第11話母の妨害、そしてストーカーの出現
「高田さんのお相手はわかりませんでした」という大野さんの言葉に対して
「それは当たり前だよ。だってA社の人じゃないもの。」と私が答えた。
「そうだったんですよね。私も結婚して会社を辞めたので噂にしか聞いてないですけど。」
A社は社内結婚が多い会社だった。大野さんも社内結婚だった。
「ところで私、今A社のすぐ近くで働いているんだ。」と伝えた。
「本当は嫌だったんだけど、派遣先だから仕方ないよね・・。」
「そうだったんですね。」それで話は終わった。
それからしばらくして、一緒に仕事をしている派遣先の木田さんが電話を受けた。
「はい。いますよ。代わりましょうか?」
「・・・何の話ですか?どういうことです?」
相手が誰かはわからなかったが、どうやら私に関することのようだった。
「僕の出身ですか?京都です。」
「画期的なことってなんですか?あぁそれならしました。しました。」
「プログラムを組んでくれたんです。」
「わかりました。そちらに行けばいいんですね。」
私は過去の履歴を調べるのにいつも書庫から文書箱を取り寄せていたのをプログラムによって居ながらにして調べられるようにしてあげていた。
そのファイルをもって木田さんは昼休みに出かけて行った。
そして戻ってきた後私につぶやいた。
「ほんまのことなん?記憶喪失・・。」どうやら前田さんが会社に連絡してきて私とのことを話したらしかった。
その後、私が仕事で省庁へ行くときにタクシーに乗り込もうとしたら「高田さん!」と呼び止められた。
前田さんだった。
でも私は急いでいたのとタクシーに乗りかけていたのでそのまま乗り込んでいった。
省庁についた後、仕事をして帰る前に会社に電話した。
「直帰しますがいいですか?」
「わかりました。お先に失礼します。」
会社の携帯を使って会話をし家に帰った。
翌日、木田さんに「高田さん、携帯持ってるんなら電話番号を教えてくれへん?」と言われた。
「持ってたの、会社で借りた携帯だよ。」と答えると「そうなんや。」と言った。
前田さんが私の携帯番号を知りたがっているとは思いもしなかった。
工藤さんとは真剣交際が続いていた。
しかし、工藤さんが母子家庭なのを知った母が難色を示してきた。
「もっと他にいい人がいるわよ。」とお見合いの話を持ってきたのだ。
私は病気のことを承知の上で付き合ってくれる工藤さんがどうしてもあきらめきれなかった。
「私の病気の過去を知ってもそれでもいいって言ってくれてるんだよ。」
「あんた、病気してたこと話したの?」
「いつ再発するかわからないんだから当然でしょ。」
「そういうことは秘密にしなきゃ。もう再発なんてしないでしょ。」
「とにかくお見合いなんてしないから。」と言ってその話は終わりになった。
後から聞いた話によると、母は工藤さんに別れてくれるように頼んでいたらしかった。
工藤さんは頑として受け入れなかったが、母の方は「恵美子にはもっとふさわしい人がいる」などと失礼なことを言っていたようだ。
電話の拒否などはしなかったものの、別れることを望んでいたようだった。
しかし、父が認めてくれて家族ぐるみの付き合いとなり、結婚話が進展していったのだった。
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