ぶなら、軍資金たんまり増やしても良いぞ」

「じゃあおじさんで!」


 ピアスが僕達に相談もせずに即決した!……何を勝手に……


「よし!もう変更できんからな!」


 言質とったぞ!と言いたそうにする王様。

 こ、これはめられたのでは?

 軍資金たんまりってのも本当かわからない気がしてきた……


 ――つづく。


「あの〇〇〇〇〇〇女ぁ!!何勝手に決めてるんですの!!」


「次回。お金と魔力属性。属性調べるんですか……何属性なんでしょう?」

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