第28話主人の慢性腎不全と腎臓ドナー
主人はあまりにも頻繁に頭痛が起きるので病院に行った。
その時には腎臓の専門医が内科を担当していたのだった。
念のために尿検査をしてみて、クレアニチンの値が高いことがわかった。
大学病院に紹介状を書いてもらってその足で腎臓内科に行った。
「慢性腎炎ですね。お薬を出しましょう。」と言われた。
ハードな部署にいて尿たんぱくが出ることはあったけれど、クレアニチンの値が高いというのは初めてだった。
毎週の土曜日、腎臓内科に通うようになった。
頭痛のために頻繁に飲んでいたロキソニンは腎臓にダメージを与える薬だった。
偏頭痛用の薬であるイミグランに変えてもらい、頭痛の方は少し良くなった。
そのうちに、むくみが出るようになった。
会社でも産業医との面談が頻繁になり、部署替えもあった。
いくら腎臓内科に通っても、数値は良くならない。
むしろ悪化の一途をたどっていた。
精神力は強い主人だったが、体はあまり強くなかったようだ。
私は腎臓病のために塩分を控えた献立を考えるようになった。
しかし、値は一向に良くならない。
主人はIga腎症だった。
Iga腎症とは、原因不明の腎臓病だ。
お酒の飲みすぎや食べすぎのような生活習慣でなる腎臓病とは違い、体質でなる病気だった。
とにかく水分を多めに取り、尿で排泄して腎臓のろ過機能を正常化するようにした。
産業医の先生からは、「もう少し悪くなったら透析だね。」と言われていた。
透析になったら、食事も水分も制限される。
私はネットでIga腎症を調べまくった。
そして腎臓移植をすることで回復することを知ったのだ。
移植は私がドナーになることを選んだ。
生体腎移植では親兄弟のほかに移植が可能なのは配偶者と子供だけだ。
産業医のところの看護師さんが移植に強い病院を紹介してくれた。
こうして東京の大学病院へ転院することになった。
主人は「恵美子ちゃんに負担はかけられない。透析することにするよ。」
と言ったが、私は病気でさんざん迷惑をかけてきた主人の役に立ちたかった。
まずは私の腎臓が主人に適合するかの検査が行われた。
幸いなことに私の腎臓は主人に適合した。
それで手術の日取りを決めて腎移植の準備に入った。
息子は高校生になっており、大学受験の年だった。
私たちが留守にする間に一人暮らしをしてもらうことになる。
レトルト食品などを買いだめして、それに備えた。
それと同時に、障害年金の申請をし始めた。
腎臓病でも慢性腎不全なら障害年金が下りる。
頭痛でいった最初の地元の病院で受診状況等証明書を書いてもらい、紹介状をもらって通っていた大学病院に診断書を書いてもらうようにお願いした。
年金事務所では病歴・就労状況等申立書(発症から現在までの病状の変化や就労状況を伝える書類)の書き方を教えてもらい何度も書き直した。
手術前には身体障碍者の申請も必要だったが、これを忘れていた。
障害年金をもらうことに必死になっていて、手術が終わってから申請するものだと思い込んでいた。
それと同時に、住宅ローンが免除になる8大疾病保険の手続きも行った。
主人がむくみと疲労感で動けない分、私が書類と申請の全てをまかなった。
そして、ドナーになる私には精神科の問診が行われた。
手術に同意する意志を確認するためと精神的に決心が揺らがないかの確認だった。
2つある腎臓が1つになるリスクといつでも断る権利があることなどを精神科の先生に説明された。
だが、私の意志は固かった。
むしろ今まで迷惑をかけた分、やっと主人の役に立てるという喜びに浸っていた。
このハイテンションが私の病気に触ることになるのも知らずに・・。
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