第24話母との決別と病気の再発
産婦人科に行ってみると、赤ちゃんはダメになっていた。
流産をしてしまったのだった。
流産後の措置をしてもらって医師にこう告げられた。
「流産は母体のせいではありません。赤ちゃんの方に問題があって流れたんですよ。」
「妊娠年齢が高いとその可能性が高くなりがちなんです。」
麻酔から覚めた私はただ医師の言葉を聞いていた。
子宮内から掻き出したことで、私は妊娠しづらい体質になったみたいだった。
その後は二度と妊娠することはなくなった。
診断と措置の後、家に戻ってもまた母の攻撃が始まった。
私は脳内が興奮し錯乱状態になった。
母は謝っていたが、決して許すことは出来なくなった。
こうして、母に対する憎悪の気持ちが強くなり、見ることもしゃべることもしなくなった。
後に主人が言うには「お義母さんは、恵美子ちゃんのことがうらやましくて仕方なかったみたいだよ。」とのことだった。
私と母がもめている時、主人に私のことを相談していたみたいだった。
そして、母の聞き手になっていた主人は冷静に話をしたそうだ。
とにかく、母を否定しないようにして刺激しなかったそうだ。
そうしているうちに、主人に好意を持ったらしい。
自分の相手が主人だったらと言うようなことも言っていたそうだ。
そして最後には「恵美子とは一緒には暮らせない。」と宣言した。
私の方も、絶対無理だと思っていた。
その頃になると新居は予定通り完成し、私たちは逃げるように引っ越した。
引っ越し当日も口をきかなかった。
ものすごく恐怖感に襲われて、それどころではなかったのだ。
一人で荷解きをしている時に、病気が襲ってきた。
それはA社のフラッシュバックだった。
そして妄想が止まなくなり、片付けが一向に進まなくなった。
考えが抜き取られるような頭が引っ張られる感じになって、また薬に頼ることになった。
母に対する憎しみだけでなく、母との同居を勧めた主人に対しても怒りがこみ上げてきた。
そして妄想と相まって主人と口論をするようになった。
薬が効いて、病気が治まるまでの間隔も前より長くなったようだった。
冷静に対処していた主人もついに耐えられなくなり、こう告げた。
「俺と一緒にやっていく気持ちがあるのか?」
「今の私に考えさせないで。」朦朧として私が答えた。
そしてついに離婚届を取ってくるように言われたのであった。
言われた通り離婚届を取りに行って、帰宅した。
私は会社に行っている主人にメールで自分の今の心境を伝えることにした。
「あなたはお義母さんの世話をした私を見捨てるんですね。この家はあなたに譲って私が出てゆきます。こんな体調では子育ても出来ないと思いますから親権はあなたに譲ります。私が出した頭金の分だけ返してもらえれば、それで構いません。婚約指輪も返します。」
すると、主人から電話がかかってきた。
「こんなこと言うなんてずるいよ。俺はいつだって恵美子ちゃんの味方だったのに・・。」
その時私は幻想の中にいた。
もう誰とも一緒にいられない。
私はA社の役員の方に連絡して、雇用してもらおうと思っていたのだ。
A社の当時の役員の方は、私と会うことを了承してくれた。
そして、主人にもA社に行くことになったと告げた。
主人は止めたが、私は聞かなかった。
そうして面談の日、役員の方に「主人に離婚を告げられて、私も働いて食べて行かなくてはならなくなりました。」と言った。
「あれ(私が退職した日)から何年だ?ずいぶんと経ったね。」
「今はどうしているの?」
「長年専業主婦をやってきましたが、仕事は続けていました。パートですけれど。」
「ところで前田さんは元気ですか?」
「前田か・・。そんな奴もいたな。」
一週間後、再び電話がかかってきた。
「離婚はなしになりました。ご迷惑をかけました。」
「そうか。よかったな。ところで前田とも話してみたんだけど、『高田さんですか?そんな人もいましたね。今更何なんですか?』ということなんだよ。」
「そうですか。わかりました。もういいです。」
しかし、その日を境に再び無言電話がかかるようになった。
そして、新居にも彼が現れることになったのだった。
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