第9話病気の回復と再発・・再び記憶が消えた
会社を辞めた後の私は少しずつ回復していった。
医師が処方してくれたリスパダールがてきめんに効いたのと会社の同僚との交流があったからだった。
その同僚は永山さんという。
病気の原因は会社にあると思っていた私は仕事の話をできる人を探して電話をかけまくった。
最初は松川さんにかけたが断られた。前田さんには病気との関係もあり掛けることが出来なかった。
そこで新天地にいた同期の永山さんに電話を掛けた。
「いいよ。会おうよ。」と言ってくれたのだ。
こうして何度か会い、話を聞いてもらった。
今回の件と無関係な永山さんはじっくり話を聞いてくれ、私は少しずつ癒されていった。
しかし、何度目かの待ち合わせの時、永山さんの自宅に行って男女の仲になってしまった。
私はまだその時が早いと思っていたが、話を聞いてくれた恩もあり受け入れてしまった。
しかし、それを境に永山さんには連絡をしなくなった。
彼のことは単純に同僚としか思っていなかったし、そのようなことをすることで病気が再燃するのが怖かったのだ。
前田さんや松川さんより背が低く、私の好みでもなかった永山さんのことを恋愛対象としては見れなかった。
母は、私が落ち着いてきたのを永山さんのおかげだと思っていたので好意的だった。
それで永山さんから電話が来たとき、何のためらいもなく取り次いだのだった。
私は「やっと来た。・・生理。」と言った。
永山さんは動揺して答えられなかった。
すると電話はスピーカーフォンになっていたようで前田さんが割り込んできた。
「おまえ、こんな気持ちの悪い男と寝たのかよ。そんな軽い女だったのかよ!」
「あなたなんか知らない。あなたなんか関係ない!二度と電話してこないで!!さよなら」と言って電話を切った。
すると頭の中でプチっと音がして電話をしていたことを忘れてしまった。
母親が1階から「何をけんかしているの?」と様子をうかがいに来た。
「けんかなんかしていないけど?」
「電話で怒っていたじゃない。」
「電話なんかしてないけど?」
「手に電話持っているじゃない。何を言ってるの?」
私の手には受話器が握られていた。
「ほんとだ。なんで受話器なんか持っているんだろう・・。」
「あんた・・またおかしくなっちゃったの?」
受話器を受け取った母は、階下へと降りて行った。
ほどなくしてまた電話が鳴った。
母は「もうかけてこないでください。会社の人と話すと恵美子の調子が狂うみたいなので」と言って断っていた。
薬のおかげで治ったかに見えた病気は、一時的に治まっただけだったようだ。
また元の解離性障害に戻ってしまったようだった。
しかし、あの陽性期のような妄想や幻聴は治まっていた。
軽いパートをしたりして地域の女性たちとの交流があり、穏やかに時は過ぎて行った。
そして、傷病手当をもらうのを終わりにして本格的に就職活動をし始めた。
決まった仕事は保険の営業だった。そしてそのオフィスは前田さんたちがいる会社の隣のビルだった。
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