デート
「うふふ!!いっぱい買っちゃいましたねー!」
リリーはよほど上機嫌なのかニコニコとスキップしながら道をあるく。リリーのブロンドの髪を夕日が照らしてまるで一枚の絵のように見える。
服屋を10店舗は回ったか?入るたびに着せ替え人形の様に試着をしまくり1店舗で一着は買った気がする。
試着は意外と疲れるんだと人生で初めての知見を得た。
当然旅の荷物も買っているため荷物は膨れ上がり両手で抱えきるのがギリギリ。ロッカーに預けデートを再開する。
「マナト様、だいぶ揃いましたか?あと必要なものとかありますか?」
「ん、それならせっかくリリーが見繕ってくれた服に合うようなアクセサリーが欲しいかも!」
「お!マナト様も乗ってきましたねー!最初はお財布の紐も硬かったのに〜!いい場所知ってるんです!こっちこっち!」
リリーはまだ元気なのか小走りでかけてゆく。あとに付いていくと丸太でできたログハウス風の店があった。
リリーに手を惹かれ入店すると店内には様々なアクセサリーがある。一つ手にとって見るとなるほど。リリーがオススメするだけはある。一つ一つの細工がとにかく細かい。
その割には値段が安く、材料費に少し上乗せした程度の値段だ。ここまでの技術があるならばもっと技術費をとってもいいのに……
アクセサリー屋といったよりは工房に近いのだろうか。アクセサリーだけではなく硝子細工なども置いてある。
オシャレは最低限身だしなみ以上したことが無いのでリリーと一緒に探す。
視界の端にグラスが見え物色する。見事なクリスタルグラスだ。
近くに金で出来たターコイズがあしらわれたブローチが置いてある。リリーにバレないように会計を済ませる。
3つほどリリーが見繕ってくれたものを買い外に出ると日がほぼ沈んでいた。
「はぁ…夜になっちゃいますね…」
「そうだね、もし良ければ夜ご飯食べに行こっか?」
実はデート中にバレないように予約しておいたのだ。街でも一番の有名でそれなりに高い場所だ、失敗はないだろう。
レストランに行くと想像よりもキレイな場所であった。
「予約のマナトです。」
「…マナト様いつの間に予約なんてしたんですか?」
「俺が旅のもの買うときに一瞬別行動したでしょ?その時にね。」
「むぅー!なんか手慣れてて複雑です!」
頬をリスのように膨らませているリリー。
「嫌だった?」
「嫌なわけ無いです!」
リリーは右腕に抱きつくように腕を組んできた。席につくのが少し惜しい気持ちになったが離れ座る。
「ごちそうさまでした。申し訳ありません。ご馳走になっちゃって…」
「ううん、いろいろ付き合ってもらっちゃったしね、今日は楽しかったよ、ありがとう!」
街は酔っ払いたちが2軒目に消えていく姿が出てくる時間帯だ。活気があり少々騒がしいがそこまで嫌なものではない騒がしさだ。
「マナト様。まだ少しだけ時間ありますか?」
飛んで移動するには街に人がいなくなる深夜帯がいい。そういった意味ではまだまだ早い時間なので頷く。
「少し離れた場所なんですけど、私のお気に入りの場所があって…」
指を指した場所は少し先に見える山の頂上だ。麓からロープウェイのようなものが伸びているので時間はかからないだろう。
「うん!いこう!」
「ありがとうございます!ここ、街を一望できるんですよ!昼よりも夜のほうがキレイに見えるし人気の、……あの、スポットなんですよ!」
直前で気づいて恥ずかしくなったのか言い淀んでいたが俺は知っている。レストランの人が教えてくれたのだが人気のデートスポットらしい。
「ん?ごめん、最後の方が聞き取れなかったからもう一回お願いしていい?」
「早く行きますよ!ほらマナト様走って!」
麓のロープウェイ乗り場についた、が
「閉まっちゃってますね…老朽化のため機器故障により臨時休業だそうです……
確かに昔からありましたしね…」
リリーは見るからにしゅんとしてしまった。ロープなどを見る限り閉まってから数日といったところだろうか。
周囲には係員もいなければ人もいない。山自体はそこまで高いものではない。…………それであれば、、、
「よし!リリー!いくか!!」
翼を広げリリーの膝下と背中に手を添え抱える。所謂お姫様だっこだ。
「ふぇ!?ま、マナトさま!?」
「行こう!せっかく来たんだし俺も見てみたいしさ!
……捕まって!」
そういえば吸血鬼なら全員翼を出せると思っていたがどうやらそうでは無いと最近知った。上空に飛び立つと新鮮な反応をしているためリリーは翼が出せない。もしくは著しく体力を使うのだろう。
「マナト様!綺麗ですよ!下!すごいすごい!!」
キャッキャと少女の様に喜んでいた。ここまで喜んでくれると多少危険を侵して飛んだかいがあったな。
「リリー。この山の裏って人いるかな?」
「人、ですか…?うーーん、多分いないと思いますよ。何もないですし」
目をぱちくりしながら何故ですか?と問いかけてくる。
「じゃあさ、せっかくだから裏まで回ってから頂上いこっか。空中散歩しようよ」
「きゃぁ!!やったやった!ありがとう!」
いつもの敬語すらなくなるほど喜んでもらえて嬉しい限りだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます