第12話結婚準備につけられて・・

婚約間近の私の家に一本の電話が鳴った。

母が出た。

「永山さんですか?お世話になりましたよ。」

「九州へ転勤なさるんですか。そうですか。」

「いいえ。恵美子はいきません。もうそういう話はいいですから。」

「あなたも大阪へ転勤なさるんですか。ご希望で。おめでとうございます。」

「えぇ。恵美子はいますよ。」

私はA社の人からの電話だとわかっていたが、出なかった。

もう関わり合いになりたくなかったからだ。

自分の部屋へと引き払った。

「もう2階に上がっちゃいました・・。」

「もう、その話はいいですから。それじゃ。」

母は電話を切って、ため息をついた。

しばらくして、永山さんの送別会が行われたそうだ。

私にもお呼びがかかっていたらしい。

送別会の終わった夜、自宅に一台の車が止まった。

「どうしてこんな気持ちになるんだ。俺が振ったんだぞ。」

2階の窓から見ると松川さんだった。

カーテンが動いたことで、松川さんが玄関近くに走ってきた。

私は、それを気にせず眠りについた。

松川さんもまた、私に執着することとなった。


私が工藤さんと一緒にいるとき、背後に背の高い2人組がついて回っていた。

私は工藤さんと婚約指輪を見に行っていた。

指輪を選んで店から出たとき、また2人組はついてきた。

「やっぱり俺のカンは当たったな。やっぱり俺じゃなかったな。」

「いい男じゃないか。もう追い掛け回すのはやめよう。」

「そんなこと言わないでよ。まだまだ素性を調べないと。」

「まだやるのか?もういいだろう。」

そんな声が聴こえてきたが、私は自分の事とは思わなかった。


次に式場選びだ。

私は母校のチャペルを選んだ。

そこで衣装合わせを行うことにした。

その入り口に2人組は隠れてみていた。

私は必ず家に帰るので家で見張っていれば容易に後をつけることが出来たようだ。

土日のたびに結婚準備へ行くので、そのあとをつけられていたようだった。

私がドレスに着替えると、2人組は写真を撮っていた。

ちらっとそちら側を見ると、引っ込んで隠れた。

「このドレスは、ここのチャペルのイメージに合わせて作られた特注品なんですよ。」

「モデル仕様なので背の高い方しか着れないんです。」

「旦那様もお背が高いのでとてもお似合いになりますよ。」

工藤さんの方も試着をしていた。

「お二人ともスタイルが良くていいですね。」と係の人が言った。

「くそ、どうやっても(ティアラをとめてる)ピンが写っちまう。」

特注品のドレスはジャケットになっていて、脱ぐとシンプルなドレスになった。

「このドレス、いくらくらいだと思います?お似合いになるので特別価格でご提供します。」と支配人の方が言った。

後はお色直しのドレスだ。

工藤さんが「あれがいいんじゃない?似合うと思うな。」と言ってローズピンクのドレスを指さした。

「私はこっちがいいけどな。」と淡いブルーのドレスを指した。

「これは地味じゃないか?」と工藤さんが言ったのでまずはローズピンクのドレスを着てみた。

工藤さんはとてもうれしそうだった。

続いて淡いブルーのドレスを着た。

すると、工藤さんが迷い始めた。「どっちも似合うな・・。」

私は工藤さんが勧めた方のドレスに決めた。

人生で初めて人が選んだドレスを着ることになった。

着替えるたびに入口の方でフラッシュがたかれていた。

私はただの見学者だと思っていた。


「なぁ。ドレスは2着とも着ることにすればいいんじゃない?」

と工藤さんが言った。

「あのウェディングドレス、2wayで着ることが出来るの。だからお色直しは一着でいい。」

「それにティアラはやめて、花にする。その方がずっと安いし、2つに割れるからドレスに合わせて髪形を変えられていいでしょ。2度目は髪を下ろしてベールの代わりにするの。」

「それいいね。」と工藤さんが言った。

「俺たちが見てないドレスがまだあるんだ。俺、本番にもいくぞ。」

「高田さんの一世一代の晴れ舞台だ。ぶち壊しするなよ。」

「そこは精神力で我慢する。」

「はぁ。心配だ。俺も行く。」

後ろで声がしていたが、私は気にしていなかった。

そして結婚式当日にも二人は現れることになる。


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