第3話会社での出来事。脅されて記憶が消えた
私の名前は高田恵美子。今では大企業に成長したある商社で働いている。
当時は急成長中であることもあり、とても仕事が忙しく、忙殺されていた。
そんな中でも期待されていたこともあり、仕事に邁進していた。
私は仕事に厳しく、特に男性にはあたりが強かった。
それで、後輩の男性とぶつかることが多く恨みを買ってしまった。
後輩の名前は大竹君という。
彼は、上司に私の態度を告げ口するとともに社内でもプレーボーイで有名な前田武志という人物に私に近づかせて誘惑し、振るように持ち掛けていた。
私の姿を見に来た前田さんは、品定めをするように見て「OK。」と言ったのだ。
前田さんは私の同期の早苗にも近づいていて、飲みに行った後ホテル街に連れ込もうとしたそうで、「恵美子のことを聞いていたから気を付けてね。」と言われた。
そんな話も仕事のことでいっぱいな私はすぐに忘れてしまった。
そんなある日、「仕事のことで相談がある」と前田さんに言われて誘いに乗ってしまった。
しかし帰りの車の中でけんかになってしまった。
「仕事の相談じゃなかったの?」
「仕事のことなどどうでもいい。俺と付き合わないか?」
「早苗にも粉かけていたらしいじゃない。私、そういう男性は苦手なの。手当たり次第に付き合おうとするなんて節操がないのね。」
「俺に説教しようというのか。」
前田さんは怒って私を脅してきた。
「おまえなんて、いやな女、昔の悪い仲間を集めてやってやってもいいんだぞ。」
私は怖くなって、「車から降ろして。」と言った。
「ここら辺は危ないから、降ろせない。」
「私がどうなろうと知ったことではないでしょう?嫌な女だと思っているんだし。」
「ハチャメチャな女だな。自宅まで送ってやるから。」と言ったが、自宅を知られるのが怖かったので「最寄り駅で降ろして。電車で帰る。」と言った。
そして「女の子の事、なんでそんなに敵視してるのか知らないけど、自分が傷つくだけだよ。自分を大事にしなよ。」というと急に大人しくなった。
「俺だって最初からこんなだったわけじゃない。」
「好きな子がいたんだけど、いじめで死んじまったんだ。」
「お前がその子に似てるんだよ。」と言った。
私は「どんなに数多くの女の子と付き合ったって、その気持ちのままじゃ続かないわよ。」と言い、駅に着いたので降りようとした。
その瞬間、彼は私の手をつかもうとしたので「触らないで!」と悲鳴を上げた。
「あなた、この会社で大事にされてるんだろ。俺、こんなこと知られたらクビになってしまう。」
「私、転職しようと思っているの。このことは誰にも言わないわ。あなたはこの会社に入ったばかりなのだから、これから仕事を思いっきり頑張ればいい。」とたしなめた。
それからは駅で切符を買い、家まで戻ると「こんなことは忘れる!」と叫んだ。
その瞬間、頭の中でプチっと音がして全ての記憶が消えてしまった。
帰宅すると、何事もなく過ごし眠りについたのである。
翌日、朝に社内電話が鳴った。
「前田です。昨日はすみませんでしたね。」
私は何のことかわからず「何の話でしょう?」と聞いた。
「仕事の件ですか?」
「いいえ。」
「では失礼します。今、忙しいので。」と言って電話を切った。
するとオフィスの反対側の方で「えぇ?!」と声がし、大竹君のところに前田さんがやってきた。
「営業部の前田です。」彼は自己紹介をしたので、「はぁ。どうも。」と返事をした。
私の記憶が欠けていることに最初に気づいたのは彼だった。
その後、私が発病するまでこのことは忘れたままだったが、病気が始まってから繰り返しフラッシュバックするようになるのだった。
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