第26話息子の発達障害と教育サービスセンター
病気が寛解した私は、息子に集中できるようになった。
新しいパートも再開した。
これまで新しい環境で適応できたと思っていた息子だったが、学校から呼び出しがあった。
「息子君は課題をやろうとしません。注意すると机ごと廊下に出てしまいます。」
担任の先生に言われた。
私は息子がADD(注意欠陥障害)であることを伝えて、前の学校で個別指導が必要かもしれないと言われたことを話した。
そして、市役所に問い合わせて発達障碍児のための施設はないか尋ねた。
そこで教育サービスセンターを紹介され、息子と一緒に行ってみた。
息子は漢字が苦手で漢字ドリルをやろうとしなかった。
LD(学習障害)かもしれないと思い、知能検査をお願いした。
すると意外なことに国語力は高いという結果が出た。
私は漢字の学習のために、漫画で学べる教材を用意してみたが効果はなかった。
鉛筆の持ち方が安定せず、書くという行為自体が苦手なようだった。
不器用で保育園でも折り紙をくしゃくしゃに丸めてしまうことがあったのだった。
教育サービスセンターの人に、発達障碍児の親の勉強会が開催されると言われ、参加することにした。
発達障害には息子のようなADDのほかにADHD(多動性注意欠陥障害)やLDなどがあったが、勉強会はそういった子供の教育に親がどうかかわるかを学べるものだった。
毎週1回集まって勉強会は開かれた。
同じ発達障碍児の親同士、仲良くなれるかと思ったが来ていた親御さんたちは皆子供の粗暴な行動に手を焼いている人たちで、私の子供のようにおとなしい子の問題には共感してくれなかった。
教室では子供の出来ないことを叱るのではなく、出来たことをほめるという指導が行われた。
具体的には勉強方法について触れられることはあまりなかった。
私は勉強会を最後まで受講したが、あまり参考にはならなかった。
一方で弟夫婦が母を引き取ることにしたと連絡があった。
家を改築して母の部屋を作るという。
弟夫婦は共稼ぎでお嫁さんもフルタイムで働いていた。
私たちが同居を解消したので、気にしていたという。
弟は母に気に入られていたし、日中仕事に出ているのであればうまくいくかもしれない。
しかし、母は子供の教育について放任主義が一番だと思い込んでいた。
それは私と弟がそれでうまくいったからだ。
弟のところの上の子供も発達障碍児であったのでうまくいくか心配だった。
「お母さんは難しい人だよ。お嫁さんは大丈夫なの?」
「お嫁さんから同居してはどうかと打診があったんだ。そうでなきゃ俺からは頼めないよ。」とのことだった。
母は一人で暮らすのはしんどいという愚痴は弟にもしていたみたいだった。
弟の上の子は自閉症だった。2歳になってもおむつが取れず、言葉もほとんど発語しない。
下にも男の子がいたが、こちらの子は全くの健常児だった。
私は母とのいさかいの原因について子育てに対する妨害があったことを告げたが、帰りの遅い二人にとって、保育園の迎えを頼めるだけでもメリットがあるという。
嫌な予感しかしなかったが、私が失敗したことを思えばまだ望みはありそうだ。
私は「どんな時でもお嫁さんの味方になってあげてね。」と伝えることしかできなかった。
後日、案の定子育てについて意見してくることが多かったようだ。
手伝うわけでもないのに、勉強を見ていると妨害をしてくるという。
お嫁さんは母に対して口出しをしないように頼んでいたが、母は「意見を言っちゃいけないの?」と言って取り合わなかったみたいだった。
私の家に弟一家で遊びに来た際にも愚痴を聞いた。
私はそれが原因で、私の病気が再発し同居が出来なかったことを告げた。
しかし、上の息子さんも知能は高かったらしい。
お嫁さんのお母さんが勉強を教えてくれて素直にやるようになったという。
読み書きについては問題がなかったようで、言葉によるコミュニケーションが取れないだけのようだった。
だから、勉強は必死で教えていたという。
母とはもめていたが、無視するようになったようだった。
母は私にお嫁さんの悪口を言うようになった。
弟もお嫁さんの味方だと愚痴っていた。
やはり誰とであっても母はうまくいかないのだった。
私は息子に漫画で学べるシリーズの学習漫画を一通り買ってやった。
何か息子の興味を引くことがあればと言う気持ちだった。
すると、体や血液の仕組みなどには興味があったらしく理科系の漫画は熱心に読むようになった。
そして各臓器がどのような役割をしているのかすっかり理解をした。
学校でも理科の時間は集中できるようになり、いつしか問題行動も取らなくなった。
相変わらず、年下の子供たちと遊んでいたが、そのママ友からは「息子君は乱暴なこともしないし、面倒見てくれるから安心だ。」と言われるようになった。
母と下の子が出来たときのために建てた家だったので部屋数が多く大きな家だ。
母用に用意していた部屋を子供たちの遊び場として提供し、一緒にゲームなど出来るようにした。
すると、同級生たちも集まってくるようになった。
学校で孤立しがちだった息子が友達と仲良く遊べるようになったのだった。
そのころは、私にも新しい趣味が出来た。
それはガーデニングである。
花ガラを摘んで雑草を抜いたきれいになった庭を見るのが楽しみだった。
すっかりきれいになった庭に水をまき、花の写真を撮ったり新しい季節の花の苗を植えたりした。
そしてウサギを飼い始め、ガーデニングとウサギのブログをやるようになった。
あの頃は症状も安定し、薬なしでもよく眠れた。
穏やかで充実した日々が続いていたが、主人に異変が起こることになる。
会社で不正が発覚し、追及をした部下が不正を働いた社員を追い込みすぎて自〇してしまった。
責任を問われた主人は査問委員会にかけられることになった。
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